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反撃の前に


ルハラ:死体置き場


 うげぇ。この部屋はすごく嫌な感じがする。ヴィルソルと連絡を終えた私は、すぐに近くの黒服に死んだコゴローに会いたいと言った。すると、すぐに部屋を教えてくれた。その時、黒服が珍しい奴もいるな。死んだ奴隷が一目見たいだなんてと言っていた。


 部屋に入り、すぐに嫌な感じを察した。黒服はそのまま部屋を出て行った。この部屋の気味悪さに勝てないのか。まぁ奴のことはどうでもいい。私の目的はただ一つ、ケンジと会うだけだ。


「ケンジ? どこー?」


 外に声が漏れないように小声でケンジの名前を呼んだ。その時、すぐ近くから物音が聞こえた。


「ルハラか? 俺はここだ」


 どうやら近くにいたようだ。ラッキー。私はケンジに近付き、ナルセに刺された個所を調べた。


「傷はあるけど……そんな深く刺さってないね」


「手加減してくれたみたいだ。完全に我を失ったってわけじゃなさそうだ」


「うーん……もしかして、ソウルコントロールのスキルを受けたみたいだね」


「何それ?」


「対象を操るスキルだよ。トリガースキルで、使う時に魔力を出せば生き物を操ることができる。虫や動物、魔力があれば人だって操ることができる」


「洗脳みたいなもんか。じゃあ、この中に強い魔力を持っている奴がいるってわけか?」


「そうだね。ナルセを半分操るようだし。いるとしか思えない」


 その後、私は少し間をおいてケンジにヴィルソルたちのことを伝えた。


「ヴィルソルから伝言。準備ができ次第、ここに攻め込みにくる」


「そうか。やっぱりこうなったか」


 ケンジは肩を回しながらこう言った。そして、少し考えながら私にこう聞いた。


「で、どうすればいい?」


「私たちは安全な所で待機……何だけど、ケンジはどうする?」


「成瀬を助けに行く。俺は今死んだってことになっているはずだ。この隙に行動する」


「そっか」


 私は考えた。ケンジは私と一緒に安全な場所で待機をした方がいいと思ったが、これ以上ナルセが操られる姿も見たくはない。うーん……どうするかな。


 そんな中、外から黒服の声が聞こえた。数は二人。ケンジが生きていると言うことがばれたらまずい。


「ルハラ、俺は成瀬を助けに行く。皆には後で合流しようって伝えてくれ」


「分かった。ヴァリエーレに何か言われても大丈夫?」


「多分……な。じゃ、気を付けて」


 その後、ケンジはナチュラルエアを使って外に出た。それと同時に、二人組の黒服が部屋を覗き込んだ。


「何かあったか?」


「いえ別に。今戻ろうとしていたのよ」


「そうか。扉が開いた音が聞こえたのだが」


「気のせいでしょう」


 何とかごまかして、私は観客席に戻った。




ティーア:アラマー研究所


 うーん……体が重い……あれ? 私、いつの間に寝ていたの? 確か変な奴と戦って傷ついて、ナディさんの連れという人のパトカーに乗って……そこから記憶がない。


「ティーア、気が付いたのね」


 ヴァリエーレが扉を開けてやってきた。え? どうしてヴァリエーレがここにいるの? ナルセは?


「ねぇ、何かあったの? 記憶がないからチンプンカンプンだよ」


「実はね……」


 その後、私はヴァリエーレからこれまでの話を聞いた。まさか、私が寝ている間にあんなことが起きていたなんて。


「すぐに会場に行こう! そして、ケンジもナルセも助けよう!」


「待て、勇者」


 私の声を聞いた魔王が、何かを持ってきた。


「目覚めたばかりで体を動かすのはあまりよくない。もう少し休んでから行きなさい」


 魔王の隣にいたアロハを着たおっさんがこう言った。もしかして、この人がアラマー博士なのかな? その後、魔王は持っていた大盛のカツ丼を私に渡した。丁度良かった。腹ペコだったの。


