さて、帝国の大臣の度肝を抜こうか。
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巨大交易船『アルゴー』は21日間の航海で帝国の港街である『ラスカンフェル』に到着した。
『ラスカンフェル』は帝国の港街でもあるが海上要塞としての顔を持つ。
その日要塞の見張り塔で任務に就いていた衛兵が海上に小さな白い点を発見した。魔物かとしばらく見ていると物凄いスピードでコチラに向かって来てるので驚き直ぐに報告をする。
「白い物体が物凄い速度でコチラに向かって来ています!!」
「何だと!魔物か??」
「何かは分かりませんが…」
「私も行く!」
見張り塔で見ていた衛兵は錨が付いているのを発見する。巨大な船だ!!
「どうだ?まだ接近してるか??」
「あっ!隊長!!あれは巨大船かと思われます!!」
「何??船だと??」
「あっ!旗がある様です…アレは…王国の旗です!!」
「王国の旗??ま、まさか…あの船は…い、急ぎ領主様と滞在されているハウアー様にコチラに来られる様にと!!急げ!!」
要塞内部と街中が大騒ぎになる中、何も知らない『アルゴー』は汽笛を鳴らして港の近くまでやって来る。
その頃、早馬で領主の屋敷にやって来た衛兵は王国旗を掲げた白い巨大船がやって来た事を報告した。
「何?その船は王国旗を掲げていたのだな?」
「は、はい!間違いなく…しかし恐ろしく巨大な船です」
「それほど大きいのか??」
「最初は魔物かと思ったほどで…ガレオン船が小舟に見えます!!」
「ハウアー様、とにかく行ってみましょう!!」
「うむ、とにかく見てみないとな!行くそ!!」
領主の屋敷も大慌てである。
急ぎ港に駆け付けて見ると、そこには見た事もない巨大な白い船が横付けされようとしていた。上の方を見ると甲板から見てる人達が大きく手を振っている。すると船から拡声器で大きな声が流れてきた。
「『ラスカンフェル』の街の皆様!初めまして!!王国デュミナス領よりやって参りました交易船『アルゴー』です!私は兄のマイケル=デュミナスより全権を預かるアレスと申します!交易許可証はハウアー財務大臣より戴いております!今から下船致しますので領主様にお取り次ぎを宜しくお願いします!!」
ハウアー財務大臣は開いた口が塞がらない様子だ。領主様も完全に固まってしまっている。
『アルゴー』は船体を横付けした後、馬車のハッチを降ろしていく。乗客用の入口は船から降ろされたタラップが付けられて乗客が降りて行く。
街中が騒然とする中でアレスは最後に乗客用の入口から降りて行った。アレスがタラップから降り立つと奥からハウアー財務大臣が領主様と一緒に走ってやって来た。
「おお!!コレはハウアー財務大臣自らいらっしゃるとは…恐悦至極に存じます」
「ア、アレス殿!久しいな!こ、コレが交易船なのか??」
「はい!お約束どおり交易船でやって参りました。この船は『アルゴー』と言いまして巨大な魔導船になります。さあ!船内をご案内致しますのでどうぞお入り下さい!」
「お、おお、早速案内してくれるのか?それは有り難い。何人でも構わんかな?」
「どうぞどうぞ!何人でも見たい方はお入り下さい!明日か明後日からは街の皆様にも公開致しますのでご自由にどうぞ!」
「な、何と…街の者にも見せるのか??」
「ええ、各港で見学会を実施しまして大変御好評頂きましたので、コチラでも同じ様に実施させて頂きます」
「そ、そうなのか?それならば皆に見せるのが良かろう。近衛兵!付いてまいれ!」
オレは皆を引き連れてタラップを上がってゆく。入口のホールに皆が集まった所で『アルゴー』の分体がフワフワとやって来る。近衛兵達に緊張が走った様だが構わず続ける。
「こちらは『アルゴー』の分体です。この船自体が巨大なオートマタですので管理を船自身が行っています。では船内の御案内を『アルゴー』にさせますので…『アルゴー』!後は宜しく」
『かしこまりました。初めましてハウアー閣下。私はこの船の管理をしております『アルゴー』と申します。それでは早速船内の御案内をさせて頂きます。コチラへどうぞ』
オレは案内を全て『アルゴー』に任せる。ハウアー大臣は領主様と色々と聞きながら『アルゴー』に案内される。
最初は面食らってたハウアー大臣だが慣れてくると『アルゴー』を質問攻めにして来た。凄えなこの人は…。
破綻する事なく質問攻めにも冷静沈着な『アルゴー』は最後にはハウアー大臣から「部下に欲しい」とまで言わせた。
やはりと言うか食堂には皆が感動した様で「これが毎日食えるのか?」とか「ウチの要塞の食堂になって欲しい」などと言われた。
またハウアー大臣からはセキュリティー関連と馬車の運搬や馬のサービスに対して「大変素晴らしい」と手放しで喜ばれた。また、船の心臓部である魔導炉の有る動力室を見せると大変興味深く質問して来た。
「ハウアー閣下、この間話をした黒いクラーケンの魔石がこの船には使われてるのですよ」
