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高校入試

1月、年が変わった。私たち中学3年生は目前まで迫った高校入試に向け、残り3ヶ月の中学生活を送っている。




私はいつも通り朝6時に起床すると、朝食の前にストレッチと約5kmの走り込み。これで大体1時間弱。そして朝食を食べてからは、克樹と一緒に学校へ行く。


で、学校を終え帰宅すると、夕方の4時から夜の7時まで塾。その間、河内商業への入学がもう内定している克樹は、ひたすら野球の練習に打ち込む。1月に入ると完全に夏に向けた体力作りの練習ばかりになる。で、私が塾を終え帰宅したら、夕食を食べ、風呂に入って、学校や塾の宿題をやって、夜の11時には寝る。


そして土日は家庭教師がやって来て、朝から夕方までみっちり勉強。そんな生活を私は送っていた。




◇ ◇ ◇




「おはよ、克樹。今日も寒いね・・・」


「ああ、おはよう・・・準備運動したら走るぞ」




12月に入ると、克樹が私の早朝ランニングに付き合ってくれた。この時期になると、まだ夜が明けない。上下のヒートテックにウィンドブレーカー、手袋まで必須の完全防寒対策バッチリ。全速力で走ると、寒風で顔が痛む。時には凍結した地面に足を取られそうになる。どんなにつらくても、雨が降っても、雪が降っても、毎朝走り続けるんだな、これが。もはや日常の一部、生活習慣になってしまった。理由としては、朝起きたらすぐ、体を動かさないと目が覚めない、体が暖まらない、というのもある。




でも最大の理由は・・・克樹と一緒に走れる、ということだった。




前を走る克樹の後ろ姿が、街灯に時折照らされては消える。克樹の息遣いを感じながら、黙ったまま追い駆けていった。




◇ ◇ ◇




5kmのランニングを走り終え、家に帰ると、お母さんが朝食と共に、温かい飲み物を用意して待ってくれていた。冷え切った体に徐々に血が通っていくのが分かる。そして朝食を食べ終えると、授業の準備をし、制服に着替え、そのまま学校へ。登校の時はいつも克樹と一緒だ。




「この制服を着るのも、残りわずかだな・・・」


「本当だね・・・あと2ヶ月しかないよ」




私は克樹にそう言ってやったのだった。




◇ ◇ ◇




年も明けると、受験本番はもうすぐ。


私が受験する河内商業は、甲子園で何度も優勝した野球部を筆頭に、スポーツの名門校ではあるが、お世辞にも偏差値は高くない。私は大阪の人間ではないのでそこまで詳しくはないが、地元で「河内商業に通っている」と言ってしまうと、運動部に入っていなければ鼻で笑われるようなところらしい。


しかし、そんな地元の噂なんて知らない私はひたすら受験勉強に時間を使っていた。平日は塾で3時間、土日は家庭教師を雇って8時間の勉強。克樹から、「そんなに勉強しなければならないのか」と言われたが、みんな遊ばずに頑張っているんだから、私だって人並みに勉強する。しかし、克樹からは、「俺にはそこまで勉強に集中する体力も気力もない・・・」と言われたが。




1月下旬、まず克樹が河内商業の推薦入試を受けた。推薦入試の内容は面接と内申だけだとか。で、克樹は難なく合格。そして2月に入ると、今度は私の一般入試の番だ。




河内商業の一般入試は、国語・数学・英語の入試がそれぞれ50分間と、面接試験が行われる。私は河内商業の過去問をひたすら解いていたため、入試の傾向はある程度分かっていた。


午前8時30分までに指定の教室に集合し、座席に座った後は、一般入試の説明を受け、午前9時に国語の試験が開始。で、休憩を挟んで、数学の入試が、そしてまた休憩を挟んで、英語の入試がそれぞれ50分間行われる。私はしっかりと解答を埋め、一般入試は終了。その後は昼食休憩を挟んで、午後の面接に挑む。


面接は自己紹介と志望理由、入部希望の部活を聞かれた。面接は都合、10分もかからなかった。そして、面接が終わるとそのまま帰宅した。




「松村さん久しぶりだね。ガリバーズカップ以来かな」


「あっ・・・そうだね。西野さんも河商受けたんだ」


「うん。男子の野球部に入ろうと思ってね」


「私も。でも、女子は試合に出られないんだよね・・・」


「だったら、私たちが変えればいいじゃん」


「うん。2人で高野連を変えてみせたるで!」




入試には、楓ちゃんの姿があった。私は昼休憩の時、楓ちゃんに声をかけた。長身で野球やってる時はポニーテール姿の私と、小柄でショートカットの楓ちゃん。身長差は15cmくらいある。そして面接が終了し、それぞれ帰路につく時・・・




「じゃあ河商に受かったら、よろしくね。松村さん」


「いいよ、楓で。こちらこそよろしく、なぎさ」


「うん。一緒に甲子園出ようね」




私は楓と『2人で甲子園に出る』という約束をした。そして入試から数日後、私は無事河内商業に合格し、楓も無事合格したというLINEが私に届いたのは言うまでもない。

松村楓(まつむらかえで)


誕生日・・・6月20日

出身地・・・大阪府

血液型・・・B型

身長・・・153cm

体重・・・48kg

投打・・・右投右打

守備位置・・・二塁手

家族構成・・・父、母、兄

選手紹介・・・大阪東シニア所属。チームでは男子を差し置いて二塁手のレギュラーを務める。2番打者。バットコントロールの上手さと選球眼、バントの技術と守備の上手さは男子に引けを取らない。

備考・・・父は河内商業高校野球部監督。兄も河内商業野球部で甲子園に出場。

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