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② 穴

「大丈夫」


 ほどなく友理奈からの声が聞こえた。友理奈の視点スクリーンは依然として真っ暗だった。


「どこにいるの?!」

「え、えっと穴……かな?」


 加奈子の質問に自信なさげな声が返ってきた。


「なんか穴に落ちたみたい。爆撃でできた穴かな」


 スクリーンの視点が移動、すなわち加奈子が上を向いた。確かに周囲が土の壁に囲まれ、小さな穴から青空が覗いていた。そこにひょっこりと飛天の顔が現れる。加奈子の飛天だ。


「深いわね。100メートル、いえ、150メートルはあるかも」

「う~ん、手を伸ばして届く距離じゃないね」

「そんなことより!」


 のんびりと会話をする二人に怜奈の声が割って入ってきた。


「友理奈、油断しないで!

穴の状況を探りなさい。あの爆撃でそんな深い穴はできたりしないわ。DDが作った穴かもしれない。だとしたら近くにいる可能性がある。

調べなさい!」

「り、了解!」


 友理奈は一気に緊張の度を高めると今さらのようにハンドキャノンを構えなおす。

 視点スクリーンが少し緑がかった色合いに変ずる。暗視モードに切り替わったのだ。


「センサーに反応なし。

動くものもなし」


 視点が左右に揺れる。むき出しになった土が見えるだけで、友理奈の報告通り動くものは何もなかった。


「その奥! 3時の方向!!」


 突然、怜奈が叫んだ。その声に弾けたようにハンドキャノンをそちらに向ける。


「えっ、なに? なにも見えませんよ」

「そうじゃない、その方向を調べて」


 指示に従い穴の奥へ移動した友理奈は驚きの声を上げた。


「横穴。横穴があります!

かなり大きい。それに、奥が見通せないほど長い」


 友理奈の報告通り、直径20メートルほどの穴が開いていた。中を覗きこんでいるが真っ暗で先が見えなかった。大きい穴だが、飛天が通るには小さい。


「方向は? 穴の進行方向はどっちを向いている?」

「東です」

「音波探査をして」

「了解」



 探査結果は直ちにコマンドルームへ送られ、周辺マップに重ね合わさられた。

 横穴は真っ直ぐ東へ伸びていた。距離にして2キロ以上。それ以上は音波探査の測定範囲外なので結局どこまで伸びているのか分からない。

 その結果を見て、摩耶の顔色がみるみる白くなる。この地点から2キロ以上西へ伸びていると言うことの、その意味することがはっきりと分かったからだ。


「震度計。双美市の震度計確認して!」

「し、震度計ですか?

ちょっと待ってください……

えっ、震度計ってどうすんの。気象庁にアクセスするのかしら……」

「双美研究所が精密機器保護用に震度をモニタリングしてる。そこ使え。っていうか、マイク切って、みんなに聞こえてるって」

「あちゃ…………

はい、お待たせしました。

震度計確認。異常ありませ……いえ!

感あり、です。微弱ですか周期的な揺れを感知!」

「震源の位置を特定して!」

「はい、震度計データ解析……

震源 地下およそ200……200メートル?

位置は……えっ? なにこれ。

震源移動してます!」

「双美市のマップに投影して」

「はい。出します!」


 メインスクリーンに双美市内の地図か大きく映し出される。青い丸が点在していた。市の西、市の境界に6個の点がある。それは怜奈たちの位置を示していた。市中央に近いところに別に、3つの点があった。それは現在、SSIBを設置している葵たちのものだ。

 その中間、やや怜奈たちよりオレンジ色の三角マークが現れた。それが震源を表していた。

 それを見て摩耶は唇を噛みしめ、絞り出すように呟く。


「もう、市内に入り込んでるじゃないの」


 摩耶は、マイクに、怜奈に向かって叫ぶ。


「怜奈! 後ろよ。奴は後ろにいるわ!」


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