さて、手土産は何にしようか。
お読み頂きありがとう御座います!!
この物語と次でそれぞれ新キャラ登場です!!
ハウアー大臣は皇帝陛下への献上品を持って行く為に、翌日早々から『ラスカンフェル』を離れた。前々から思っていたが動きが早いパワフルおじさんだな。
オレは領主様と朝食がてら話をした。
現在、ランデウス帝国は隣の【ムーガレド連邦】と一触即発の状態らしい。事の起こりはムーガレド連邦による国境封鎖らしい。ランデウス帝国は東側の国とはムーガレド連邦を介さないと交易が出来ない。
それまでは良好な関係を保ってきたのだが、今回ムーガレド連邦の太守になったザルガネドという男が相当な野心家で、ランデウス帝国の商業の道を塞ぐ事で帝国の弱体化を計り、帝国にちょっかいを出そうとしているらしい。
王国は現在ムーガレド連邦とは不可侵条約を結んでおり、帝国とは領土を接していないので特に敵対はしていない。
今回の就航に対しては帝国的には非常に渡りに船の状況で、皇帝陛下は直ぐに下知を出し喜んでいたと言う。なるほど予想よりも認可が早く降りたのは、そういう理由があったからなのか。
確かに現在『アルゴー』には帝国の商人達が多数押し寄せて馬車の乗船率は7割を超えてる状況らしい。
既にマイケル兄さんには連絡済みで、中型船『カスケード』を出航準備させている。
『カスケード』は100m☓25mの魔導船で大きさ以外は全ての仕様は『アルゴー』に準拠する。違いは馬車用のスペースを大きく取っている為に客室が少ない事である。
スピードを重視している船で平均速度が60ノット:120キロである。元来は近距離用として作られているので快適装備が少ない。『アルゴー』に付く馬用プールは付いていない。
『アルゴー』からのフィードバックがある為に航行に関しては問題無いはずだ。
船長はヴィーグル船長の片腕で航海長だったモーグ船長に任せてある。
本来なら『アルゴー』級の船をお願いする予定だったが、まだ製造に時間が掛かる事と嵐の多いこの地域の航行を任せるにはうってつけの人物だからだ。
コレで帝国は王国以降の東側の国々と交易が出来るし、コチラも帝国の貴重な品々を扱える。領主様は是非とも成功させたいと力説されていた。ウチとしても頼もしい事この上ない。
領主様の屋敷から『アルゴー』に戻ると、16名の密航者がヴィーグル船長の喧嘩キックで海に落とされていた…。どこの港でも恒例行事になってきたな…。
「船長、お疲れ様。最近は船長に蹴られたいファンが居るらしいよ」
「何言ってんだ…笑ってないで仕事しろ!」
「へいへい…」
オレはカルタスさんと食堂で今後について話をする。
「フムフム…なるほど。帝国が前のめりなのはやはりムーガレド連邦との件が絡んでたのですね」
「やっぱり知ってたのか。流石は『地獄耳のカルタス』だけはある」
「それ言われた事無いです…」
「帝国とは上手くやれそうだし、問題は無いけど…後はどう立ち回るかだな」
「『コックスナル』の方はどうなりましたか?」
「まだ連絡無いけど次かその次で船に乗ると思ってるんだけどね。まあ気長に待つよ『ダーラムス』での交易は出来るからね」
「後はリュピタルですね。魔の海峡を渡れるかだけですが…あの嵐でもビクともしませんでしたからね…『アルゴー』ならば大丈夫かと」
「結局、帆船基準だから魔の海峡なのだよね。魔導船ならタダの流れがキツい海峡ってだけなんだよ」
「すんなり行けそうですね。障害物が無ければ良いのですが」
「最悪はオレが吹き飛ばすから大丈夫」
「流石は『オークロード殺し』のアレス様ですね!!」
「それ、やめなさいよ」
上手く返して大笑いしているカルタスさんを生温い目でみながら憮然としてると、誰かが紅茶を持って来た。
「おっ!ありがとうキャサリン。仕事はどうだい?」
「はい!頑張ってます!」
「うん、とにかく王道を進みなさいな。急がば回れと言うからね」
「いそ…??」
「急がば回れ。早く一人前になりたいなら、変な近道をしようとして足踏みしてしまうより、たとえ面倒でも王道を回りながら進めば、結果一人前になるのが早いという意味だよ」
「なるほど…分かりました!頑張ります!」
キャサリンはパタパタと歩きながら仕事に戻った。
「アレス様は難しい話を知ってますねぇ…私も聞いた事がありませんが…」
「急いては事を仕損じるとも言うからね。慌てて物事をやっても良い事はないって事。だから『コックスナル』の件も慌てず待ってれば良いよ」
「う〜ん、やはりアレス様は8歳じゃ無いと思うんですがね…」
「ううん、ボク8しゃい」
「…何言ってるか全く分からないですね…」
チッ…このままではオレの年齢詐称疑惑が深まるばかりだな…クソっ!
