④ 壊滅
「一体何が起きたの?!」
「分かりません。
突然スカウターとの連絡が途絶えました」
答えたのはスカウターの操縦を担当している吹雪3尉だ。
「大隊の飛天もブラックアウト!」
「なんですって?!」
若葉の言葉に摩耶は大隊員のモニタ画面へと視線を移すした。そのほとんどが黒くなっていた。生きているのはアオ、ヒメ、スズの第3中隊の3つ。すなわち双美市内に防衛線を張っている部隊だけだ。
「コオペは? コオペレーションチームの状況はどうなってるの?」
「コオペは……繋がってます。
コマンドルームよりチームワンへ
状況知らせよ」
「こちらチームワン。
シナプスリンク想定外切断
システムダウン」
「システムダウン? 何機がシステムダウンしたの」
「ワン、モモ、ハナ……
だ、第3中隊以外全部です。
全機、システム再起動中」
ワンのチーフオペレーター、すなわち第32大隊の統括チーフオペレーターの叢雲崇1尉の声が震えていた。
「全機って……そんなことあり得ないでしょう!
とにかく、現場の状況を確認しなさい」
「双美市内の定点カメラ映します」
スクリーンに山腹が映し出される。距離と角度が悪く何も見えない。
「何も見えないわ。高高度観測用のスカウターを転用して!」
「あれは電波と時空間センサがメインなのでカメラは、大したものはついてませんよ」
「構わないわ。なにも見えないよりましよ」
「了解。高高度観測用スカウター、移動させます」
その時だ。若葉が叫んだ。
「定点カメラ、動くものあり!」
確かに窪地のところでなにか小さなものがゆらゆらと揺れていた。摩耶は目を細め、それを凝視する。
「飛天……?」
それは飛天の頭部に見えた。だとしたら誰の飛天だろう、と摩耶は思う。
色は緑ぽい
ならば、第4中隊か
そんなことを考えていると、その飛天の背後に黒い影が浮かび上がってきた。
「《0020》 確認!」
若葉の声を聞くまでもなく摩耶にもそれが分かった。《0020》がゆっくりと全容を現す。その手には飛天の上半身が握られていた。胸の部分が赤くカラーリングされている。つまり、それは……
キュロロロロロ
《0020》は残骸と化した飛天を放り投げると勝どきが如く高らかに咆哮した。
「高高度観測用スカウターのカメラ映像映します」
スクリーン上に再び山腹の俯瞰図が写し出された。
「な……んてこと」
バラバラに解体された飛天の残骸が点在していた。他にもうつ伏せ、仰向けで倒れているもの。しゃがみこんで擱座しているもの。とにかく動いている飛天は1機もなかった。
全滅、の二文字が摩耶の頭を過る。
突然のブラックアウトからどれ程の時間が経過したのか
10秒? それとも30秒?
1分は経過していないはずだ。なのに全滅などあり得ることなのか?
一体何が起きたと言うのか、摩耶の思考はぐるぐると同じところを空転した。
2021/04/18




