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② 通学路にて

 双美(ふたみ)清郷せいごう学園。中等部、高等部から大学、研究機関までを持つ総合学園。

 その学園に最上真一と双葉の兄妹(きょうだい)は通っていた。

 真一は高等部3年、双葉は中等部の2年だった。

 家からの距離は歩いて15分ほど。雨の日だとだるい通学路もこの季節、この快晴であれば、ちょっとしたピクニック気分が味わえた。


「お~い、真一」


 声に振り向くと、赤茶けた髪にニキビ顔ののっぽがニヤケタ笑いを浮かべて立っていた。名を阿賀野(あがの)悠哉(ゆうや)と言う。

 おうっ、と真一は意外そうな声を上げた。いつもなら遅刻ギリギリで教室へ駆け込んでくる奴などだ。通学途中で逢うのは初めての事だった。

 

「珍しいな、こんなところで逢うの」

「へへへ、まぁねぇ」


 悠哉は、意味ありげな笑みを浮かべると、そのまま視線を隣を歩く双葉へと向けた。


「双葉ちゃん、おはよう」

「……」

 

 双葉は一度悠哉を見つめたが、背中を向けてた。「お兄ちゃん、先に行くね」と言うと、すたすたと歩き始めた。


「ありゃ、嫌われてるなぁ」


 薄っぺらい笑顔を張り付けたまま悠哉は去っていく双葉の見送った。

 

「お前の目がいやらしいンだってさ」

「はぁ~? 俺の目のどこがいやらしいだよ!」


 悠哉は目を見開き、指差しながら真一に詰め寄る。


「寄るな! 朝っぱらから目が血走ってるよ」

「兄妹でつれないじゃないか」

「ああ、もう朝から暑苦しいな!

そんなことより、今日はなんでそんなに早いんだ?」


 真一の質問に悠哉はまた、へへっと軽薄そうな笑みを浮かべると携帯を見せた。たが、それは双美山が写っているだけのなんの変哲もない風景写真に見えた。

 真一は首をかしげながら写真とそれを得意気に見せている悠哉の顔を見比べた。しかし、やっぱり意味が分からない。


「双美山がどうかしたのか?」

「バカッ! ちげーよ。飛天だよ飛天」

「ヒテン? なんだよそれ」

「えっ、飛天しらないの?

我が日本が誇る3式機動歩兵『飛天』を知らないの?

これだよ、これ!」


 悠哉は少し飽きれ気味に映像の片隅を拡大して見せた。なにか大きなトレーラーに青い四角いものが乗っていた。それが飛天というのなのだろうが、真一には何一つとしてピンとくるものがなかった。


「この四角いっぽいものが、その『飛天』って奴なのか?」

「そうだよ。昨日の夜、ネットに飛天が俺たちの町に配備されるって情報があってさ、まだ暗いうちから家、飛び出て探していたんだよ」


 悠哉は話ながらどんどん興奮していくようだったが、真一は逆にどんどん醒めていった。


「いや、それがそんなにすごいことなのか?」

「そうだよ。飛天が配備されたってことは、DDが現れる可能性が高いってことだよ。うまくすれば生DDが見れるンだせ!

それをうまく撮れれば、金になるじゃないか」

「そんなにうまくいくのかね」

「いくかいかないかは、やってみないと分かんないだろ。

じゃ、俺、行くわ」

「えっ? オイ、オイ、行くってどこ行くんだよ」

「だから、DDが出てきた時にうまく撮れそうなところさ」

「いや、学校はどうするんだよ」

「学校? いや、サボりでしょ。こんな機会滅多にないだろ。真一も行かないか?」


 胡散臭いにも程がある、と真一は思いながら首を横に振る。悠哉も別に期待はしていなかったようであっさりと受け入れた。


「ああ、そうか。んじゃ、真面目に勉学に励みたまえ。良いの撮れたら送ってやるよ。

じゃあな!」


 悠哉はそう言うと、引き留める間もなく走って行ってしまった。後にはぐったりとした虚脱感だけが残った。


「なんだよ、あいつ……」


 真一は力なく首を振ると学園に向かう学生たちの列に再び加わった。


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