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超弦天使 レヴァネーセス ~ 夏に降る雪  作者: 風風風虱
epic 1 デーモンスレイヤー
1/104

① 我々は狙われている

「エリア33(さんさん) 双美山(ふたみやま)上空に時空断裂確認。


空間歪率(わいりつ) .3(こんまさん) 


2  


11     


24    歪率 さらに上昇中!



51   



90


92


96

98 まもなく臨界に達します」


 緊張した声が発令室(コマンドルーム)に響き渡る。


「エリア33をメインスクリーンに映して!」

「エリア33 映します」


 正面に設置され大スクリーンに青空を背景にした山が映し出された。


 双美山。

 標高500メートル。

 ハイキングコースで家族や恋人たちに人気。


 そんな情報が高原(たかまはら)摩耶(まや)の頭に現れては消えていった。


「民間人の避難状況はどうなってますか?」

「既に完了してます」

「99.99 臨界!

侵食球 顕在化します!」


 双美山の上空に黒い点のようなものが突如出現した。全く光を反射しないその点は正真正銘空間に空いた穴だ。

 メインパネルの横のサブパネルに侵食球の三次元デジタイジンクモデルが投影され、次々に諸元データが埋まっていく。


「侵食球半径10.2メートル 

レベル4(よん) ノーマル 

……

時空震 検出。 P波、S波同時鳴動!

侵食体 来ます!」


 侵食球がぐにゃりと(よじ)れ、瓢箪(ひょうたん)を逆さまにしたような形になった。そして、下の部分が分離してポトリと落ちる。


「侵食体 分離 

落下予測地点 双見山 山頂」

「サーチを! スカウターはどうなっていますか?」

「既に双見山上空で待機。

観測ポイントへ移動させます」

 

 オペレーターの言葉を聞きながら、摩耶はメインスクリーンを凝視したままだ。ただし、注視しているのは未だに上空に空いている穴ではなく穴から山頂に落ちた侵食体のほうだ。もっとも、カメラの位置が悪いため山頂の様子は良くわからなかった。

 詳細は、無人偵察機(スカウター)からの情報に頼るしかない。


「スカウターからの映像を第2スクリーンに映します」


 第2スクリーンに山頂の映像が映し出された。山頂から少し左にずれたところに黒い染みが広がっていた。白紙に墨を一滴落としたような感じだ。

 映像はその染みをクローズアップする。

 全く光を反射しないそれは、穴が空いているのか、それとも黒く変色しているのか判断するのが難しかった。

 摩耶は軽く頭を振り、いつもこの感覚に陥ってしまう自分に苦笑した。頭では理解しているつもりでも感覚、本能は納得してくれない。

 あれは理論的に言えば穴。

 我々の世界だけで考えれば厚さを持たない完全な平面。だが多次元世界で考えると穴なのだ。


「!」


 不意に染みから白いものが姿を現した。

 手だ。

 人の手のようなものが現れ、染みの縁を掴んだ。続いてもう一本現れ、同じように染みの縁を掴んだ。


DD(ディディ)確認 

レジストリ照合開始」


 黒い染みからぬるりと人の顔が現れた。いや、人の顔という表現は的を得ていない。角刈りの頭に口はへの字に曲がり、鼻の位置には二つの穴が空いているだけ。左目は真ん丸で異様に大きい。顔の左上半分は金色に輝くその目で占められていた。金色の皿を顔に貼り付けているかのようだ。


「照合完了 レジストコード0321(まるさんふたひと)

コードネーム 『Hombre(オンブレ) con(コン) plato(プレート)』」


 次元(ディメンション)魔物(デーモン)、通称、DD(ディディ)が穴からその全容を現した。身長40メートルの巨大男。全身に白い剛毛が生え、右手が異様に大きい。人間を適当に引き延ばした風刺画(カルカチュア)だ。


「『皿を持つ男』……か」

 

 摩耶は小さく呟いた。

2021/04/04

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