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⑧ 喰らう女

 スクリーン上で崩れ落ちる《0020》の姿が映し出された。


「《0020》 …… 活動停止」

 

 コマンドルームに若葉の声が流れると、一瞬歓喜のざわめきが起きた。


「侵食球はどう?」


 内心、小躍りしたい衝動を抑えながら摩耶は問う。


「歪率 98.5 未だに安定……」


 レーダーオペレーターの睦月の回答に摩耶は少しがっかりする。侵食球があるかぎり完全に脅威が去ったとは言えない。その摩耶の懸念を察したように声が続いた。


「いえ、98.2 …… 97 …… 

歪率 低下してます。

95 …… 92 …… 90.5 ……

まもなく維持限界。 侵食球 消滅!」


 双美山山頂に浮かんでいた黒い球が見る間に小さくなり消えてなくなった。それを確認して摩耶はようやく安堵のため息を漏らした。



「鈴谷1佐。

《0020》の状態を確認してください」

「了解。

第1、第2中隊 警戒維持。

第4中隊 《0020》の状態確認せよ」


 摩耶の指示に怜奈が呼応する。


「了解。

第4中隊、確認します。

わたしが行くわ。

久美と珠子は左右後方展開 援護に回って」


 優子は二人に命じるとハンドキャノンを持ち直す。一度、深呼吸をするとゆっくりと《0020》へと近づく。

 100メートルほどまで近づき様子を伺いながら、各種センサを使って探索をする。

 表面温度や音、電磁波など様々なデータがたちまち集まってくる。だが実際のところは、肝心のDDの生態が良く分かっていないため、いくらデータを集めても、死んでいるか生きているかの判断をするのは難しかった。

 体温が氷点下のDDがいるかと思えば、石のような材質でできていた奴もいた。結局、DDが動けるかどうかは、文字通り、動くか動かないかで判断するしかなかった。

 優子は集中してスクリーン上の《0020》を観察する。《0020》はうつ伏せに倒れたままピクリとも動かなかった。


「《0020》 …… 活動兆候なし」


 報告を受けた摩耶はようやく組んでいた腕を外し、笑顔を見せた。


「了解。

第1防衛態勢を解除。

ランクを2段階下げて第3防衛態……」

 

 その時だ。

 倒れていた《0020》が突然起き上がった。


「ッ!」


 仁王立ちした《0020》の二本の左腕が優子の飛天に振り下ろされる。不意をつかれた優子は全く反応できない。


 ブウウン


 赤い障壁、飛天のフィルタが襲いくる腕を弾いた。

 

「くっ!」


 優子は後退しながら、20ミリ機関砲を乱射する。


 ギイイイイ


 もう一度、と伸ばした左腕を機関砲に撃ち抜かれ《0020》は苦悶の声を漏らし腕を引っ込める。しかし、強烈な攻撃本能につき動かされるかのように《0020》は攻撃を諦めない。口を大きく開き、噛みついてきた。

 例のフィルタ無効攻撃だ。


 ガッ バギン!


 優子はとっさにハンドキャノンを盾にする。

ハンドキャノンはあっさりふたつに噛み砕かれた。もはや距離と角度が悪すぎて機関砲もうまく《0020》を狙えない。

 再度、顎が迫りくる。


 ズン

    ズン

 

 間一髪、AP弾が2発打ち込まれた。

 久美と珠子の援護射撃だ。

 《0020》の右目から紫色の血がほとばしった。


 ギエエアー


 追い撃ちをかけようとハンドキャノンを構える久美と珠子の動きを察したか、《0020》は身を翻すと逃げ出した。


「逃がすな!

MOP ポインティング 

データ上げろ! 急げ!

各個、精密射撃(スナイピング) 

脚部を狙いなさい!」

 

 怜奈の指示が飛ぶ。

 

 各飛天のスクリーン上に、逃げる《0020》の姿がポップアップされる。照準マーカーがゆらゆら揺れながら、次々と6本の脚にロックオンされていく。


「ファイヤ!」


 美佐緒の号令とともに11発のAP弾が発射された。AP弾は正確に6本の脚の膝や大腿部を撃ち抜いた。バランス崩して《0020》は転倒する。

もはや二度と立つことはできないだろう。


 ズルリ ズルリ


 それでも《0020》は諦めず、地面を這って逃げようとしていた。


「第1中隊 第2中隊 前進

近づいて止めを刺す。

第4中隊は援護」


 怜奈の命令で8機の飛天が這いずって逃げる《0020》を追い詰めるように近づいていく。5000メートルの距離に近づく頃には《0020》は力を使い果たしたかのように這いずることを止めていた。うつ伏せになり小刻みな痙攣を繰り返しているようだった。




「んッ?!」


 コマンドルームで戦況を見ていた摩耶は突然の違和感に襲われた。


「ちょっと、スカウターの映像を拡大して」


 画像が拡大された。《0020》は明らかに地面とは違う、何か白っぽいものに乗っかっていた。


「なにあれ?

あいつ、なんの上に乗っかっているの?」


 それが《0010》、活動停止した『皿を持つ男』だと摩耶が思い当たるのにそれほど時間はかからなかった。そして、《0020》がなにをしているかも……


「嘘っ…… あいつ、食べてる……の?

『皿を持つ男』を喰ってる?!」


 DDがDDを捕食するなどと言う話は聞いたことがなかった。しかし、今、目の前でそれが起きているのだ。そのことがなにを意味するのか、摩耶には見当もつかない、だが、とてつもなく嫌な予感がした。


「なんか、ヤバい! 玲奈!!

すぐにやつに止めを刺しなさい。早く!」


 摩耶は自分でも驚くほどの大声を張り上げていた。玲奈も同じことに気づいたようだ。珍しく声が少し上ずっていた。


「HE弾 セット ファイヤ!」


 一斉に飛天のキャノンが火を吹く。

 《0020》の周囲に赤い壁が現れる。砲弾が次々とその障壁に阻まれ四散する。



「嘘。フィルタが復活した……?!」


 摩耶は全身に嫌な汗が吹き出るのを感じた。


キュロロロロロロ


 戦場にDDの甲高い咆哮がこだました。



2021/04/11


□□□ 次回予告 □□□

仲間を喰らい復活した《0020》が玲奈たち特務大隊に襲いかかる。

その圧倒的な力に対し、玲奈たちは決死の白兵戦を挑む。その時、《0020》は想像を越える能力を発動させた。

次回、超弦天使レヴァネーセス 

エピック3  カテゴリー5の脅威

さぁ~ 次回もぉ~ ハッスル ハッスル!

□□□□□□□□□□□□□


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