「黒いクラーケン??それは遥か昔にこちらの方で災厄をもたらした伝説のクラーケンか?」
「ああ、領主様はご存知でしたか。はい、恐らくはそのクラーケンか、もしくはその子供かと…」
「それを倒したのか??そんな馬鹿な…どうやって…??」
「クラーケンを陸に飛ばして始末しました。オレとタマの二人で…思ってたより簡単でしたよ、陸ですからね」
「ニャアア〜〜!」
「こ、このネコが…クラーケンを??」
「タマはオレの魔力を吸って超強化されるのです。まあ、とにかくオークロードよりは簡単でしたよ」
「そ、そうであったな。アレス殿はオークロード討伐もしておったな…」
近衛兵達からは驚きの声や「あの噂の特待員か!」とか聞こえてきた。
「魔石の大きさ、魔力によって動かす船の大きさが決まります。この黒いクラーケンの魔石だとこの船の大きさなら余裕で動かせる事が出来ると言う事ですね」
「なるほど。確かアレス殿は船用の巨大なドックのオートマタがあると言っていたが、それもクラーケンくらいの魔石が使われているのか?」
「ああ、超巨大ドック型オートマタ『オケアノス』にはウチの領内で倒したヘビーモスの巨大な魔石が使われていまして、クラーケンの魔石よりも遥かにデカいです」
すると横で聞いていた領主様がビックリしたように呟く…。
「へ、ヘビーモス…まさかそんな化物まで倒していたのか…」
「いやぁ〜アレはちょっと死ぬかと思いました。倒せたのは仲間のおかげですよ」
領主様は絶句していた。まあそりゃあビックリするわな。
ひと通り船内の説明が終わると領主様がパーティーを開きたいとの事で4日後に領主邸に来て欲しいとの事だった。ハウアー大臣も出席するとの事で当然オレは行く事にする。その時にでも例の土産を渡すとしよう。
ハウアー大臣と領主様の見学会が終わった翌日から街の人達の見学会を開いた。物凄い大盛況で連日多くの街の人が訪れた。
帝国随一の商業都市『アナスレーダ』からの商人達が大挙して訪れていたらしい。流石はハウアー大臣である。
4日後パーティーに呼ばれたオレはおぼっちゃまくんみたいなのを着てヴィーグル船長とカルタスさんと一緒に領主の屋敷にやって来た。
パーティーにはハウアー大臣と領主様夫妻と二人の姉妹、冒険者ギルドのギルマスもやって来ていた。後は街の有力者など色々である。
最初は領主様がスピーチをした後、オレがスピーチをしてパーティー開始となった。
オレはハウアー大臣と領主様の三人で話をしていた。今後の就航についての話しであった。
「今回の航海ではリュピタルまで行く事が決まってますので約4ヶ月周期で来る様になると思います」
「何と…リュピタルまで2ヶ月で行けてしまうのか??」
「予定ではその様に。もう一隻『アルゴー』級の船を造る予定も有るので、それが完成すると半分の周期になります」
「デュミナス領と定期便を出す事は出来ないだろうか?」
「そうですね…今造っている中型船ならば可能かと。それならば『アルゴー』程では有りませんが馬車も入れられます」
「それは良いな!是非とも頼む。デュミナス領の品々は貴重品揃いなのでな」
「では帰ったら兄と相談の上、中型船を就航させる様に手配致します」
「うむ、頼んだぞアレス殿」
「承知致しました。ではハウアー閣下、今回の就航の御礼にこちらの品を皇帝陛下に献上致しますので帝都にお持ち下さい」
オレはアルミ製のアタッシュケースからギッデ親方の『目一』の剣を取り出して見せた。会場ではおおっと声が上がる。
「こ、これはギッデ親方の『目一』か??」
「はい、こちらの剣を皇帝陛下に是非にと兄マイケル=デュミナスより預かって参りました。何卒お納めください」
「確かに承った。皇帝陛下もさぞお喜びになろう。感謝するとデュミナス卿にお伝え下さい」
そしてオレはハウアー大臣に耳打ちをする。
「剣は皇帝陛下への献上品ですが、この入れ物のケースはハウアー閣下への献上品で御座います。アルミという金属で作ったマジックバックでして、軽くて耐久性がある金属で作っています。ぜひ旅の時にお持ちになって下さい」
「なんと…私にまでこの様な…アレス殿、大切に使わせてもらうぞ」
「兄もハウアー閣下にくれぐれも宜しくと言っておりました。今回の事は閣下がいらっしゃらなければ成しえなかったと思っております。機会が有れば正式にでもお忍びでも是非いらして下さいとの事です」
「左様か…うむ、そのうち訪ねさせてもらうと兄上にお伝えしてくれ」
「お待ち申し上げております」
まあ、このくらいやっておけば問題無く交易が出来るだろう。もちろん領主様にもお土産は持参している。その中でも領主様の娘姉妹に贈った『タツナミ』で買っておいた髪飾りが子煩悩な夫妻には大変に喜ばれた。
こうしてパーティーは大盛況で終了した。
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