さて、帝国の港に向かいますか。
お読み頂きありがとう御座います!!
港を大きくする為の工事が本格化すると同時に港の受け口としての街も大きくなって来ている。宿屋も何軒か出来たし、商業施設関連は充実して来た。
また、港の人達に頼まれて兄さんが中型船を造る前に小さな漁船を数隻造ったので、今では海鮮系の市場も出来ている。この間中型船が出来た後も数隻造った様で漁船用の場所も更に大きくする予定なのだ。
いよいよ港町らしくなって来たね。
積荷なども積み終えて来たので、そろそろ出航準備に取り掛かる。
馬車は今回急に決まった帝国行きにも関わらず、どこからやって来たのかカルタス商会以外にも多数参戦してきた。商魂たくましいわ!!
馬車スペースはガラガラになるかと思ってたが5分の1くらいまで埋まったので嬉しい限りだよ。帰りはもっと沢山の人や馬車を運んで来たいね!
いよいよ出航する。帝国の港街『ラスカンフェル』に向けての航海である。
沢山の人が集まる中、マイケル兄さんとカノーが手を振っているのが見えた。兄さん、カノー、行ってくるよ!
甲板から離れたオレはヴィーグル船長と操舵室にいた。
「よし、馬車用ハッチと乗船用入口を閉めろ!!」
船の後方の右側に付いてる馬車用のハッチを跳ね上げる様に閉めてゆく。堀に架かった城の城門みたいだ。船の真横の乗船用の階段は飛行機のタラップの様になっていて、そのまま自走して離れてゆく。
『船長、準備完了致しました』
「うむ、では微速離岸。東北東に舵を切れ」
『アルゴー』はゆっくりと左方向に回りながら港を離れていく。消波ブロック帯を抜けると船長が号令を出す。
「よし、『アルゴー』全速前進!!」
遂に帝国の港を目指す事になった。
2日目までは特に何事も無かったが、3日目に突然天候が崩れた、嵐である。が、『アルゴー』は大波も暴風雨も全く影響を受けない。何故ならば、海に面した部分は水魔法て水流を制御されているし、船体上部は風魔法によって姿勢制御から前進まで制御されている。また、鋼鉄製の船は鉄製ハッチで密閉されており船内には水はおろか音さえも入らないのだ。その為船内では少し揺れてるのかな?くらいの感じしか起きないのだ。巨大鋼鉄船の面目躍如である。
ヴィーグル船長は舵取りをしていたがさほど緊張した風ではない。
「全く…この大嵐でも全然平気だからな…しかも速度はそのままって…ホント恐ろしい船だよ…」
「このくらいの嵐ならば『アルゴー』に乗ってる分には余裕のはずですよ」
「このくらいねぇ…今まで大型って呼ばれてた船でさえこの嵐では避けて通るぜ」
「帆船で木造なら仕方無いですよ。うちの中型船だとどうかな…多少は揺れちゃうよな」
「沈まなきゃ大丈夫と同じさ。揺れるくらい我慢するだろうよ」
「我社は快適さをモットーにしてるんで…」
「快適さ…だと?…」
「長い時間船に乗るのてすからね。快適じゃ無いとね」
ただの移動手段だけでは無いサービスや安心感を提供出来ればと思っているのだ。いずれば魔導列車を通したいし、魔導飛行船も何とかしたい。
乗務員の食事の時間に食堂に行くとチャックがテキパキと注文の料理をこなしていた。
「チャック、今日はB定食ね。ライス大盛りで!!」
「おや、坊っちゃんが大盛りなんて珍しいね」
「そうかな?何となくね。キャサリンはどう?」
「真面目にやってますよ。色々と無理はしてるみたいですけどね」
「無理?身体が悪いとか?」
「いやいや、そういうのじゃなくて遅くまで料理の勉強もしてるみたいでしてね」
「ああ、通常業務に支障が無ければ好きにやらせて。あまりに無茶し過ぎるならチャックから言ってあげて」
「ええ、体を壊さない程度はね。はい!お待ち!」
