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さて、鉄の船を造ってビックリさせようか。

お読み頂きありがとう御座います!!

辺境領風雲編が始まります。ちょっと長めになりました…。

楽しんで頂けると嬉しいです。

辺境領デュミナスに戻ったオレはコツコツと旅の間に造ってきた造船用ドック型オートマタ『オケアノス』で鋼鉄製の大型交易船を造っていた。

『オケアノス』はドック用のオートマタとして作られた円柱を横にしたような形のドック部とそれを支え巨大魔導炉を装備した自走式の土台の本体部で構成されている。

全幅全長はドック部が20m☓300mで本体部は30m☓400mの大きさである。


「マイケル兄さん、この分だと後3ヶ月も有れば船は出来ますよ」


「毎度の事だがアレスのやる事には驚かされる…大型とは聞いていたが、こんなにデカい…しかも鋼鉄製…大丈夫なのか?」


「物には浮力があるので鉄でもちゃんと浮くのですよ。問題は魔導炉の動力で進むかどうか…まあ、余裕のはずなのですが試運転までは何とも」


「一度小さな船で試せば良かったのでは?」


「うーん…待ってる人が多いので早めに就航させたいんですよね…」


「とにかく出来るまでは他の事をキチンとやろう」


「はい、デュミナス卿…」


「それ、やめなさいよ」


最近、マイケル兄さんをイジるのにこれを使うのだ。”デュミナス卿”マイケル兄さんは男爵の爵位を貰ったのだからね、コレを使わない手は無いよねぇ〜。


船が出来るまでの間に交易用の武具や薬、エルフからの交易品などを備蓄している。

そして、まだ形にはなっていないが、今栽培しているものが成功すればデュミナス領の新たな交易品として主力になるだろう。

それに後もう一手…コレは成功するかは分からないが…物は試しでやっている。


色々と急いでいるのには理由があった。それは父の存在である。

本来であれば辺境領を何年かは父名義のまま発展させ、その後マイケル兄さんが引き継ぐはずだった。それが二年もしないうちにマイケル兄さんの手腕のみが評価され、オマケに爵位まで貰い辺境領が切り離されてしまったのである。

父はお目付け役だったカノーを叱責し、カノーを領内追放という措置を取った。カノーはそのままデュミナス辺境領の補佐役として正式に迎え入れられた。

流石にここまで来てやっと父は自分がハメられた事に気付く訳である。


そして、オレのS級特待員としての実績をようやく知る事となる。きっかけはオークロードの討伐が全冒険者ギルドに発布され、オレの名が全国区になったのが原因である。

父はよほど驚いたのだろう、エリオット兄さんをわざわざ呼び出して根掘り葉掘り聞いたという。

その時に父はオレを呼び戻す様にエリオット兄さんに命令したらしい。ところがエリオット兄さんは「御自分で今までアレスに対してやって来た事を考えて言ったらどうか」ときっぱり断ったと言う。

その後一度だけマイケル兄さん宛に父から手紙があり、オレを戻す様にと書いてあったそうだが、手紙を持って来た新しい執事筆頭に「アレスはもうウチの相談役で戻すつもりも無いし、本人も戻る気は無いと伝えて欲しい」と断ったと言う。

オレはつくづく良い兄を持ったと思うよ。


そんな感じで父が何をして来るか分からないので、早めに交易船を何とかしたかったのである。



3ヶ月後、白い色の大きな鋼鉄製の交易船は『オケアノス』と共に海上にあった。『オケアノス』は自走式であり、船を進水させる時は自らが海に入って行き、海上ドックとなり船を海上に浮かばせるのである。

交易船の全長は200m全幅32mで自動車運搬船をモチーフにしている。

この船に馬車ごと載せてしまうのだ。もちろん普通の貨物スペースも有る。貨物スペースはマジックバックと同じ原理のコンテナが置かれておりそこに物をバンバン突っ込むだけで大したスペースも無い。基本は人と馬車を移動させるものだ。

