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⑦ シーソーゲーム

ピーーーーー


 オペレータールームに無機質な電子音が鳴り響く。


「河辺櫻 バイタルレッド 心肺停止!

カフェトプシン 注入!」


 衛生士神戸(こうべ)(ひびき)がヘッドセットを外すと立ち上がった。


「効果なし 直ちに蘇生処置に入るわ。

友樹(ともき)君、手伝って!」


 響はサブオペレーターの竹山(たけやま)友樹を伴ってオペレータールームを飛び出した。



「蛇のような体。

伸縮自在の6本の腕。

空間断裂光。

どれもこれも市街戦にぴったりはまる能力ね。

まるであつらえたみたいだわ。」

「本当にね。

他に私たちが把握できてない能力もあるみたい」

「把握できてない能力?」

 

 摩耶の言葉に美琴は分からない、というように首をかしげた。


「そう、あいつにはこっちの位置が手に取るように分かるみたい。一体どうやっているのかしら」


 摩耶は忌々しそうに唇を噛んだ。


「とにかく!

こちらも相手の位置を把握できなければどうにもならないわ。

予備のスカウターとかないの?」

「ありません。いま、検索をしましたが周囲100キロに使えそうなスカウターはありません。

一番近いのが300キロ東の唐釜(からかま)基地です」

「ヘリにカメラを持たせて飛ばすとか……

駄目ね。結局撃ち落とされるのがオチか」


 腕組みをして、摩耶は打開策を模索する。その時だ、おずおずと声を発したものかいた。


「えっと、私に考えがあります」


 それは若葉であった。



 黄色のカラーリングされた2体の飛天がビル街を闊歩していた。


「カナ、リー、現着」


 加奈子は報告しながら油断なく辺りへ目を配る。《0020》らしき姿はどこにもなかった。


「周囲を警戒して、どこから来るか分からないわ。互いの死角をカバーしなさい」


 怜奈の声に、カナとリーは自然と背中合わせとなった。

 慎重に索敵をしながら歩いていく。

 

「うん?」


 足元の妙な感触に違和感を覚え、友理奈は視線を下に下ろす。飛天の足がアスファルト以外のものを踏みつけていた。

 友理奈が首を傾げた瞬間、踏みつけていたものがくぐっと膨らむと、リーの足首を掴んだ。


「なっ?! きゃっ!」


 あっという間もなく有無を言わせない力で引き倒され、地面を引きずられていく。


「友理奈! だいじょう、うわぁ!」


 助けようとした加奈子も唐突に引き倒され、ずるずると地面を引きずり回される。

 《0020》が自分の爪をトラップのように地面に置いておいたのにまともにひっかかったのだ。カナ、リーは足を掴まれたまま大きく空に吊り上げられる。ぶらぶらと振り回され、勢い良く地面に叩きつけられた。


「うわぁ」

「きゃあ」


 再び持ち上げられ、叩きつけられる。

 そして、もう一度。カナもリーもなすすべを持たなかった。



「はい、そのまま真っ直ぐです。で、右手のビルの東側に本体が潜んでいます」

「了解」


 若葉の指示に従い、ビルの東を見ると確かに《0020》がいた。カナとリーを弄ぶのに夢中で近づいてくる怜奈に全く気づいていないようだ。怜奈は肩に背負っていたショットガンを取り出す。


ズン


 ショットガンを撃つ。

 射程こそ短いが、FSショットガンにはバンドキャノンのFS弾が5発入っていた。すなわち、ハンドキャノンの5倍の負荷を相手のフィルタにかけることができるのだ。

 1発で《0020》の体がFS弾特有の火花に包まれた。レバーを下に引っ張り、排莢、上に戻して次弾を装填する。火花が消えない内に2発目を撃つ。


バシュバシュバシュ


「ワン 背後から爪来ます。続いて3時からも!」


 若葉のナビに、怜奈はショットガンをもう一つ取り出し、後方からの爪を撃ち落とす。さらにもう一丁で3時方向の爪を撃ち落とした。



『えっと、双美市内にあるカメラの情報を集めて組み合わせれば、《0020》の動きを捉えることができると思います』


 それが若葉の提案だった。


 若葉の目の前には双美市内に設置されているカメラの映像が集められていた。それをパズルのように組み合わせて一つの映像を作り上げていた。見た目はいびつだったり、歯抜けであったりしたが、《0020》の動きを捉えるにはそれで十分だった。

 


「《0020》 北へ逃げようとしています」

「モモ、ニャン、塞いで!」


 カナとリーを放り投げて、逃げようとする《0020》の動きを察知して、ニャンとモモが立ちはだかり、攻撃をする。ニャンが持っているのはワンと同じくショットガンだ。


 再び、《0020》はFS弾に包まれる

 ワンはゆっくりと距離を詰めながら、グルンと2丁のショットガンを回転させ、その遠心力でレバーを動かし次弾を装填して撃った。


ズン

 ズン


 そして、ショットガンを回転させて次弾を装填する。


「カナ! リー! モモ! 後退。

《0020》に対して5000を維持!

ニャンと私で奴のフィルタを飽和させる!」



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