「キタキタ!!うまそ〜!!」
今日のB定食は鳥の唐揚げなのだよ。フフフ…。チャックの唐揚げは下味が変わっていて、その味の染み込み具合とかヤバいのである。
この食事を取ってる時も嵐のど真ん中にいたのだが揺れは少ないし音も聞こえないのでゆっくり食事が出来る。『アルゴー』の姿勢制御は上手く働いてる様である。
2時間程で嵐の海域を抜けてしまった。『アルゴー』の速度が速すぎる為に嵐の速度の方が追いつかないのだ。
ちなみにヴィーグル船長の話だとここら辺は嵐の多い海域らしい。親潮の流れに乗って台風が発達しながらやって来るのである。その為に王国と帝国の海上貿易は中々発展しなかった様である。
現在は公式の貿易は無く、小さな港を経由しながらの細々としたヤミ交易が行われてるのが現状だ。
嵐も過ぎたので甲板に出てみる。甲板はもう綺麗になってる。掃除用オートマタが甲板の水溜りなどを掃除してしまったのである。う〜ん仕事が早い…。
外を見てると甲板に上がって来た人がいた。何者だろう…中々の魔力を持った若者である。身なりは魔術師で有ろうか?
「いやぁ〜凄い嵐だったのに船の中だと全く感じないのだから凄い船だよね!流石は特待員S級の魔導具使い…『オークロード殺し』のアレス殿が造った魔導船なだけはあるなぁ」
「その『オークロード殺し』はやめて下さいよ…」
「フフフ、船長が言っていたのでね!私はB級の冒険者でヒューイックと言います。お見知りおきを、アレス殿」
「はじめましてヒューイックさん。どちらからいらしたのですが?」
「私は『ダーラムス』から乗って来たのですがね、デュミナス領からランカスター領を抜けて連邦まで行き、それから帝国まで行こうと思ってたのですがね…まさかの帝国行きになったので助かりましたよ」
「ほうほう、それは運が良かったですね!デュミナス領に入る2日前に帝国からの許可が届いたのですよ」
「いやあ、本当に助かった。連邦から帝国に抜けるのはかなりキツイのでね…」
「帝国に何か用事でも?」
「実はある人を追ってコチラまでやって来たのですけど、一足違いで帝国に向かってしまったらしいのですよ…参りましたよ…」
「それはキツいですね…って事はヒューイックさんは帝国の冒険者ギルドの所属ですか?」
「ええ、私は帝国の『ガイアース』の冒険者ギルド所属でしてね」
「ガ、ガイアース?!!じゃあヒューイックさんはサダムと言う冒険者はご存じですか??」
「えっ??アレス殿はサダムさんを御存知なのですか??私はサダムさんを追って『ロックス』まで行ったのてすよ!」
「何と…そうでしたか…いやオレも直接の面識は無いのですけど、『ロックス』でサダムさんが連れて行ったマルスと言う少年を捜してましてね、オレも一足違いで会えなかったのですよ」
「ああ、確かに孤児院で聞きましたね!サダムさんが連れて行くのだから余程の素質が有るのでしょう。その少年とお知り合いで?」
「それも直接の知り合いでは無いのですが…もしかするとオレと同じ…まあ『どんだけ~』ってのが気になったというか…」
「ほう、噂を聞いて会いたくなったと…?」
「まあ、そんなトコです…ところでサダムさんはどの様な冒険者なのですか?『千手のサダム』と呼ばれる冒険者だとお聞きしました」
「サダムさんは全ての属性魔法を使え、剣、槍、弓、格闘術のエキスパートでもあります。暗殺術や盗賊の技などにも精通し、薬草調合や錬金術、魔法陣まで扱う事の出来るホントにとんでも無い冒険者ですよ。その多才な能力から千の手段を持つ男…『千手のサダム』と二つ名を付けられているのです。」
「ほう…噂以上に凄い人ですね…それでA級とは不思議だなあ」
