作戦の練り直し
ヴァリエーレ:ナディが運転するパトカーの中
ティーアとヴィルソルを助けた後、私は急いでナディさんを呼んだ。数分後、パトカーに乗ったナディさんが慌てて駆け付けた。
今、私たちはそのパトカーに乗り、警察署へ向かっている。
「はっくしょん! なぁ……冷房が強すぎではないか?」
半裸で外にいたヴィルソルはちょっとした風邪をひいたのだろうか、くしゃみをしてこう言った。
「あ、はい。すみません」
ナディさんは車の冷房を操作し、風を弱くした。だが、そんな中でもティーアはまだ目を覚まさなかった。
「ティーア……傷が結構大きいのね」
「あばら骨が数本折れたと言っていたが……ちょっと失礼」
ヴィルソルはティーアに近付き、傷の様子を見た。そして、不安そうな顔で私にこう言った。
「あばら骨だけではない。他の骨も数本折れている。そのせいで、折れた骨が一部臓器に刺さっている。重傷だ」
「そんな……」
「魔力で治療はしたが……病院へ行った方がいいな」
「では、私の知り合いの所へ行きましょう。病院ではないですけど、機械のおかげで病院よりも早く治療ができます」
と、ナディさんはこう言うと、パトカーの向きを変えて走り出した。
しばらくし、私たちはアラマー研究所と書かれた建物の前に着いた。
「アラマー博士。夜分遅くにすみません。ナディです」
ナディさんがチャイムを押してインターホンにこう言うと、そこから老人の笑い声が聞こえた。
「フェッフェッフェ! 関係ないさ! お前とわしの仲じゃ、さあ入れ!」
その後、目の前の門がゆっくりと開いた。
「ここは……」
「アラマー博士の研究所兼自宅です。昔、警察の偉い人だったのですよ。今は引退して趣味だった研究や武器開発を商売にして暮らしています」
「そ……そう」
家の中に入ると、目の前に老人が現れた。しかも、服装はアロハシャツで、パーマをかけた髪型で金髪に染めている。
「ウィー! お疲れナディちゃん!」
「お……お疲れ様です、アラマー博士」
「で、そこにいるのがセブンワーオンをぶっ潰す協力者かい?」
なっ? この人、何で私たちの仕事のことを知っているの?
「そんな怖い顔をしないでヴァリエーレちゃん! 君たちの活躍は知っているよ」
アラマー博士は後ろにいるヴィルソルとティーアに目を付け、神妙な顔つきで近付いた。
「おやまー、魔王が深く傷付いた勇者をお姫様抱っこか。珍しい光景を見られるなんてな」
「うっさい!」
「はいはい。そんなに興奮しないで。うちには超高性能な治療マシーンがあるから、そこで勇者ティーアを治療できるぞ」
「あ……ああ」
会話後、ヴィルソルは超高性能治療マシーンの上にティーアを寝かした後、私たちがいるリビングに向かった。
「あれ? 確か君たちハーレムパーティーは男も入れて六人だよね。他の三人は?」
「ケンジとルハラはマスカレードファイト会場に侵入中。ナルセは行方不明じゃ」
「ほうほう。そうか……ナディちゃんがここへきたのは、わしの力を借りたいのじゃろ。どうせあの会社のことだ、裏で警察に賄賂を送って味方につけたんじゃろ」
「その通りです。この事件を私たちだけで解決するのは難しい状況です。どうか……お力をお貸しください」
「いいよー」
なんだか軽いノリで決まったな……。博士は返事をした後、後ろにある椅子に座り、近くにあったパソコンを操作し始めた。
「で、今後君たちはどうしたい?」
「今後……ですか」
「証拠は手に入っている」
私とヴィルソルは、セブンワーオンとマスカレードファイト会場で手に入れた証拠を机の前に出した。それを見た博士は、うーんとうなりながらこう言った。
「正直言って、これだけそろえれば奴らを追い詰めることができる。だが、裁判にもつれ込んでも奴らの方が力は上だ。きっと金や権力の力でうやむやにされるのが目に見えている」
「では一体どうすれば」
ナディさんがこう聞くと、博士は笑いながらこう言った。
「ブレアはどこだ?」
「多分、マスカレードファイト会場へ向かいました」
「よし! 今から攻めに行ってこい! そんで、奴を現行犯で捕まえろ!」
この言葉を聞き、私たちはずっこけてしまった。
「結局こうなるのですか」
「当たり前じゃ。警察はナディちゃん以外役立たず。どうせ捕まえても保釈されるだろう」
「た……確かに」
「奴らは金や権力は持っているが、大した武力は持っていないだろう。君たちの力なら、攻め込んでも大丈夫じゃ! 何かあれば、力任せでゴリ押しでぶっ潰せばいい! それに、わしがサポートするから大丈夫じゃ」
そう言うと、博士は引き出しから通信機を取り出し、私たちに渡した。
「これは今君たちが使っている通信機よりも、高性能な物じゃ。電波妨害があっても通信はできるし、小声で話しても聞き取りやすい。それに、今使っているのと同じような小型だから使いやすい」
「あ……ありがとうございます」
「なーに。困ったレディーを助けるのがジェントルマンの役目じゃ。だが、少し休んでいくがいい。勇者の治療も終わっていない」
博士はそう言うと、台所へ向かって行った。
「お客用のお菓子がある。それを食って魔力と英気を取るがいい。それと、ナルセと言ったな。あの子の通信はわしが見つける。見つかり次第君たちに連絡しよう」
「ありがとうございます。パーティー代表として、お礼します」
私は博士の後姿に向け、頭を下げた。だが、博士は冷蔵庫を調べながらこう言っていた。
「あれ? どこかな? うーん……これじゃあない。あれ……食べちゃったのかな?」
剣地が起こした木馬同士の激突事故は、今ようやく片が付いた。
「お待たせしました! 予定を変更して、ただいまよりモンスターファイトを行います! ルールは簡単! 凶暴なモンスターがいる闘技場の中に、奴隷たちをぶち込む! そして、生き残った奴が勝利です!」
司会者の声が聞こえ、観客の歓声も聞こえた。ブレアはこの光景を見て、満悦の笑顔をしながら葉巻を吸った。その時、扉の開く音が聞こえた。
「失礼します」
「何だ、ゴベか」
部屋に入ってきたのは、部下のゴベだった。
「何のようだ? お前は確か、本社で仕事をしていたはずだが?」
「いくつか会長に聞いてもらいたいお話がありまして」
「何だ? 手短に話せ」
「一つ。会長の部屋にネズミが入りました。二つ。そのネズミを捕らえ、洗脳しました」
ゴベの話を聞き、ブレアは体内の煙を吐いてこう言った。
「どうしてそんなことをした?」
「活きのいいネズミだったので。凄腕の魔力使いかもしれないので、VIPファイトに入れてみてはと」
ゴベの話を聞き、ブレアは部屋の外にいる白い仮面の奴隷を見つめた。
「本当に凄腕なのか?」
「はい。人は見かけで判断するものではないです。是非、戦わせてみてください」
「お前がそう言うなら……仕方ない。あの仮面の奴隷をVIPファイトに参加させるよう手続きしろ」
ブレアは別の部下にこう言うと、再びソファーに座った。
「では、失礼します」
ゴベは白い仮面の奴隷をブレアに引き渡し、自分は部屋から出て行った。その後、帰り際の廊下でゴベは、不気味な笑顔で小さく笑っていた。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




