魔王VS腹話術師
ヴィルソル:マスカレードファイト会場の離れ
予想外だ。敵の武器は腹話術の人形、通称マー君人形。こいつはただの人形かと思っていが、人形の中に銃が仕込まれている。
「ほらほら! 早く逃げないとハチの巣になっちゃうよ?」
「はっはっは、マー君は銃の名手だから、きっとすぐにハチの巣になっちゃうね!」
我はマシンガンのように飛んでくる銃弾をかわしながら、近くの木の裏に隠れた。
「あらら、木の裏に隠れちゃったね」
「じゃあ、あれをしようよ」
「そうだね。あれならあのお嬢さんが出てくるかもね」
あれって何だ? まだ武器があるのか? 我はそう思い、奴らの方を見ようとした直後、チェーンソーのような音が響き、我が隠れている木がメキメキと音を立てながら倒れた。
「そーら、隠れたお嬢さんが見つかったよー」
「わーい! また遊べるね!」
おいおい。銃以外にもチェーンソーを仕込まれているのかあの人形には? 胴体の半分が外れ、そこからチェーンソーの刃が見えていた。一体どれだけの武器があの武器に詰め込まれている?
「ねぇねぇ! 僕、もっとあのお嬢さんと遊びたい!」
「そうかいそうかい。じゃあ、僕がアシストしてあげるから行ってきな!」
「わーい!」
幼稚な腹話術の後、マー君人形は我に向かって飛んできた。魔力の糸であの人形を操っているのか。仕組みは分かったのだが、あの人形の中に仕込まれている武器が、我を襲った。
「ビリビリアターック!」
奴の右手が外れ、そこから電流が流れてきた。
「くっ、電気もあるのか!」
我は人形の電流を浴び、体が痺れてしまった。だが、こんなの屁でもない。我は後ろに下がり、槍を装備した。
「あのお嬢さん、やる気みたいだよ。気を付けて、マー君」
「大丈夫、メニールお兄さん。あんなの、僕の敵じゃないやい!」
「分かった。じゃあ、行っておいで!」
再びあの人形が我に向かって襲ってきた。何とかあの人形を操る魔力の糸を絶たねば! 攻撃の手を防がないと!
「これでも喰らえー!」
人形の左手が外れた。そこには、紫色の針が仕込まれていた。
「スズメバチ一万匹分の毒が入った毒針だー! 刺されば確実にお陀仏だー!」
「クソッ、そんな物騒な装備もあるのか!」
我は槍を構え、左手の毒針を破壊しようとした。だが、人形は槍の矛先をかわし、我に接近した。まずい! あの毒針に刺さったら、魔王である我でも確実に死ぬ!
「死ねェ!」
人形は左手の針を前に突き刺し、我に向かって飛んできた。まずい……このままじゃあ……。死ぬと思ったその時、我はあることに気付いた。相手はあの人形を前に出し、操っている本人は後ろに下がっている。その分魔力の糸は伸びているはずだ。それに、相手は自分が有利だと思って油断している。反撃するなら今しかないな。
我は小さな闇の塊を発し、人形の背後に投げた。その時、人形を操っていた魔力の糸は絶たれた。その結果、人形は飛んでくる勢いを落とし、地面に落ちてしまった。
「ああっ! マー君!」
「無様だな。武器がないと戦えないのか、お前は?」
我は魔力を使い、人形を破壊した。だが、我の行動を見て奴は笑い声をあげていた。
「それでマー君を壊したつもりかい? こんなことがあろうかと、マー君人形には特別な素材で作られている!」
爆風が消え、地面には少し焦げたマー君人形が落ちていた。なるほど、奴の言う通りにこの人形は特別な素材で作られたようだ。だが、さっきの爆発で左手の毒針は外れたようだ。
「我からしてみれば、このおっかない毒針が消えただけでよい」
我は闇を使い、毒針を粉々に破壊した。その隙に、奴は再び魔力の糸を発し、人形にくっつけた。
「いたたたた……痛いよ、お兄さーん」
「酷いことをするお嬢さんだねぇ。でも大丈夫、今度は僕も一緒に戦うから」
そう言うと、奴は人形を手元に近付け、逆さに持った。
「さぁ、行くよ! マー君!」
「任せたよ、お兄さん!」
奴は人形の両足をくっつけると、靴の裏を外した。そこには鋭利な刃が付けられていた。何らかのスイッチを押したのだろう、その刃は一気に長くなった。長さとして市販で売られている剣の刃と同じ長さだ
「さぁ、勝負!」
奴はそう言うと、我に向かって走ってきた。人形を剣のように扱うが、そんな動きをするのは察していた。我は槍で人形を弾き、槍を横に振って攻撃を仕掛けた。だが、奴は人形に仕込まれた銃で我に発砲した。
「グウッ!」
