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最悪の未来


剣地:部屋の中


 んん……もう朝か。朝日が俺の顔を照らしていた。動こうとすると、重さで体が動かなかった。そりゃそうだ。皆が俺に抱き着いて爆睡中だ。皆気持ちよさそうに寝ているから、起こすのがかわいそうになった。皆が起きるまで、俺も横になっていよう。そう思っていると、横で寝ているルハラが目を覚ましていた。


「おはよー」


「おはよう。もう起きたのか」


「うん」


「俺が動いたから目が覚めたのか?」


「ケンジと同じタイミングで目が覚めた」


 ルハラは大きなあくびをし、横になっている俺に抱き着いた。


「じゃあもう一回寝よーっと」


 その時、ルハラが俺に抱き着いた衝撃で皆の体が揺れた。それで皆目が覚めた。


「何かあったの?」


「大きい揺れがあったみたいだけど……」


「ふぁあ……」


「ルハラの奴、まだアホなことをしとるのか?」


「ごめん、起こしちゃったみたいだね」


 ルハラはテヘペロをしながらみんなに謝った。それから俺たちは食事をし、机の上にあった地図でハッコネーの全体図を見ながら話し合いをしていた。


「ここはデパートよ。スーパーで売っているような品物もあるけど、ここでしか買えない食品や雑貨が売られているわ」


 と、ヴァリエーレさんが説明をしてくれた。この話を聞いた成瀬の目が輝いている。どうやら、今日はここで買い物のようだな。


「今日はここに行きましょう!」


「いいねー。エッチなアイテムもいっぱいありそう」


「そんなのは売ってないわよ」


 ヴァリエーレさんの返事を聞き、ルハラは少し残念そうな顔をした。


 数時間後、俺たちはハッコネーのデパートの入口に立っていた。向かう途中でヴァリエーレさんの話を聞いていたけど、このデパートはホテル利用者以外も使用することができる。そのせいか、デパートの中はかなり混んでいた。


「うわー、混んでいるな」


「好きそうな服、あればいいんだけど」


 俺の横にいる成瀬がこう言った。どうやら、こいつはおしゃれな服を買いにきたようだ。可愛い服の成瀬か……たまにはいいな。


「ここにくるのは初めてだな。少し見て回ってきていいか?」


 ヴィルソルが目を輝かせながら俺に聞いてきた。そうか。マージドイナカ山で生まれて過ごしてきたヴィルソルは、デパートへ行き、見る機会がなかったな。


「ああ。常に俺たちに連絡できるように準備はしておけよ」


「うむ! では行ってくる!」


 テンションが上がったヴィルソルは、ダッシュでデパート内に入って行った。


「じゃあ私も行ってくる。ここって確か武器も売っていたはずだから。ちょっと見てくる」


「あ……ああ。いいぜ」


 異世界のデパートは武器も売っているのか。少し驚いた。その後、ティーアは武器を見に、ルハラはもしかしたら目当てのアイテムが売っているかもしれないと言ってどこかへ行ってしまった。


「さて、俺も行ってくるわ」


 俺は成瀬とヴァリエーレさんにこう言ったけど、二人はひそひそと何かを話している。


「どうした?」


「ごめん。ケンジは……」


「私たちの買い物のお手伝いよ」


 おいおい……そんなのってありか? お……俺の自由が……自由がァァァァァァァァァァ!




