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幻の国、アルバリーク


成瀬:地下への道


 こんな大掛かりな仕掛けがあるなんて思いもしなかった。もしかして、この廃墟はとんでもない大金持ちが住んでいたのだろう。それか、どこかの国であり、侵入者対策でいろんな部屋に罠や仕掛けをしてあった。


「どこまで続くのかな?」


 ルハラはあくびをしながらこう言った。前にいるヴィルソルが闇の炎を照らしながら先行しているけど、ため息を吐いてこう答えた。


「まだ先が見えん。ルハラの言うとおり、長い階段だな」


「まるで、山を下っているような感じだな」


 ゴメスさんの言葉を聞き、私たちは少しぞっとした。何日もかけて登った山を下っているとしたら、戻るのが大変だ。


 少し絶望していると、ヴィルソルが声をあげた。


「大丈夫だ。先が見えてきた」


「おお! 早く行こう」


 その後、私たちは急いで階段を下り終えた。目の前には無数の扉があった。


「どの部屋にケンジはいる?」


「いないかもしれんぞ。大きな廃墟だ、きっと迷路のようになっている」


「だとしたら会うのにどれだけかかるか……」


「すぐ会えるって信じましょう」


 私は皆にそう言った。それから私たちは次々と扉を開けて中を調べ始めた。部屋の中はどれも似たような構造であり、中にあるのは粗末なベッドと机、装備を置くための置き場や鏡しかなかった。


「全部同じ部屋だね」


「そうだな。ケンジたちもいないし」


 ヴィルソルはルハラと会話をしながら、目の前の扉を開いた。その部屋も先ほどと同じような部屋と同じ構造だったが、机の上に日記帳が置かれていた。


「日記かな?」


「仕掛けかもしれんぞ」


「触ってみるまで分からん。ナルセ、我ときてくれ。ルハラはゴメス殿を護衛しながらこい」


「うん」


「あいあいさー」


 私たちは部屋に入り、机の上に置いてあった日記帳を調べた。


「読むぞ」


 ヴィルソルがこう言うと、日記の中身を読み始めた。




 念願のアルバリーク王国の兵士長になれた。昇格したから給料もそれなりに上がるはず。これで欲しい物が何でも買えるようになってきた。何を買おうか。新しい剣か? それともうまい飯か? 少し欲張っていい女でも抱こうか? とにかく、金を貰ったら考えることにしよう。