「いただきます」


 私は箸を手にすると、急いでカツ丼を食べ始めた。かなりお腹が空いていたから、本当においしく感じる。数分後、大盛に盛られていたカツ丼はすぐに空になっていた。


「ふぃー、満腹」


 添えられていたお茶を飲みながら、私は満足気にこう言った。


「よーし。それじゃあマスカレードファイト会場へレッツゴーするか?」


 と、アラマー博士が笑いながらこう言った。私たちはすぐにお願いしますと返事をした。


「じゃあ外に出て待っていな。いい物を見せてやろう」


 いい物? 一体何だろう? 私たちは外に出てアラマー博士がくるのを待った。


「一体何があるのかしら?」


「さぁ。あの博士のことだ、とんでもないマシンだろう」


「私……嫌な予感がします」


 ヴァリエーレたちはこんな会話をしていた。ナディさんは何故か体が震えていた。何が怖いのだろう? すると、研究所の車庫が開き、そこから強烈な光が発した。


「お待たせベイベー! これがわし自慢のスーパーマシン、ソニックライジングじゃ!」


 アラマー博士はレーシングマシンを巨大化させたような車を動かし、私たちの元へやってきた。


「さぁ乗りな! これならあの会場へあっという間に行けるぞ!」


「おお! なんだかすごそうだ!」


 ヴィルソルは興奮しながら、後部座席に座った。ヴァリエーレとナディさんは恐る恐る座っていた。


「勇者ちゃんは助手席に座っておくれ!」


「はーい」


 私たちがソニックライジングに乗ったのを確認したアラマー博士は、両肩を回して私たちにこう言った。


「こいつはとんでもないスピードで走る車だから、ちゃんとシートベルトはしてくれよ!」


 その言葉に従い、私たちはシートベルトを装着した。ただ、ナディさんは強くシートベルトを締めており、涙を目に浮かべていた。


「私……なんだか嫌な予感がする」


 恐怖で震えるナディさんを見て、ヴァリエーレがこう言った。


「よーし! レッツラゴォォォォォ!」


 そう言うと、アラマー博士は思いっきり強くアクセルペダルを踏み込んだ。その瞬間、とんでもない重力のような物を感じた。後ろに体が引っ張られるようだ。


「あぎゃァァァァァァァァァァ!」


「いィィィィィィィィィィやァァァァァァァァァァ!」


 後ろからヴィルソルとナディさんの悲鳴が聞こえる。ヴァリエーレは小さく悲鳴を上げている。私は重力に耐え切れず、口を開くなんてことができなかった。


「ヒャッホォォォォォ! 今日もライジングは絶好調のようだのう!」


 アラマー博士は上機嫌だが、乗っているこっちは苦しくて速くおりたいという気持ちで一杯だ。そんな中、目の前に車の列が見えてきた。嘘? こんな時に渋滞だなんて!


「博士、ブレーキペダルを踏んで!」


「そんなもんしたら遅くなるわい! このまま行くぞ!」


 嘘でしょ! 私はブレーキをするように言った。言ったけど、アラマー博士はその言葉を無視した! 何考えているの? バカでしょこの人!


「このまま飛ぶぞ!」


 飛ぶ? 何言っているの、この人? 私がそう思っていると、アラマー博士はハンドルの近くにあるボタンを押した。すると、下から轟音が響いてきた。


「ジャンプ用スーパージェット、発進!」


 何なのこの車? 猛スピードで走るわ、挙句の果てにジャンプ用のジェットもあるわ! 本当にこんな車があっていいの?


「ヒャッホォォォォォ! ナイスジャンプじゃァァァァァァァァァァ!」


 ジャンプしたソニックライジングは、渋滞を飛び越え、前の道路にそのまま着地した。そして、マスカレードファイト会場へ走って行った。後ろを見てみると、三人とも目を回しているようだ。こんな調子でケンジとナルセを助けられるのだろうか……不安になってきた。


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