何たることか! 我は左足に銃弾を喰らってしまった! そのことを知った奴は、笑いながら我に接近した。
「痛そうだね。でも、さっきの攻撃を受けたマー君はもっと痛かったって言っていたよ」
奴は狂った笑顔で我を見て、笑い声をあげた。
「なら、お前にも似たようなことをしてやる!」
我は槍を構えなおし、奴の腹にめがけて突き刺そうとした。奴は攻撃を察してかわしたのだが、うまくかわし切れず横腹に攻撃は命中した。
「グッ!」
「だ……大丈夫、お……兄さ……ん……」
不覚にも命中したこの攻撃だが、意外と傷は大きいようだ。奴がお得意とするだろう腹話術も、途切れ途切れになっておる。
「酷いなぁ……お兄さんは……あんまり体が……強くないのに……」
「ほう。人形を操る本体はやわではないのか。それはいいことを聞いた」
この戦い、長引くといろいろと厄介なことになる。騒動を聞いて警備の連中が再びくるだろう。その前に奴を倒し、ナディに証拠を渡さないと。
「本気を出そう。なに、死にはせんから安心しろ」
我は巨大な闇の波動を宙に浮かした。
「な……まだこんな力が残っていたのか!」
「少し手を抜いて戦っていたからな。お望みであればこの倍以上威力がある魔力をぶつけてやるぞ。命の保証はしないが」
我は闇の波動を操り、大きな渦の形を作った。だが、奴は何かを見つけたのか、人形を使ってそれを拾っていた。
「バカめ! お前が粉砕した毒針のことを忘れたのか?」
おっと。どうやらあの毒針の破片が近くに落ちていたようだな。だが、そんなものが我の魔力に敵うと思うか。毒針の破片は闇の中に入り、我に向かって飛んでくることなく消滅した。
「そんな……」
「テヤァァァァァ!」
我は茫然と立っている奴にめがけ、闇を放った。闇が周囲を包み、飲まれた奴は悲鳴を上げながら闇の中を飛んでいた。その間、ダメージを受けているだろう。これくらいでいいと思い、我は魔法を消した。すると、気を失ったあいつと粉々になった人形が地面に落ちてきた。
「終わったか……」
戦いは終わった。我は気を失ったあいつを拾い上げ、勇者に連絡を入れた。
「勇者か? 我の方は終わった。今向かう」
「うん。分かった。無事のようだね」
「当たり前だ。魔王の我が変な奴に負けるか。とにかく、今から向かうから待っておれ」
その後、我は急いで勇者の元へ向かって行った。
ルハラ:マスカレードファイト会場
上で何かあったのかなー。もしかして、追手が二人を待ち構えていたのかな。だとしたら、騒ぎが大きくなるかもね。
「では、次の試合に向けての準備を始めます! 皆様、もうしばらくお待ちください!」
ケンジの試合の後、五回ほど戦いがあった。どれもこれも残極だった。見ていて気持ち悪くなってきた。周りの連中は、こんなのを見てよく歓声を上げられるね。気が狂いそうだよ、こっちは。
さて、休憩中にティーアとヴィルソルに連絡をしないと。私は人目が付かない場所へ移動し、小声で連絡を始めた。
「ティーア、ヴィルソル、そっちはどう?」
「ルハラか。こっちは問題があったか、無事対処した……」
ヴィルソルからの返事があった。少し声に元気がない。問題の処理で忙しかったのだろう。
「今どこ?」
「入口から離れた場所だ。我は無事だが、勇者が怪我をした」
「嘘でしょ……」
「あばら骨が数本折れただけらしい。これから我たちはナディと合流する」
「分かった。じゃあこっちはもうしばらく様子を見るよ。後、ナルセたちの連絡を待っていて」
「了解。ケンジとお前が無事であることを祈る」
その後、会話を終えた私は水でも飲もうと思い、バーに向かった。その際、数人の男が私に近付いてきた。
「お嬢さん、私とワインを飲みませんか?」
「ワインよりもっといい物があります」
「メアド交換しませんか?」
何だ、ただのナンパか。見たところ、全員ケンジよりもカッコよくない。女の子を性的な目で見ている。
「私には旦那がいますので」
「じゃあ不倫の関係ということで」
「あなたたちには興味ありませんの。ごきげんよう」
私がこう言うと、男たちは項垂れて去って行った。この時、司会者の声が鳴り響いた。
「次のゲームには、あのコゴローが出場します! 皆様、期待してください!」
どうやら、次の試合にはケンジが出るようだ。ケンジ……死なないでね。
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