『ラスカンフェル』での停泊最終日、マイケル兄さんや他の皆にお土産でも持って行こうかと街の方に繰り出して行った。
ここ港街の『ラスカンフェル』では帝国で良く用いられてる品々がそのまま入って来てるらしいので、王国では見ない商品が色々と並んでいる。
特に銀製の品が多いのは帝国の銀採掘量が突出して高い為である。多数の銀山を持っており、世界で流通している銀の7割が帝国の銀なのである。
オレは兄さんに銀製のペーパーナイフを買った。カノーには銀製のカフスボタンを、ギッデ親方とリッカさんには銀…じゃなくて帝国産のワインを樽で購入した。帝国産のワインは種類も豊富で質が良いと評判なのだ。
チャックに何を買っていこうか迷ってうろついてたら、ヒューイックさんと出食わした。もうとっくに出発したのかと思ってたら、捜している二人は、私よりも確実に到着が遅いからゆっくりとしていたらしい。まあ、普通に考えても陸路では半年は楽に掛かるからね。
「何見てたんですか??」
「うん、掃除用のスライムを見てたんだ」
「掃除用??スライムが??」
「帝国では掃除屋としてよく飼われてるよ。料理の端材とか何かこぼしたり、下水処理にも使われてるよ。食べさせとくと大人しいからね」
「ほうほう、ゴミ処理か…面白いなそれ」
「うん、そうでしょ?でもね僕の見てたのはちょっと珍しい奴なのよ」
「珍しい??メタルとか?」
「アレは捕まえられないしすぐ逃げちゃうよ。コレコレ、真っ黒なんだよね」
そこには小さい真っ黒なスライムがいる。確かに見たことないなあ…。
「おっ!いらっしゃい!何かお探しで?」
「このスライムって…何スライム??」
「あ〜コレね。何でも帝国から遥かに南西にある【トムテム王国】って小さな山岳地帯に有る国で遺跡の中に居たらしいですぜ。ただしコイツ雷持ちでね、買って帰ろうとする客をビリビリさせちまうから売れ残ってんですよ」
「ニャア〜〜」
ん?タマがこのスライムに反応してる。何か意思疎通してるように見える…まさかの知り合いか?
「タマ、このスライム連れて帰る?」
「ニャアニャア!」
「じゃあこの黒いのとソコの緑のを買うわ」
「へい!しかし大丈夫ですかね?ビリビリ来ますよ?」
オレは小さな黒いスライムを手で掴む…がビリビリしない。タマがこのスライムを頭の上に乗せた…なんか微妙だけど良いかな…。
「おお、初めてだよビリビリさせないの。仕入れ値が高いからこの値段だけど勘弁して」
「問題無いよ。じゃあそっちの緑はサービスしてよ!」
「アハハハ!お兄ちゃんには勝てねぇなイイよ持っていきな!」
「ありがとう!!」
「アレス君にはビリビリさせないんだね?何故だろう?」
とヒューイックさんが指を出すとパチって電気を出した。
「イテッ!!何だよぉ〜俺にはやんのかよ…」
うむ、確かにオレとタマにはビリビリしない。不思議なスライムだな…まあ、タマが気に入ってるみたいだし良いかもね。
ヒューイックさんと別れてから船に戻ったオレはチャックの所に行った。
「チャック〜お土産買って来たよ〜」
「は?アッシに?何ですかね…うわあ!」
「スライムだよ。ゴミ掃除してくれるってさ。使えない端材とか出るでしょ?」
「ほう…今はゴミに関しては『アルゴー』の方で処理してたからなぁ〜どうだろう?」
『スライムのゴミの処理能力は高いので問題は有りません。逃さない様にだけして下さい』
「よし、採用。チャック、名前つけて」
「えええ…アッシが…」
「じゃあプヨプヨで!!」
キャサリンが割り込んで来た!クソっ!オレよりセンス良いじゃないか!!
「採用!!プヨプヨで!」
「やった〜!!プヨプヨ!!」
「キャサリンがプヨプヨの世話して!!」
「分かりました!!」
こうして緑のスライムのプヨプヨは食堂で働く事になった。
「さて、問題は君の名前だよ、黒スライム君」
「ニャア〜〜」
「う〜ん…」
「ニャア…」
「フクゾウで!!」
「ニャア!!」
黒スライムはピリピリしながらぴょんぴょん跳ねている。嬉しいのかな??タマも気に入ったみたいだし「どーーーん!!」と決めてしまおう。周りの人達の生温い眼差しを受けながら、オレとタマとフクゾウだけが喜んていた。
さあ、いよいよ出航だ!!
黒いスライム『フクゾウ』が、「どーーーん!」と登場です。
フクゾウは今後”とある登場人物”と絡む事になります。
まだ先の話になりますがお楽しみに!
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