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④ 市街戦

「《0020》を双美市内、エリア39ポイントで確認」


 若葉の悲鳴がコマンドルームに響き渡る。


「完全に裏をかかれたわ。まさか地下を通って防衛線をすり抜けるとは」


 摩耶は唇を噛み締める。


「玲奈!」

「分かってます!!」


 摩耶はコンソールに向かって指示をしようとしたが、それよりは早く玲奈の返事が返ってきた。


「ハナ! チェリー! エリア39に急行!!

モモ、ニャンはバックアップに回って。

奴には電子機器無効化結界があることを忘れないで。各人の距離を保ちなさい」


 叫びながら玲奈はタクティカルマップへ目を向ける。防衛線を引いたエリアより随分入られていたが、SSIBを設置しているエリアを直撃されなかったのを不幸中の幸いと自分を慰めた。



「いきなり、市街戦なの?」


 ビル街を走り抜けながら、ハナこと、時津(ときつ)風花(ふうか)2尉はため息を吐いた。

 全面スクリーンには立ち並ぶビルから上半身だけを覗かせた《0020》はずるずると進んでいく姿が映っていた。

 風花はハンドキャノンを構える。測距データがないためMOPは使えない。MOPには最低でも3点でのリンクされた測距データが必要だった。そのため、MOPは諦め直接(D)照準(P)に切り替える。

 スクリーン上に+と◇のマークが現れる。◇をまず《0020》に固定すると+を◇に近づける。

 マークが重なる。

 トリガーを弾こうしたその瞬間、視界をビルに遮られた。


「?!」


 《0020》はすっぽりと高層ビルの影に隠れた。


「チッ」


 舌打ちをすると、風花は照準マークを高層ビルの右端、《0020》が出てくると思われる方向へ移動させ、ターゲットが出てくるのを待ち受ける。

 ピッピッピッ、という電子音と共に不意にスクリーン上に↑マークが表示される。上からなにか近づいてくる警告表示だ。

 上を見る。

 視界一杯に急速に迫ってくるものが見えた。

 《0020》の伸びる爪だ。

 

「うわっ?!」

 

 回避が間に合わず、爪の攻撃をまともに受ける。


ブゥウン


 MDFの干渉膜が発生して爪を弾く。が、爪はそのまま上から飛天を押し潰そうと力をかけてきた。


「むぅ」


 干渉膜を通じて伝わる圧力に風花の口から声が漏れる。


「この」


 苛立ちを込め、両手で爪を押し返す。

 バチバチと干渉膜のところで赤い火花が飛び散る。


ピピピピピ


 電子音が鳴り響き、→マークが表示される。

 右からの急速接近物の警報か、と思う間もなく、警告音の音量とピッチがあがり←マークが表示される。


 両方から!


グウワァン

 

 思う間もなく、高層ビルの左右の端を《0020》の爪が伸びてきて風花を押し潰した。

 風花の飛天が見えなくなるほどの干渉膜に包まれる。ハナ機の上と左右で火花が花火のように瞬いては消える。


「ハナ FC 89……86……83

まずいぞ、ハナ。そこから早く抜けろ。削り殺されるぞ」

「分かってる。や、やってるけど」

 

 ハナのチーフオペレーター若竹(わかたけ)(のぼる)曹長の焦った声に風花は苦し気に答える。抜けたくとも身動き一つ取れない、というのが実情だった。


「オッケー! 見えたよ」


 サポート役の簑輪(みのわ)桃子(ももこ)が大きく迂回してようやく《0020》との射線を確保した。照準を素早く合わせる。


「距離1200 いっけ!」


 ハンドキャノンから砲弾が発射される。

弾は高層ビルを盾にしてハナを攻撃している《0020》の顔面を捉える。


ブツッ


 が、砲弾はMDFに簡単に防がれる。それでも桃子はキャノンを連射する。

 2発、3発…… ことごとく無効化される。


「FC 68!」

「駄目だ。単発攻撃ではあいつのフィルタは破れない」


 若竹と桃子の悲痛な叫びがハーモニーを奏でる。ずずずとハナのMDFが発する干渉膜が圧縮されて小さくなっていった。

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