「アルバリーク……だと……」


 この名前を聞き、皆は驚いていた。だけど、私には何のことかさっぱり分からない。


「何それ?」


「昔、この辺りにあったとされる大きな国じゃ。大昔に起きた大きな戦争で滅んだとされている……お主知らないのか?」


「彼女は転生者で、この世界の生まれじゃないの。だからこの世界の歴史とかあまり分からないの」


「そうか……事情は分からんが、とにかく知らぬということか」


 ルハラの説明を聞き、ゴメスさんは納得していた。というか、あの説明で納得できたのがすごいな。


「知らないのも無理はないか。もしかして、宝の噂もこの国があったから……」


「一部の輩がイルシオンシャッツにアルバリークがあったことを予想していたのだろう。歴史オタクが言いふらしたかもしれないが」


 ヴィルソルが日記をめくりながらこう言った。しばらくし、ヴィルソルはため息を吐いて本を閉じた。


「ダメだ。古くなって一部のページが読み取れん」


「大丈夫だ。この場所が何なのか知ることができただけで大収穫だ」


 ゴメスさんは少し興奮しながらこう言った。その後、私たちは部屋を出て再び剣地たちを探し始めた。




 成瀬たちと別行動をとっているギメキとラロは、地下ではなく上の階にいた。彼らがいる部屋の中には、巨大な絵が飾られていた。


「大きい絵だねー」


「ボロボロで何の絵か分からないけどな」


 ギメキはラロにこう言うと、にやりと笑った。


「やっぱりここに何かが隠してある」


「何で分かるの?」


「ここを見ろ」


 ギメキは絵の隅にある小さな出っ張りをラロに見せた。


「ボタンのようだけど」


「これを押せば何かが起きるってわけだ」


 ギメキはボタンを押し、少し様子を見た。しばらくし、絵は大きな音を立てながら回転し始めた。その奥には上へ行く階段があった。


「おお! 隠し階段!」


「噂通り、ここにはお宝が眠っている。死んだ奴らには申し訳ないが、ここの宝は俺たちの物だ」


 ギメキは笑いながら、隠し階段を上がって行った。ラロは急いでその後を追って行った。




剣地:アルバリーク地下


 何か頭がいてーな……確か俺、穴から落ちて……何かに当たって……それから記憶がない。


 俺は起き上がると、目の前の状況を見て驚いていた。さっきは雪山にいたはずなのに、今はどこかの洞窟のようだ。そして、俺はティーアにおんぶされている。


「ティーア? ヴァリエーレさん?」


「ケンジ、やっと起きたの」


 俺の声を聞いたヴァリエーレさんが俺に近付いた。


「一体何があったんですか?」


「どこかに頭をぶつけて気を失っていたの」


 ティーアが簡潔にこう返事した。そうか。やっぱ俺、何かに当たったのか。だから頭が痛い。


「で、ここはどこだ?」


「廃墟の地下かもしれん」


 この問いに答えたのはレクレスさんだった。無事でよかった。それにしても、地下ってどういうことだ?


「何でこんな所が?」


「分からん。今は君たちの連れと合流するために動いている」


「そうですか……」


 今分かったのは俺たちがあの廃墟の地下にいること、成瀬たちとは別々に分かれてしまったこと。うーん……魔力を察知するとかなんとかして成瀬たちがどこにいるか調べられねーかな……。


 俺がこう考えていると、ティーアが何かを見つけた。


「ここの鍾乳洞だけ他と違うね」


「そうだな……何だか人の手で作られたようだ」


「調べてみよう」


 と、ティーアがその鍾乳洞に手を触れた。すると、鍾乳洞は勝手に倒れ、突然大きな地響きが鳴り始めた。


「隠し扉みたい」


「ああ……どんな仕掛けだ」


 どうやら、あの鍾乳洞は隠し扉を開けるためにスイッチだったようだ。なんだか、まるでRPGの仕掛け満載のダンジョンを攻略しているみたいだ。


 その後、俺たちは隠し扉から次の場所へ移った。


「さっきとは違って……」


「どこかの地下室にいるみたい」


 俺たちの目の前には無数の扉があった。なんだか気味悪いな。


「下手に開けたら仕掛けがあるかも」


「嫌だな、それ。でも……先に行くには開けるしか道はなさそうだな」


 俺がこう言うと、ティーアは目の前の扉を開いた。


「きゃあっ! ちょっと……急に開けないでよ。心の準備がまだできてないから」


「ごめん。だけど、何も起きないよ」


 ティーアの言うとおり、仕掛けは何も起きなかった。


 扉の先の部屋はそれなりに広く、部屋の中央に長方形の大きなテーブル、そして暖炉のような物が置かれていた。地下室に暖炉って危険だろと思ったが、どうやら煙を逃がす場所はあるようだ。


「リビングみたいね……」


「こんな地下室に?」


「一部の人が地下室で生活をしていたのではないか? 食器もあるし、気を落ち着かせるための絵もある。ボロボロだけど」


「うーん……まるで城のようだな……」


 俺がこう呟いたその時だった。壁の向こうから足音が聞こえたのだ。


「誰かいる」


「嘘……」


「またゾンビ?」


 ゾンビ? 何でそんなものがいる? 俺が気絶している中、何かあったのかな?


「ゾンビがいたんですか?」


「ええ。まぁ私がやっつけたけど……」


「生き残りがいたかもね」


 その直後、ドアノブが回る音がした。俺たちは武器を構え、ティーアは大きく叫んだ。


「かかってこいゾンビ共! この勇者ティーアが相手になる!」


「誰がゾンビだ!」


 声の主はヴィルソルだった。後ろには成瀬たちもいた。


「剣地、ヴァリエーレさん、ティーア!」


「無事でよかったー」


 ルハラが俺に抱き着き、顔を舐めまわした。その直後、嗚咽した。


「土の味がする」


「洞窟を歩いていたからな。皆も無事でよかったよ」


「もう……心配かけて……」


 成瀬はこう言っているけど、少し泣いているようだった。


「ゴメスさん。無事で何よりです」


「レクレスさんも」


 レクレスさんは辺りを見回し、ゴメスさんにこう聞いた。


「あの二人は?」


「別行動中です。宝があると言ってどこかへ行ってしまいました」


「しょうがない奴だな」


 話を聞く限り、ギメキとラロはどこかへ行ってしまったようだ。まぁ生きているなら問題ないだろう。


「皆、今日はここで休もう。そろそろ夕方だ」


 というわけで、俺たちは広くて安全なリビングで休むことになった。一時はどうなるかと思ったけど、早めに成瀬たちと会えて本当に良かった。


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