魔導炉は黒のクラーケンの魔石を使った。交易船ではあるが、実際は魔導力で動く船型オートマタである。

推進力は魔法陣による水流魔法で喫水部に水流を起こして前に進ませる。魔法陣に魔力を沢山送ると水流が大きくなって船の速度が上がる。船の上部は風魔法によって前方は気圧を下げてスリップストリーム状態を常に起こさせる。後方は追い風を作る事で更に推進力を得る。水流を起こす事により水の抵抗がほとんど無いに等しいので船速は最高速度60ノット(約120キロ)だが基本は50ノットで航行する。

魔物対策として『ミラー』の魔法陣全方位展開と【禁書】の『モンスターララバイ』を起動させる。

また、運行面での安全性も図るため新設計のレーダーとソナーの魔導具を取り付け障害物の有無や地形の把握などを管理させる。更に前方の洋上監視はトンボ型オートマタ10台とカジキ型水中探査用オートマタ10台による監視も含まれている。

船内には補助の魔導炉によって動く船内用オートマタも100体用意され、客の案内、警備、保守、運行補助に当たらせている。

そして、この船全てを司るのは管理者であるオートマタ『アルゴー』である。実際は『アルゴー』がこの船自体でもあり全ての管理者でもあるという位置付けだ。

自己修復機能も完備したこの船はまさしく動く街と言って良い。


「船長、いよいよ出発ですね!」


「よお、アレス坊…この船はホントに俺が要るのかよ?」


この自信なさげな船長はカルタスさんがスカウトしてきた船長のヴィーグルさんである。彼はこう見えて若い頃に海賊団の頭だった経験もある凄腕の船長だ。何度も沈没の危機を乗り越えて来た事から『不沈のヴィーグル』の二つ名を持つ。


「何言ってるんですか!船長のスキルがこの船の肝ですよ!あくまで『アルゴー』は船長の補佐役なんですからね!」


「ん〜そうは言うけどよぉ…何もする事無いんだぜ…」


「どっしりと構えて下さいよ!いざという時は船長の力の見せ所ですから!」


船内の乗組員は50名ほどでオートマタの監視教育等々で30名、後はレストランの従業員だ。

船旅だからって手は抜かない。風呂も大浴場完備だからね!


「じゃあ出発しよう!」


「よし!『アルゴー』発進!!東に舵を切れ!!」


「船長カッチョイーー!!」


「そ、そうか?」


やっぱり本職の人には敵わないや!!


港には沢山の人が集まって来ている。マイケル兄さんとカノーも勿論いる。


「お〜い兄さぁ〜ん!!カノぉ〜〜!!行ってくるよぉ〜〜!!」


「アレスーー!!無事に帰って来いよーー!!」


他の人達も歓声を上げながら手を振っている。段々とその光景が小さくなってきた。


このまま船は最初の港『ナガースフ』に行くのだ。そして、別れの挨拶もせずに客室で寝てたこの人を送って行くのも役目の一つだ。


「ア〜レ〜ス〜〜!!何で起こさないのよ!!」


『シュワ』ちゃんに連れられて来たミレーナ姉さんが、またほっぺたをプニ〜〜ってやって来た。おれも反撃して姉さんのほっぺたをプニ〜〜ってしながら


「だって姉さんがヨダレ垂らして爆睡してるからでしょ〜!!」


「あ〜〜!!レディーに向かってヨダレとか言うなぁ〜〜!!」


「レディーが聞いて呆れるよ!!意味知ってるのぉ〜?」


「この…アレスの分際でえぇぇーー!!」


この低レベルな争いを生温い目で見ながら船長は姉さんを連れてきた『シュワ』ちゃんに「アイツらホントに大丈夫なのか?」の問いに『シュワ』ちゃんは「ノープロブレム!」と親指を立てて言ってた。カッケ〜〜!!