「あ〜あの人はあまり冒険者ギルドの格付けには興味が無い様で…ギルマスにも昇級しろと言われてるのですがね…」
「ほうほう…珍しいですね〜なんか面白そうな人だなぁ」
「人柄は悪く有りませんし、皆からも頼りにされてますけど…放浪癖が有りましてね…それだけは困ったものです」
「いずれお会いしたいですね。今は忙しくて中々時間が取れませんが…この海上貿易が軌道に乗ったら帝国にも行ってみたいと思っています」
「いやあ是非いらして下さい!40年振りの特待員の事は帝国の冒険者ギルドでも話は持ち切りでしたし、その実力はどのギルドで聞いても素晴らしいと旅の途中で聞きましたからね!」
「ええ、是非に…そうだ、この紙をマルス君に渡して貰えないですかね」
オレはその紙に”君が日本人なら是非とも会いたい”と日本語で書いて渡した。こちらの文字では無いので日本人でなければ分からないはずだ。
「これ…何か文字の様ですけど…??」
「マルス君がコレを読めたならオレの考えてる人と言う事です」
「…分かりました。マルス君に会えたら必ず渡します」
「ありがとう御座います。感謝します」
コレで彼に繋ぎが出来れば良いのだが…。ヒューイックさんは良さそうな人だし、任せても安心かな。御礼じゃないけど今度販売するマジックバックを渡すとヒューイックさんはビックリしていた。
そんな事があった6日後、面白い連中に出食わした。それは小さな交易船を襲っていた海賊達である。
「ヴィーグル船長、アレって海賊なの?」
「ああ、間違いねぇ。ここら辺じゃあ小さな船数隻で襲うのが主流だからな。交易船が小さな速度の出る船だからそれに追い付く為に海賊船も小さいのさ」
「じゃあ助けても良いかな?」
「アレス坊の好きにしろ。俺はどっちでも構わん」
って事でオレは助ける事にした。追い掛けられてる交易船はコチラに向かって来てるので丁度いい。
オレは摩銃コルトを中設定で構える。そして海賊船にバンバン撃ち込んて行くと軽々と沈んて行く。やっぱり木造だし耐久性はかなり低いね。海賊船は6隻ほど沈めると蜘蛛の子を散らす様に逃げ出したので、数隻沈めて終わりにした。
交易船は無傷の様だったので蜻蛉のオートマタを派遣して魔導無線で会話をしたのだが、問題なさそうなのでそのまま別れる事にした。
さっき逃げ出した海賊船はレーダーで補足しているが、もう動きそうに無いのでそのままシカトした。
それから2日後に嵐がまたやって来てと、船の耐久性を試すのにはもって来いの天候となった。
嵐の時間は2、3時間で終わるのでその間は例のサターンが残した魔導具を調べていた。外側は金属では無い何か…タマの額の六芒星に似た材質で出来ていた。
魔力を使い詳細に調べていると1箇所だけ魔力を吸う部分が有ったのでそこに魔力を通したが、底なしかってくらい吸われ続けた。
とりあえず吸われるだけ吸わせてると、ポン!と音がして蓋がまぶたの様に上下に開いた。
その中には白濁したレンズの様な物があり、しばらくそれを見ていたがまた蓋が閉じてしまった。
更に魔力を注入しようとすると、タマがやって来て「ニャアニャア」としきりに鳴く。どうやら止めろと言ってるみたいだ。
「止めたほうが良さそうかい?」
「ニャア!」
「分かったよ。今日はこのくらいにしよう」
タマはこれが何か知ってるのかもしれない…。まあ、相棒が言うなら止めておこう。
と、そんな事をしている間に嵐は去った様だ。雲間から明かりも差してきて、とても綺麗に見える。
それから10日間の間に2回の嵐に見舞われたが、特に不具合も無く順調に進んでいた。
そろそろ帝国の港が見える頃である。
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