表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/104

⑤ 飛天に咲く百合

 カシューン


  カシューン

 

   カシューン


 アスファルトを踏み砕きながら真っ赤な飛天が猛然と走り寄る。

 金色の肩の装甲がキラキラと太陽光を反射する。通称GS(ゴールドショルダー)。大隊長機のユニークカラーリング、すなわち玲奈の飛天、ワンであった。

 ワンは腰の(ハチェット)を引き抜くと、ハナを押し潰そうとしている爪の一つに叩きおろした。


 ブン!


 干渉膜が煌めく。

 ダメージは与えられないが、ハチェットの圧に押され爪の力の向きが僅かに反れた。だが、その力の乱れでハナを包み込んでいた干渉膜の綻びが生じる。ワンの手が伸び、干渉膜の中からハナを引きずりだした。


 ハナを抱きかかえ、心配そうに様子を伺うように見つめるワンの姿がスクリーン一杯に映し出されいた。

 その姿に風花は頬を染め、熱いため息をもらした。


「だ、大隊長……」


 感動で言葉が出ない。

 次の瞬間。


「うぎゃ」


 ワンに後方に放り投げられ、風花ははしたない声を上げた。

 ワンはワンで、それ自体が一つの生き物のようにグネグネと複雑な動きをしながら再び襲いかかってくる爪をバックステップでかわすのに忙しかった。


「大隊長、ヒドイ……」


 地面にひれ伏し、なぜかしなを作り身悶えるハナを尻目に、ワンは襲いかかってきた爪をハチェットで弾き返す。


「えっ? なんだって? よく聞こえなかった」


 聞き返す玲奈に風花はふるふると首をふった。


「……いえ、なんでもありません」


ガキン! 


 再び襲ってくる爪を玲奈は叩き落とす。


「とりあえず風花はFCが復活するまで後方からのサポートに回って」

「……はい」


 ガックリ肩を落として、後方に去っていく風花を背景(バック)に玲奈は次々と襲いくる爪をハチェットで捌きながら指示を飛ばす。


早希(さき)! (さくら)! 回り込んで」


 左右から襲いかかる爪を紙一重で避ける。


 この伸びる爪、意外とうざい。


 ビルの影から湾曲して伸びてくる爪は予測が難しい。かつ、こちらからは攻撃できない。

 

「ワン! 爪、左から来ます」


 若葉の声。少し遅れてピッピッと接近警告がなる。


ブゥン


 ハチェットで爪を叩き落とす。


「ワン! 続けて上から爪2つ!」


 バックステップで後方に飛びすさる。と、ほんの一瞬までいた場所に上から爪が2本突き刺さる。


 コマンドルームからのナビがなければ、こうは反応できないな


 ポケットから手榴弾を取り出すと高層ビルの上に放り投げる。続けてもう一つ。


 放り投げられた手榴弾は高層ビルの上を越える。数秒の間が開いた後、爆発音が響いた。


「手榴弾、《0020》に着弾!」


 まあ、全部フィルムで無効化されてるでしょうけどね、と若葉の報告を聞きながら玲奈は思った。


「ニャン、射線クリア!」

「射線クリアになり次第、各自の判断で射撃して!」

「了解」

「こちらモモ。FS弾なくなりました。市街地でHE弾使って良いですか?」

「使用許可!

SSIB設置エリアに近づけないことを最優先にして!」

「チェリー、視線クリア。ファイア!」


 高層ビルの裏側から激しい閃光と爆発音がしてきた。


「ニャン ファイア!」

「モモ ファイア!」

  

 立て続けに爆音が響き渡る。あれほど執拗だった爪の攻撃がパタリと止んで、ようやくタクティカルパネルへ目を向ける余裕ができた。

 タクティカルマップを見ると、モモ、ニャン、チェリーが《0020》を3方向から包囲していた。

 スカウターからの映像に目を向ける。

 モモ、ニャン、チェリーの攻撃が散発的に《0020》を捉えるが、全てがフィルタに防がれていた。


「むぅ……」


 玲奈は眉をひそめ、《0020》の頭部を注視する。キラキラとした光の粒子が現れ始めていた。


「光学兵器! 回避ッー!!」


 玲奈が大声で叫ぶのと《0020》が周囲に向かって光学兵器を発射したのはほとんど同時だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