引退試合①
秋。
日が暮れるのがめっきり早くなり、朝晩は特に涼しくもなった。10月に入ると制服も冬服に変わり、私たち中学3年生は高校受験に向け、残り少ない中学生活を送っている。
私はいつも通り朝6時に起床すると、朝食の前にストレッチと約5kmの走り込み。これで大体1時間弱。そして朝食を食べてからは、克樹と一緒に学校へ行く。
で、学校を終え帰宅すると、夕方の4時から夜の7時まで塾。その間、河内商業への入学がもう内定している克樹は、ひたすら野球の練習に打ち込む。この時期はもうオフシーズンに入るので、体力強化が中心だとか。で、私が塾を終え帰宅したら、夕食を食べ、風呂に入って、学校や塾の宿題をやって、夜の11時には寝る。
そして土日は鳴尾シニアのグラウンドに出向き、3年生同士で朝から夕方までみっちり練習をする。そんな生活を私は送っていた。
そして11月も下旬となり、シーズンオフに突入すると、鳴尾シニア3年生の引退試合が行われた。
◇ ◇ ◇
鳴尾シニアの練習時間は、通常は土日祝日の朝9時から夕方の5時まで。それと平日に自主練習がある。監督もコーチも優しい人ばかりで、暴力や暴言が飛び交うことは、まずない。反面、別の意味で大変厳しく、練習で手を抜くとその時点で退場。その日は参加させてもらえない。遅刻やサボりは当然、厳禁。さらに言葉遣いや練習態度が悪い、そして学校での成績が追試になるほど悪いと、どんなに実力があっても、どんなに大事な試合でも使ってもらえない。
『チームの勝敗よりも、選手が一人前の人間になるべく教育を徹底する。そして、指導者も自らを律する事を要求する』
それが鳴尾シニアの方針だった。
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朝の9時までには、チームの全員が集まっている。遅刻するとレギュラーといえども試合に出られないので、みんな必死だ。そして、監督が全員集まっていることを確認すると、全員で一礼をし、準備運動をみっちり行う。
そして準備運動と、試合前のウォーミングアップが終わると、3年生の引退試合が始まった。日曜日ということもあって、父兄の数が多い。当然私の両親もいる。
ちなみに今年度は、3年生が20人いるので、3年生同士での紅白戦となった。私は白組でベンチスタート。ブルペンで待機し、登板の機会に向けて肩を作る。そして、両チームのスタメン発表が行われる。紅組は大崎コーチが、白組は関口コーチが指揮をとる。
そしてこの試合、球審を務める日高監督の「プレイボール!」という掛け声とともに、3年生の引退試合が始まった。
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STARTING LINEUP
紅組(先攻)
1番 吉田 左/左 ライト
2番 井上 右/右 ショート
3番 新井 右/左 レフト
4番 古賀 右/右 キャッチャー
5番 田中 右/左 ファースト
6番 山本 右/右 サード
7番 三浦 右/左 センター
8番 薮田 右/右 セカンド
9番 飯島 右/右 ピッチャー
白組(後攻)
1番 片岡 右/左 センター
2番 吉村 右/右 セカンド
3番 松井 右/左 ファースト
4番 安達 右/右 サード
5番 中村 右/左 レフト
6番 浅井 右/右 ショート
7番 尾崎 右/左 ライト
8番 西本 右/右 キャッチャー
9番 藤本 右/右 ピッチャー