再び幕を開く狂気のゲーム
剣地:奴隷控室
俺は周りを見て、何度も心の中でため息を吐いていた。周りに大勢いた奴隷は、もう半分以下になっている。皆、死んでしまった。
この狂ったイベントを考えたブレアとセブンワーオンの連中をぶっ倒さないと! そうでないと、この狂ったイベントを壊して皆を救うことなんてできない。証拠を暴いて奴らを捕まえることも大事だけど、俺は奴らを痛めつけないと気が済まない!
「次のゲームが始まるぞ! この場にいる奴は全員ついてこい!」
いきなり黒服の男が部屋に現れ、俺たちにこう言った。奴隷の中にはさっき試合が終わって帰ってきた奴もいるのに……もう戦わせる気かよ。
「私は今終わって帰ってきたばかりです! 少しぐらい休ましてください!」
「奴隷の分際で俺に命令するな! 貴様らクズは俺の言うことを聞けばいい!」
黒服の男は奴隷に怒鳴り、鞭で地面を叩いて叫んだ。俺は舌打ちをし、奴の言うことに従った。その時、黒服の男が俺に近付いてこう言った。
「貴様が希望になれとか言われた坊主だな」
「何だ?」
どうやら、あの時の会話は奴らに聞かれていたようだ。まぁ、あんな大声じゃあ黒服の連中どころか観客たちも聞いているだろうな。
「貴様に伝えておく。奴隷が希望など持つな」
「人の勝手だろうが。おっさん」
俺は黒服の男にこう言い返した。男はしばらく黙っていたが、少しして笑いながらこう言った。
「そうだな。貴様が死ぬのを楽しみにしているぞ」
「人の死を楽しみに待つんじゃねーよ、クソ野郎」
俺はそう言って、部屋から出て行った。
しばらく歩いていると、先ほどの闘技場の入口が見えてきた。ただ、さっきと違うのは目の前に赤と青の大きな木馬二つがあったことだ。木馬の大きさは大体五メートルぐらい。どうやってこんなのを地下に運んだのやら。足場は整備されているが、道は一本道。俺たちの目の前にある別の扉からは、俺たちと同じ数の奴隷が出てきた。
「今から行うのはチーム戦です! バトルの内容はホースアタック! ルールは簡単! 木馬を操作して、相手の方へ突っ込むだけです! もちろん、両側にある溶液沼を使っても構いません! 木馬に頼らず、自分の武器や魔力で戦っても構いません! 勝敗は簡単、相手を先に全滅させた方が勝ちです!」
話を聞いた限り、今から行うのはチーム戦のようだ。ただ、こっちの仲間は皆死に怯えている。
「もう……嫌だ……」
「死にたくない……」
「あの時の生活の方がまだましだ……」
まずいと思いながら俺は敵の方を見たが、どうやら敵の方も死に怯えて戦う気はないようだ。
「うーん……どうやら、お互いに戦う気はなさそうですね……」
当たり前だろ。と、俺は心の中でこう言ったのだが、司会者はにやりと笑ってこう叫んだ。
「仕方ありません! 強制的にバトルスタート!」
叫びの後、俺たちは無理矢理闘技場の中へ押し出された。そして、入口の門が閉じられた。
「チッ、無理矢理こんなことしやがって!」
俺は後ろを見て舌打ちをした。すると、目の前から敵の奴隷が三人ほど突っ込んで来た。
「うわァァァァァ!」
「やるしかねェ!」
やけになって突っ込んできたか。仕方ない、戦うしかない!
俺は電撃を発し、地面に向けて放った。俺が放った電撃は蛇のような動きで敵に近付き、接触した。
「ぎょァァァァァ!」
「びェェェェェ!」
俺の電撃に当たって感電しているようだ。さて、その隙に木馬とやらを調べてみよう。
最初に見た時はただの木でできた木馬かと思った。だが、その考えは外れていた。木馬は鉄製で、ちゃんと上り下りができるように階段が付いている。さらに、足部分にはしっかりとしたタイヤがあった。そして、木馬の頭部分にはコクピットがあった。こいつを動かすには、あそこへ行けってことか。
「皆! 俺がこいつを動かす。コクピットへ向かう時に援護をしてくれ!」
「嫌だよ!」
「お前が戦えよ! こっちは戦いたくない!」
やばい。こんな状況でも戦いを拒否している。俺は溜息を吐いた後、皆にこう言った。
「生きたければ俺の言うことを聞け! 俺がこのくだらないゲームを終わらす!」
「だけど、どうすればいいんだよ!」
「今考え中だ」
俺は移動している中、壁に掛けてある弓矢を発見した。数は三つ。矢は百五十ぐらいかな。俺はそれを手に取ってこう聞いた。
「この中で弓矢を使える奴はいるか?」
「昔、狩りをしていました」
「いたずらでやったことがあります」
「戦争で使っていました」
「使えるなら、これを使って援護をしてくれ。敵を狙え。急所は打つなよ」
俺はそう言うと、残りの奴隷にこう言った。
「他の皆は俺に付いてきてくれ!」
その後、奴隷の皆は俺の言うことを聞き、素直に俺の後ろについて行った。移動中の中、俺に向かって矢が飛んできた。どうやら、向こうの木馬にも同じような装備があるらしい。
「皆、窓から見えないようにしゃがんで移動してくれ」
「これで死なないですかね……」
「それは分からないけど、これなら死ぬ確率は下がるさ」
会話後、俺たちは再びコクピットへ向けて移動していった。敵の矢の雨を潜り抜け、何とかコクピットの前へ到着した。だが、ここで予想外のことが起きた。
「何だよ……これ、鍵が付いているのかよ!」
コクピットの扉には、鍵が付いていたのだ。開いているかと思い、俺はドアノブを回そうとしたのだが、ピクリともしなかった。おいおい……こんな広い木馬から鍵を探せっていうのかよ!
ルハラ:観客席
次のゲームが始まって数分後。私のイヤホンに着信音が鳴り響いた。私はトイレへ行くのでどいてくださいと言いながら、トイレへ向かった。
「はいもしもし。こちら、ルハラです」
私がこう言うと、すぐに返事が返ってきた。
「こちらヴァリエーレ。定時連絡の時間よ。ルハラ、そっちはどう?」
「んー、ぼちぼちね。ケンジは無事だよ」
「よかった……」
「ティーアとヴィルソルは脱出したみたいだけど……上で大きな音がしたから、何かあったかもね」
「うん……分かった。こっちはまだセブンワーオンの本社よ。ナルセはまだ侵入中」
「了解。ヴァリエーレ、ティーアとヴィルソルにも連絡を取ってね。私も周りに人がいるから、あまり連絡はできないかもしれないから」
「分かったわ。今度連絡をするときは、緊急の時だけにするわね。じゃ、気を付けて」
「そっちもね」
私はヴァリエーレとの会話を終えると、スイッチを切ってトイレを流した。小声だから周りに気付かれる心配はない。それに、今は人の気配はない。
「さて、戻りますか」
私はこう言うと、トイレから出て行った。
元居た場所へ戻り、再びゲームを見始めた。戦いはまだ動いてないようだ。ケンジは無事らしいが、木馬の所で戸惑っているようだ。何かあった? そう思ったその時だった。
「おーっと! メスギャキが連れてきた奴隷が放った弓矢が、コゴローに向かって飛んできたー!」
まずい! 相手の放った矢がケンジに向かって飛んできた! それに対し……ケンジは気付いていない! お願い、気付いてケンジ!
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