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超弦天使 レヴァネーセス ~ 夏に降る雪  作者: 風風風虱
epic 1 デーモンスレイヤー
2/104

② 皿を持つ男

 摩耶は気を取り直すと腹の底から命令を下す。


「第1防衛態勢へ移行。

目標を双美山山頂のDD(ディデイ) 『オンブレコンプレート』に設定。

一番近い緊急展開部隊はどこか?!」

「第32(さんじゅうに)特務大隊第3中隊です」

BA(ブルーエンジェル) 葵のところね。

よし、第3中隊に連絡、ただちに目標を撃滅せよ」

「了解。

第32特務大隊第3中隊に命令

ただちに目標を撃滅されたし

目標 双美山山頂のDD(ディディ) 一体

マーカーナンバー0010(まるまるひとまる)

「データリンク! 緒元送ります」


 各オペレーターたちがてきぱきと指示を出す中、摩耶は自身のパーソナルディスプレイに映る戦術(タクティカル)マップへ目をやった。

 侵食球の出現位置が予測よりだいぶん西にずれていた。即応できるのはやはり第3中隊しかなかった。しかし、カテゴリー3なら1個中隊でもさばけるはず。そう目算すると指示を下した。


「第4中隊はバックアップのために移動させて。他は待機」

「了解 第4中隊へ命令

2次防衛線まで移動 第3中隊 支援のこと」

「第1、第2中隊はそのまま。 別命あるまで待機」





「…………14500いちまんよんせんごひゃく………14501いちまんよんせんごひゃくいち…………」


 真っ暗な空間で静かに数を数える声が響く。


「…………14523いちまんよんせんごひゃくにじゅうさん………14524いちまんよんせんごひゃくにじゅうよん…………145(いちまんよんせんご)


 ふっと周囲が明るくなった。

 カウントアップが途絶え、明るさに戸惑ったように赤い瞳が何度もまばたきを繰り返した。

 全天球型モニターの正面やや上に人の顔がスーパーインポーズされる。さらにその左右にも顔が現れた。


「命令がでたわ」


 正面のやや大きい画面の人物が言った。

 画面の一番上に『AOI NAGARA』と表示されていた。同じく、右は『YUMA NATORI』、左『ISUZU IKARUGA』とある。


 「作戦要領」と長良(ながら)(あおい)1尉が言うと同時に葵の画面の下に地図が現れた。地図の中心に赤い三角のマーク。地図の右端に緑の丸い点が三つ点在していた。


「任務は双美山山頂に顕現したDD一体の撃滅。

マーカー0010。

レジストリコード 0321

コードネーム 『オンブレコンプレート』」

「おんぶれれ……なに?」

 いすずが眉をひそめて聞き返す。

「『オンブレコンプレート』

スペイン語で『皿を持つ男』という意味」

 絹川(きぬかわ)麻衣(まい)が淀みない声で答えた。数を数えるのとさほど変わらない抑揚だ。

「おー、さっすが麻衣ッチ。博学ぅ~。

で、なんでスペイン語?」

「無駄口叩くなっ!

初めて確認されたのがスペインだからでしょ。そんなあったり前のこと聞くなっつーの」

 いすずに向かって由真がぴしゃりとやり込めた。

「ネームの由来になった皿というのはあいつの左目よ。時空断裂系の光学兵器を射出する。要注意。それから、あの『潮招き』みたいな右手も曲者」

「『潮招き』……

ああ、あのハサミがでっかいカニ?」

 いすずの合いの手が再び入ったが、今度は誰も突っ込まなかった。

「伸縮性があって、ムチのように振り回すわ。射程はおよそ500メートル。

気をつけて。離れてよし近づいてもよしのテクニシャンよ」


 「断裂系光学兵器がやはりヤバイですね」と由真が独り言のように言った。


MDFマルチディメンジョンフィルタは使えるのですか?」

「使える。一応、フィルタで無効化できる。

けど、連発で食らうとフィルタが飽和する」


 「うひゃ。何発で?」と、いすず。

 

「計算上は3発で飽和。あとは10秒毎で緩和」

「結構厳しいですね」


 葵の説明に由真が再び深刻そうに呟いた。うんと軽くうなずくと葵は先を続ける。


「0010はおよそ時速40kmで東に移動中。20km先には双美市があるわ。

ぶっちゃけ、光学兵器は既に射程内よ。

時間的余裕はないわ。一刻も早く撃滅する必要がある。時間が最優先。

よって敵右翼への強襲を仕掛けます。

光学兵器の的を分散させるため、0010の120(ひとふたまる)180(ひとはちまる)240(ふたよんまる)度の3方向同時攻撃。

120は私。

180、麻衣。

240、由真。

いすずはバックアップ。

もしも仕損じても、0010の進路をずらして双美市から遠ざける。かつ、2次防衛線を敷いている第4中隊正面に追い込んで、挟撃する作戦よ」

「「「了解!」」」


2021/04/04

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