当たってしまった未来
剣地:VIPファイト控室
さっきの白い仮面の戦いを見て、俺は驚いていた。あいつは手加減をしている。まるで、成瀬のような戦い方をしているなと思った。
「コゴロー、出番だぞ!」
突如、俺の偽名が呼ばれた。もう次の試合かよ。俺は廊下を歩いている中、黒服がこう言った。
「次の相手は白い仮面の奴だ。次こそ死ぬかもしれないな」
そうか……次の相手はあの仮面の奴か。それにしても、あの仮面は以前どこかで見たことがあるような気がする。うーん……思い出せない。
「ほら、闘技場だ」
考えているうちに闘技場に着いたようだ。うーし。次も勝ってくるか。
闘技場の中央には、もうすでに白い仮面が立っていた。動こうとはせず、何を考えているか分からない。
「では次の試合、コゴロー対白い仮面を始めるぜ!」
司会者がこう言うと、観客たちのハイテンションな声がここまで聞こえてきた。
「それではVIPファイト、レディ……ゴォォォォォォォォォォ!」
試合が始まった。俺は最初に渡された剣を構え、相手の様子を見た。だが、白い仮面はその場ですぐに魔力を練り上げ、俺に向けて鋭い氷柱と激しい音が鳴る雷の玉を投げつけた。
「最初から本気出すか?」
俺はこう言いながら、剣に魔力を込めて氷柱を壊し、雷の玉を弾き飛ばした。
「しゃーねー、今度はこっちから行くぞ!」
俺はあいつの方に向かって走り出し、剣を振り上げた。だが、それに対してあいつも魔力の剣を作り出し、俺を攻撃しようとしていた。
「おーっと! どうやらあの白い仮面は魔力だけではなく、剣も使うようです!」
これは予想外だ。あの戦いを見て魔法しか使わなかったから、俺はてっきりただの強い魔力使いしか思ってなかった。
まずいと思い、俺は一旦後ろに下がって相手の攻撃をかわした。その隙を狙い、俺は剣を振ろうとした。しかし、相手も二回目の攻撃に移ろうとしていた。
「こなくそ!」
その後、俺とあいつの剣のぶつかり合いが始まった。観客や司会者は俺たちの動きを見て興奮していたが、俺はそれどころではなかった。あいつの動き、明らかに俺と同じ動きだ! まさか、ソードマスターのスキルを手にしているのか!
しばらくすると、相手は剣を右手に持ち、剣を振り続けた。嫌な予感がする。開いた左手に魔力を溜めて攻撃するつもりか? 俺の予感は見事命中した。あいつの左手には、魔力の塊が生まれていた。
「クッ!」
俺はぶつかり合いの隙を狙い、相手を蹴り飛ばした。
「ああっ!」
初めてあいつの声を聞いた。何か女の子みたいな声だったな。まさか、あいつは女の子なのか?
「初めてあの白い仮面にダメージが通った! あの声、あいつは女の子のようです!」
司会者もあいつの声を聞いていたのか、すぐにこう反応した。まいったな……相手が女の子だとやりにくいな。かといって、手加減していれば確実に俺は死ぬ。
どうやってあいつを無力化しようか……そんなことを考えていると、あいつの方から俺に向かって飛んできた。まずい、本気を出したのか?
「ハァァァァァ!」
あいつの右手から、炎が鞭のように飛んできた。俺は攻撃をかわしたが、上を見ると、針のように細い氷が俺に向かって襲ってきた。剣を回して氷を破壊したが、何本かの氷が俺に刺さった。
「チッ……」
俺が氷を引き抜いていると、あいつは左手に風を発して俺に攻撃した。攻撃を受けた俺は遠くへ吹き飛んでしまった。地面に叩きつけられたせいか、背中がかなり痛い。起き上がろうとしても、強烈な痛みで動けない。
「く……そ……」
何とか立ち上がったが、あいつは俺に近付いていた。周りには、光と闇の渦が発していた。
「何と! あの白い仮面は光と闇の魔力も使えるようだ! この白い仮面は一体何者だ?」
観客も司会者も、光と闇を見て大興奮している。まずい……俺でもあの魔力を受けたら確実にやられるぞ!