成瀬:デパート内


「おーい、ちょっと待ってくれー!」


 私やヴァリエーレさんが買った品物を運んでいる剣地が、慌てながらこう言った。


「買いすぎだろ、これ」


「女の子にとって、全部必須品なのよー」


「ごめんね、ケンジ。魔力で運びたいけど、繊細な操作が必要で難しいの」


「そうですか……これちょっとどこか置けないかな……」


 流石に剣地も苦しそうだ。仕方ない、どこかで休むとしますか。私は休憩できる場所を見つけ、剣地とヴァリエーレさんに声をかけた。その後、私たちはそこで休むことにした。


「あー……腕がパンパンだ」


 剣地は腕を揉みながらこう言った。すると、剣地は何かを見つけたようだ。


「未来がちょっとだけ見られる占いか」


「剣地、あんた占いなんて興味ないでしょ?」


「興味ないけど、未来が見えるってほんとかな?」


「一部の魔力がある道具には、未来が見える水晶玉なんてあるらしいわよ。希少だから滅多にないけど」


 ヴァリエーレさんの話を聞いた剣地は、立ち上がって占いの中を覗き込んだ。もう、恥ずかしい。仕事の邪魔になるじゃない。


「すみませんヴァリエーレさん。剣地を止めてきます」


「分かったわ。物はちゃんと守るから安心してね」


 私が剣地を連れ戻そうとした時、剣地が店の中に入ってしまった。何やっているのよ。余計なお金を使わないで欲しいわ。私は急いで店の中に入った。すると、剣地がボーっと立っていた。その前には、占い師の女性がいた。彼女の目の前には、色が変わっていく水晶玉があった。


「いらっしゃいませー」


「すみません、連れを引き戻しにきただけなので」


「あ、お客さんじゃないのね……」


 あんまり繁盛してないのかな? 帰ろうとすると、少し残念そうな声でこう言った。


「あまり気にしないでください。これでもお客は結構入る店なので」


 と、占い師はこう言ってくれた。服装を改めてみると、綺麗なローブを羽織っていたから食事や服には困らない程度には儲かっているだろう。そもそも、リゾート地で商売ができるなら、それなりにお客はいるはずだ。


「なぁ、本当にそれで未来が見えるのか?」


 剣地がこう聞くと、占い師はすぐに返事をした。


「ええ。見えるとしても近い未来だけ、映像を映す時間は三十秒だけです。それに、未来は複数あります。この水晶玉が見せるのは近い将来、起こる可能性のある未来だけです」


「うーん……難しくてよくわからなかったけど、まぁ起こりそうな未来を見せてくれるのか」


「はい。興味あるならやってみます? サービスしますよ」


「成瀬、やってみようぜ」


 はぁ……剣地は占いをやる気満々だ。仕方ないな……。


「一回だけよ」


「ありがと!」


 その後、私と剣地は水晶玉の前へ座り、占いの結果を待った。


「魔力を込めますので少々お待ちください……はっ!」


 占い師が魔力を水晶玉に込めると、水晶玉の中で映像が流れた。


「すげー!」


 剣地はこの光景を見て感動していた。確かに水晶玉の中で映像が見られるなんてすごいわね。私はそう思った。


 水晶玉の映像は、少し暗い場所を移していた。周りには不気味な仮面を被った人たちがいる。その中央では武器を持った剣地と、白い仮面を被った人物がいた。剣地が何か話しているようだけど、何を言っているかは分からない。その時、仮面の人物が何かを持って剣地に近付いた。何かをしたのだろう。しばらくし、剣地の口から血が流れた。まさか……剣地があの仮面の人物にやられたの? あれは一体誰? 私が困惑する中、映像は続いていた。剣地は倒れる際、相手の仮面に手を触れていた。その衝撃で、仮面が落ちた。その下の顔は……私だった。その時、映像が消えた。


「こ……ここ……までです」


 重い空気を察した占い師が、慌てながらこう言った。


「いやあの……未来というのはいくつも分岐点があります。その分岐点によって、未来というのは変わります。もしかしたら、この未来も回避できることもありますので……えーっと……その……元気を出してください」


「はい……ありがとうございます」


「ちょっと……空気があれですね……今回はサービスで無料にします! いい未来があなたたちに訪れるよう、お祈りします!」


 その後、私と剣地は占いの店から出た。ヴァリエーレさんが私と剣地の顔を見て、少し心配そうな顔をしていた。今日の夜、皆が集まった時にこのことを話そう。


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