閑話その参、コックスナルへの布石。
お読み頂きありがとう御座います!!
『ミタリアス』や『タツナミ』に立ち寄った後、向かう先にしたのは港町『ダーラムス』である。
ここは『コックスナル』から近い船の玄関口である。交易船を就航させるのに『ダーラムス』の状況を知りたかったのだ。
この港までは王国からの交易船も来てるはずなので活気のある港と踏んでやって来たのだが、実際はかなりイマイチな港だった。
港で聞くと王国からの交易船は年に数回しか来ないという。
それには理由があった。王国からの航路は魔物だけで無く海賊なども多く、採算が取れないという理由だ。それなら陸路で直接『コックスナル』に向かう方がリスクが少ないと言う訳だ。
魔物は何とかなるだろうが問題は海賊だな。
オレは『ダーラムス』の冒険者ギルドに立ち寄る事にした。海賊の情報を得る為である。
いつもの様にドラゴンを土産にしてギルマスの気持ちをグッと掴む。
「ほう…海賊か…確かに海賊は居るが討伐依頼とかは出て無いな…海賊と言っても正体は近くの漁師だったりだからな」
「漁師が海賊を?何か理由でもあるのですかね?」
「そうだな…ここ何年か魔物が多過ぎて漁にならない事も有るな。漁に行けないから食って行けないのさ」
「魔物が多くなった…何か原因がありそうですね…」
「うむ、実は目撃者によるとクラーケンが出るそうなんだ…しかも黒いクラーケンだそうだ」
「黒い??クラーケンが黒いなんて聞いた事無いですね…過去に事例があるのですかね?」
「120年ほど前にちょうど今の帝国がある西の海で黒いクラーケンが出たという記録があった。恐ろしいほどの魔力で魔物を従えて海を支配したとある」
「恐ろしいほどの魔力…魔物を従えてと言う事は『災厄』認定てすよね?」
「その通り。当時の冒険者ギルドの総力を持って挑んだらしいが、第一陣は全滅して、第二陣でようやく退けたらしい」
「退けた?倒したのでは無く??」
「海中と言う特殊な条件と黒いクラーケンの膨大な魔力によってトドメまでは刺せなかった様だな。だがかなりの深手を負わせた事でそれ以来は黒いクラーケンの目撃情報は無かったのだよ」
「う〜ん…となるとソイツが復活したのか、それとも子供が大きくなったのか…ってトコですね」
「うむ、無関係と言うのは流石に考え難いな。恐らくは復活したのではないかと…」
「しかし、今回は『災厄』認定されてない、しかも何年か経っている…何故ですか?」
「それは国が認定をしないからだよ。調査に関しても必要無しの一点張りでね、本部も手を焼いている」
「それは…厄介ですね…」
「厄介極まりないよ…漁で生計も立てられず、国から見放されれば海賊になっても仕方無いさ…討伐依頼が何度か国から出されてるが本部で握りつぶしているよ。特に本部長が怒り心頭でね…一度キレて王都に乗り込みそうになったしな」
「アレックス本部長…怒らせると怖いですからね…」
「と言う訳で航路は無理だと思うぞ…本当は交易か行える海にさえなれば良いのだが…」
「うむ…ギルマスに相談なのですが…海賊のリーダーを紹介してもらえませんか?」
「はあ?俺が知る訳な…」
「分かってますよ!!あくまでも漁民のリーダーって事で…とにかく海に出る手段か欲しいので」
「オイオイ…まさか…」
「ゴニョゴニョ…」
オレはギルマスに耳打ちをしてそのままギルマスの部屋から出る。
どちらにしろ原因が分かってるんだからそこをどうにかしないと何も出来ないからね。オレもタマも海上や海中は慣れてないがやるだけやってみるつもりだ。
数日後、漁民のリーダーと船に乗ってクラーケンの目撃場所に行く。
「本当にやるつもりなのか??帰るなら今だぞ」
「もちろんやりますよ。その為の準備もして来たんですから」
オレはまずトールさんからもらったヒュードラの魔石を使って、ヘビーモスの時『タマダ弐号』に取り付けた【禁書】の『マジカルブレイクダウン』の魔導具を新たに造り、それを『シュワ』ちゃんに装備した。
それともう一つ…重要な魔導具を改造して威力がかなり上がるようにした。コレが今回の作戦の肝である。
オレ達は目撃場所に着くと陸を確認してから近くの魔物を魔銃コルトで撃ち倒して行く。
すると海の底から物凄い魔力が急浮上して来る!!真っ黒な触手が船に巻き付いてくる!間違い無い!黒いクラーケンだ!
「ヨシ!!”釣れたぞ”!!」
オレはその触手の元に飛び込みながら近くで改造した魔導具を展開する!!
すると黒いクラーケンと船ごと確認した陸に瞬間移動した!
そう、オレが改造したのはあの瞬間移動の魔導具だ。人間を数人移動させるだけの物を魔導炉式に変えて、更に大きな魔法陣の展開により船に取り付いたクラーケンごと陸に飛ばしたのだ。
黒いクラーケンは巻き付いた船ごと陸に飛ばされ混乱している!
そこに『シュワ』ちゃんが【禁書】『マジカルブレイクダウン』を発動!!クラーケンの魔力をどんどん削って行く!
「ニャアアア!!!」
そこに予めオレの魔力をごっそり持って行ったタマが容赦無い攻撃を浴びせる!
タマが触手をバンバン切り落として逃げ足を遅くする。
オレも魔銃コルトで触手を撃ち抜いていきながら、魔神銃グレネードランチャーを取り出した。
「タマ!!避けて!!」
タマが離れた瞬間にグレネードランチャーを発射した!!グレネードランチャーの魔力は黒いクラーケンの眉間を貫いた!!
クラーケンはゆっくりと倒れてゆく…やったぜ!!
「…本当に倒しちまいやがった…」
漁民のリーダーは驚いた様子で呟いていたが、オレは冷静に分析していた。
クラーケンを倒す為には海で戦っても敵わない、ならば単純に陸に土俵を変えればコチラが有利になると考えたのだ。その為の瞬間移動魔導具の改良であった。
陸の上ならオレやタマの実力が100%出せるし、相手は海の中の様には動けずにコチラの攻撃を食らうしかない。
ヘビーモスから比べたらまだ魔力も下だったからね。
黒いクラーケンの魔石はかなりデカかったのでコレは船に使えると喜んだ。残りは漁民のリーダーに任せて皆の為に使ってくれと言った。今まで我慢させ続けたからね、コレでいくらかになるならソレで少しでも補填出来れば良いよね!
「オイオイ…本当に倒しちまいやがったな…こりゃあ大事になるぞ!!」
「コレで魔物は少なくなり、漁業も復活するでしょう。コレなら就航も問題無いのでは?」
「国からだよ!何故そんな危険な事をしたのかってな。国を危険に晒したとお前が処罰を受けるかもしれんぞ!」
「まさか…”クルージングに行ったら、たまたまクラーケンに襲われたので倒した”だけの事。オークロードの時より簡単だったと言っておいて下さい」
「何??オークロード??…ま、まさか…あの噂のオークロード討伐は…」
「オークロードは消し飛ばしてしまいましたから…そうだ!オークジェネラルはご覧になりますか?」
その後、連合王国から冒険者ギルド本部に預けられた就航許可証と報酬が辺境領に戻っていたオレの元に届いたのはそれから二ヶ月ほど後の事である。
ブクマや評価を頂きまして感激しております。
つたない小説モドキですが、皆様の応援が大きなモチベーションになっております。
また読みたいと思われた方はブクマと星な評価をお願い申し上げます。