「……し……死ね……」
相手が小さくこう言った。これでこの声を聞いたのは二回目だ。その時、俺の脳裏に成瀬の顔が浮かんだ。そして、試合前に忘れていたあの仮面のことを今思い出した。
あの仮面を見たのはハッコネーだ。ハッコネーの占いだ。水晶で浮かんできた光景で見た。そして……あの水晶の映像で流れたのが、俺があの仮面と戦う場面。そして、あいつの正体を暴く所。
「成瀬! お前、成瀬だろ!」
俺は成瀬に向かってこう言った。その時、成瀬は周りの光と闇を解除した。
「おっとー、光と闇が消えてしまった。何かあったのでしょうか?」
俺の声は司会者に届いていないようだ。よし、このまま何とか成瀬を説得させよう!
「成瀬! 俺だ、剣地だ!」
俺は何度もこう言った。だが、成瀬は頭を抱えるばかりで何もしない。すると、懐から何かを持って俺に近付いた。まさかあれは……ナイフ! 成瀬は俺に接近し、ナイフで俺を刺した。
「な……なる……せ……」
ナイフは俺の腹に刺さった。やばい、体の感覚がなくなった。
「剣地……ごめんね……」
成瀬の声が聞こえた。正気なのかあいつは? だけどどうしてこんなことを……。俺は倒れる間際、成瀬に向かって手を伸ばそうとした。だが、俺の伸ばした手はあいつが付けている仮面を取った。そして、俺の意識は途切れた。
ルハラ:観客席
あの白い仮面はナルセだった。そう言えば、ハッコネーで二人がこう言っていた。ナルセがケンジを攻撃する映像が流れたって。こんな大事なこと、何で今まで忘れていたの? 私のバカ!
「コゴロー選手、ダウンです! 白い仮面が隠し持っていたナイフで刺したようです! これが致命傷のようですね。この試合、白い仮面の勝利です! いやー、それにしてもあの仮面の下が美少女だとは思いませんでしたよー」
ナルセは白い仮面を付け、闘技場から出て行った。今すぐにでもナルセの所へ行って話を聞きたい。だが、こんなことをしたら確実に私が怪しまれる。今は行動する前に、このことをヴァリエーレたちに伝えないと!
私は再び連絡ができる場所へ向かい、ヴァリエーレに連絡を取った。
「緊急事態、緊急事態!」
「どうしたルハラ? 何かあったのか?」
連絡の相手はヴィルソルだった。よかった。連絡ができた。
「ナルセを見つけたよ」
「なんと! どこにいたのだ?」
「闘技場。ケンジと戦っていたよ」
「ケンジと戦った? で……どうなった?」
「……ケンジが」
ダメだ。この先のことはうまく言えない。まだ、私も混乱している。ケンジがナルセに刺されたなんてストレートに言っていいのか?
「嫌なことがあったのだな」
「うん」
最悪なことが起きたことを察したのだろう、ヴィルソルが優しくこう言った。
「ルハラ。もしできるのなら、ケンジの所へ行ってくれ」
「それで?」
「ケンジを回収して安全な場所で待機。そして、我らがくるのを待っていてくれ。ナルセのことだ、たとえ操られていてもケンジを殺したりはせんだろう」
「分かった。ねぇ、これから皆はどうするの?」
私がこう聞くと、ヴィルソルは少し間をおいて返事をした。
「勇者が復活し次第、マスカレードファイトへ殴り込みに行く!」
「状況は察したよ。私も皆と合流したら暴れるから」
「うむ!」
ヴィルソルの返事を聞き、私は連絡を切った。さーて……これまで溜まったうっぷんを晴らす時がきたようだね! あー、早く暴れたい。
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