姉さんとのバトルを終えたオレは、専用の船室に篭って魔女の国でジョルフィーナさんから渡された『謎の魔導具』を手に取った。

あの時も思ったけど、これは間違い無くサターンの挑戦状とみている。《私の後継者ならこの魔導具を動かせてみせよ》と言わんばかりだな。

魔力を流しても全く動かないが、間違いなく壊れてはいない。

必ず動かしてやろうと思っている。



その日の食事はタマを連れたオレとミレーナ姉さんと船長とカルタスさんの四人で特別室で取った。カルタスさんはオレと航路一周して問題点などを洗い出す事を手伝ってくれる。


「船内を回りましたが中々良いですな!特に馬車の固定や馬を並べてリラックスさせているのも良いですね」


「船内の長旅は人でもキツいですからね。馬なら尚更ですから、暴れて怪我をさせないようにリラックスさせているんです。ブラッシングや簡単な手入れ、餌やりや馬のシャワー何かも装備してます」


そう、馬車をそのまま入れても馬の管理が必要なのだ。その為に沢山の馬が見える様にして安心させて更に1頭づつ固定させて動かない様に緩いサポートをする。馬の管理の人員は5名だがオートマタも10台入れてるので安心である。また、馬専用のプールも用意してるので運動不足のストレスも解消される。


「コレだけやっても余計なお金は掛からないのは非常に素晴らしい。ホントはお金取っても良いくらい」


「お金を取らないから口コミになるんですよ。馬も人も楽が出来るならこの金額でも乗りたいってなるでしょ?」


「流石はアレス様、もう既に大きな商会の会頭クラスですよ」


「全く…アレス坊には驚かされっぱなしよ!8歳とか嘘言うな!」


「あら、アレスは8歳よ。姉のアタシが言うのだから間違い無いわよ」


おっ、珍しくミレーナ姉さんが良い事言った!!後でタマをモフモフさせて上げよう。


「まあ、昔からオッサンみたいだけどね〜」


さっきのは却下。所詮はミレーナ姉さんだったな。


そんなこんなで2日後に『ナガースフ』に到着した。『ナガースフ』の港ではこんなに巨大な船が来るとは思ってなかった様で街中騒然としていた。

港に後ろから接岸し、馬車が降りてくると皆が拍手をして迎えてくれた。その中に一際目立つ良い男がいる!!エリオット兄さんだ!!

エリオット兄さんはミレーナ姉さんを迎えに王都からやって来たのである。


「エリオット兄さん!!お迎えご苦労様でした!」


「いやぁ〜、ほんとにデカいなこの船は…要塞かと思ったぞ」


「海上要塞かあ…作る予定はまだないけと…」


「まあ、他国を脅すだけならこの船だけで充分だがな」


「エリオット兄様、お久しぶりです」


「ミレーナ、良く来たね。荷物は?」


「アレスから貰ったマジックバックです。コレに全部入ってますわ」


「なるほど…しかし便利だよな。また何枚か欲しいな」


「あ〜有りますよ。5枚くらいで良いですか?」


オレはエリオット兄さんの前にマジックバックを置く。


「…いいのかい?…こんなに…」


「売り物だから沢山あるし大丈夫ですよ!」


「今度、騎士団の正式採用にと提案してみるかな…」


「その際は連絡下さいね。カルタスさんトコ挟みますから」


「分かった。それじゃあもう行くよ。ミレーナ行くぞ」


「アレス、無茶したら駄目よ。分かった?」


「分かったよ姉さん。エリオット兄さん、姉さんを宜しく」


「ミレーナに言われたからもう良いか。頑張れよアレス」


「ありがとう兄さん姉さん!!行ってくるよ!」


こうしてミレーナ姉さんを送り、次の港を目指す準備に入った。出航は4日後だ。


ブクマや評価を頂きまして大変感激しております。

つたない小説モドキですが、皆様の応援が大きなモチベーションになっております。

また読みたいと思われた方はブクマと星な評価をお願い申し上げます。


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