VIPファイトへのご案内
ルハラ:観客席
はぁ、いつになったらこんなクソみたいなイベントは終わるのだろう。ケンジが事故らせた木馬の片付けが終わった瞬間、次の試合が始まった。私の耳に聞こえるのは、奴隷たちの悲鳴と観客の狂乱した雄叫び。もうこんなの聞きたくない。
「すみません。少し下がります」
私は後ろのバーへ行き、時間を潰すことにした。はー、今頃ヴァリエーレたちは集めた証拠を手にしてセブンワーオンに行っているのだろうなー。そんなことを思っていると、白い服を着たキザな野郎が隣に座った。
「お隣、よろしいですか?」
「私は今一人でゆっくりとしたいですの」
「そんなことをおっしゃらずに。是非、一緒に飲みましょう」
うわ、なんだかんだ言って無理矢理座ったよ。どーせ、私とエッチなことをしたいがために近寄ったのだろうなー。
「私の名前はエンディークと言います。あなたのお名前は? 美しいお嬢さん?」
「ステラ。いいですか? 私はそんなに尻軽な女ではありません。他の人に相手をしてもらっては?」
「そんな冷たいことを言わなくてもいいではありませんか。二人の出会いに乾杯をしませんか?」
このナンパキザ野郎は、自分がカッコイイとでも思っているのか? 苛立ったその時、私のイヤホンに着信音が鳴った。
「失礼」
「おっと、せめて一緒にカクテルを……」
私はエンディークの股間を蹴り潰し、奴を悶絶させてから奥へ向かった。
「はいはい。どうかしたー?」
「ルハラ。ヴァリエーレよ」
通信の相手はヴァリエーレだった。よかったー。無事みたい。
「今どこにいるの?」
「ナディさんの知り合いの所よ。いろいろと伝えたいことがあるから、よく聞いて」
その後、私はヴァリエーレからとんでもないことを聞かされた。セブンワーオンが警察組織を掌握していること、ティーアが敵との戦いで負傷したこと、ナルセが行方不明であること。
「作戦は変更するわ。私たちはティーアが復活したらそっちへ行って暴れるわ」
「オッケー。そろそろ私もこのイベントにはかなり腹が立っていたよ」
「暴れるのは私たちと合流してからね。それまで抑えていて。それで、ケンジには話はできる?」
「ちょっと聞いてみるよ。後で連絡するねー」
「よろしく。じゃあ、気を付けて」
連絡を終え、私は入り口付近にいる黒服の男性にこう聞いた。
「私はステラと申します。私が連れてきた奴隷と面会をしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「面会か……少し待て」
それから数分後、連絡を終えた黒服が私にこう言った。
「十分間だけ面会が許された。いいか、十分だ。それ以上経過したら出て行ってもらう」
「分かりました」
その後、私は黒服と共に廊下を歩き始めた。
剣地:面会室
何故か知らないが、俺は面会室と呼ばれる場所へ案内された。そこで待っていると、扉からルハラが現れた。
「プライベートなことを含むの。ここに監視カメラとか隠しマイクとか設置してないでしょうね?」
「大丈夫です。どうせろくでもない会話だと皆思っていますので、設置していません」
「本当に?」
「本当です。この施設、ちょっと防犯意識に欠けているところがあるのです。では、十分後に迎えにきます」
そう言って、黒服の男性は去って行った。ルハラはため息を吐き、俺にこう言った。
「いろいろと事情が変わったよ」
「何かあったのか?」
「うん。落ち着いて聞いてね」
俺はルハラから今現在の状況を知らされた。成瀬が行方不明だと! 俺はかなり動揺したが、ルハラが俺の手を握ってこう言った。
「ナルセは私たちで見つける。だから、ケンジは自分がやるべきことに集中して」
「だけど……」
「心配する気持ちは分かる。その気持ちは私も同じだし、ヴァリエーレも、ティーアも、ヴィルソルも一緒。皆、ナルセを見つけ出したい」
「そうだな。俺はここで暴れて、そして奴隷の皆を開放する」
「奴隷解放は聞いてなかったけど……まぁいいや。捕まっている人も皆開放しちゃって。ケンジならできる」
「ああ。ルハラ、気を付けろよ」
「うん」
会話後、ルハラは黒服を呼んだ。黒服はまだ時間が経ってないから動揺していたが、ルハラはもう大丈夫と黒服に伝えた。そして、ルハラは去って行った。
「話は終わったか?」
後ろにいた黒服が、俺にこう聞いた。
「ああ」
「丁度良かった。貴様にもう一つ話がある」
「何だよ? 話って」
「貴様は次の試合、VIPファイトに出場する」
「何それ?」
俺がこう聞くと、黒服は俺にVIPファイトのことを説明した。簡単に言えば、強者だけによる一対一の戦い。木馬や溶解液の沼のような仕掛けは一切なし。正真正銘の真剣勝負らしい。
「貴様の出番は今から一時間後だ。それまでに英気を養っておけ」
それから、俺は奴隷たちが収容されている牢屋ではなく、かなりキレイな部屋に案内された。
「ここはVIPファイトに参加する戦士専用の部屋だ。戦いの時まで、自由に使うがいい。しかし、敷地内を勝手にうろつくな」
そう言って、黒服は去って行った。うわー、牢屋とは違ってまるで高級ホテルの部屋のようだ。ハッコネーの方がランクは上だけど。机の上にはそれなりの果物があったし、ソファーもふかふかだ。それに、エッチな女性を呼べるサービスもある。何でもありだな。
しかし、成瀬が行方不明であることを思うと、体が休まる気がしない。俺も成瀬を探しに行きたいけど、今の状況じゃあ何にもできない。クソ! どうしたらいい?
などと考えているうちに、時間は容赦なく進んでいった。しばらくし、部屋にあったチャイムが鳴り響いた。俺の出番ってわけか?
「コゴロー。お前の出番だ」
「はいはい」
俺はそう言って、ソファーから立ち上がった。廊下を歩いていき、俺は控室で待機するように言われた。しばらく待っていると、ファンファーレのような音楽が聞こえた。
「皆様お待たせしました! ただいまより、VIPファイトを始めたいと思います!」
司会の言葉が聞こえた。そして、その直後に観客たちの歓声の声が轟いた。
「次の試合は、本日素晴らしい活躍を我々に見せてくれた、コゴロー選手!」
この言葉の直後、俺の目の前にある柵が大きな音を立てて開いた。
「行け」
近くにいた黒服は、俺にこう言った。俺はその言葉に従い、ゆっくりと歩いて闘技場へ向かった。俺を見た観客の連中が、さらに大きな声で騒ぎ始めた。
「対しましては、VIPファイト三連勝中の男! デュロス選手です!」
司会の言葉の後、相手がいるはずの柵が開いたのだが、デュロスという男は姿を見せなかった。
「あれ? おっかしーな……おーい黒服。どうかした?」
「失礼。彼は私のおもちゃになっていて、返事ができなかったのだ」
相手の柵の方から、人影が高く飛び上がった。その人影は黒服の死体を持って俺の目の前に着地した。
「ま、もう返事はできないと思うがね」
「あらら、デュロス選手はもうやる気満々だー!」
デュロスは俺の顔を見て、にやりと笑ってこう言った。
「君が今話題のルーキーか。あんまり調子に乗らない方がいいよ。出る杭は打たれるっていうだろ?」
こいつの目を見て、俺は冷や汗をかいていた。こいつ、かなり強い!
「では、VIPファイト……レディ、ゴォォォォォォォォォォッ!」
試合を始める声が聞こえた。あの野郎はむかつくな、少し懲らしめてやる!
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