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ろくでなしの最期


剣地:テントの前


 さて、そろそろ出発の時間だ。俺はリュックを背負い、皆にこう言った。


「準備はできたよ。いつでも行ける」


「で、こいつはどうするの?」


 成瀬が縛り上げたキーツを指さしこう言った。本来ならこの場で放置したいのだが、こいつは余罪がたくさんあるだろう。この冒険が終わった後でいろいろと聞き出そう。


「さて、そろそろ行こうか」


 レクレスさんの言葉を聞き、俺たちは返事を返した。ただ、縛られたキーツは暴れながら叫んでいた。


「縄をほどけ! これでも私には政治家の友達がいる! このことを話したら、貴様ら全員豚箱へぶち込んでやるからな!」


「豚箱へぶち込まれるのは貴様の方ではないか?」


 ヴィルソルが闇の炎を発しながら、キーツに近付いた。闇の炎が普通のものとは違うと察したキーツは、大人しくなった。


 その後はずっと山道を歩いていた。こんな日がいつまで続くかと思っていたが、ゴメスさんがもう中間地点を超えたと話していた。どうやら、もう少し踏ん張ればこの山の頂上へ着くらしい。


「ここまでくると、モンスターとの戦いには慣れちまったな」


「ええ。私たち強くなっているみたいね」


 前を歩くギメキとラロが会話をしながら戦っていた。この二人も最初は頼りなさそうだったけど、この山で戦うにつれて強くなっていた。本来なら、ゴンダもこの位強くなっていたかもしれない。


「大丈夫?」


「足元に気を付けろよ」


「あ……う……薬……ちょうだい」


 ゴンダはキーツから与えられたホワイトソナスのせいで、完全に中毒者になってしまった。


「よこせ、早く薬をよこせ!」


「今はない! とっくに没収されてしまった!」


 キーツの言うとおり、今あいつはホワイトソナスを持っていない。俺のインフィニティポーチの中にあいつのリュック、そしてホワイトソナスの残りがある。ギルドか警察に事情を説明して、渡す予定だ。


「はぁ……はぁ……苦しくなってきた……薬……薬!」


 その時、ゴンダが大声を上げて暴れだした。ゴンダを抑えていたヴァリエーレさんとティーアは急な動きに驚き、後ろに転んでしまった。


「大丈夫?」


「ええ……大した傷ではないわ」


 成瀬とルハラが二人を起こしたけど、ゴンダは叫びながら暴れ始めた。


「薬! 薬! 早く!」


「おいそこの小僧!」


 と、ヴィルソルの横にいるキーツが俺に向かってこう言った。


「何だよ?」


「この際だから仕方ない、あいつに薬を与えてやれ!」


 俺は困った。ここで俺がゴンダに薬を与えたら、俺も罪に当たるのではないのかと。


「剣地、薬なんて与えちゃダメよ」


「そうだ。我の魔力で少し眠っていてもらう」


 ヴィルソルが水の魔力を発し、ゴンダの顔面に叩きつけた。その後、ゴンダは大人しくなり、目をつぶって眠り始めた。


「今作った水の中に睡眠薬と同じ成分が入った水を混ぜた。これでしばらくはおとなしくなるだろう」


「便利だな、水の魔力って」


 俺はどや顔をするヴィルソルを見てこう言った。




ヴィルソル:山の道中


 一部の人間はどうして罪を重ねてまで富を築こうとするのだ? 金を稼ぐなら、必要な分だけ稼げばいいのに。それ以上稼ぐとろくでもないことになるぞ。


 キーツとゴンダは我の闇で宙に浮かべている。キーツは泣きながら何か言っているし、ゴンダは相変わらずすやすや眠っている。


 早い話、我の魔力を使えばこの山何て簡単に制覇できるのだが、レクレスが自分の足で制覇しないと意味がないと言っていた。まぁ、確かにそうだが。冒険家のプライドがズルをしたら許さないのだろう。


 歩き始めて数時間が経過した。我は周りの吹雪の音を聞いて異変を感じていた。


「おかしいぞ。変な音が混じって聞こえる。なんか、波の音のような物が……」


「皆、あそこに岩場に移動するぞ」


 ゴメスがこう言うと、皆指示があった岩場の陰に移動した。


「何かきているの?」


「スノーシャークじゃ」


「スノーシャークじゃと?」


 聞いたことがある。スノーシャークは高い雪の中に住むサメの一種。奴らは他のサメとは違い、雪の中を動いている。凶暴性も他のサメと同じだ。だが、対策はある。奴らは音を頼りに獲物を探しており、足音や声のした方を判断し、獲物に襲い掛かる。


「静かに移動しよう。この辺りはスノーシャークの生息地じゃ」


「ゴメスさん、よくこの場所を知っていて生きてきたね。一度この山に登ったの?」


 と、ヴァリエーレがこう聞くと、ゴメスは静かに答えた。


「わしが知っているのはここまでじゃ。実は、この先のことは知らず、ここまで登ったのも今回が初めてじゃ」


「え? じゃあどうして案内人をやれるんですか?」


 とんでもない事実を知ったケンジは、目を丸くしながらゴメスに聞いた。


「過去の案内人が書き留めた本がある。それを熟読していた」


「そうか。ここから先は本当に前人未到の地か。わくわくしてきたな」


 こんなピンチな時なのに、どうしてレクレスというおっさんは元気でいられる? ギメキとラロはビビって動けないし、ケンジやナルセも緊張のあまり冷や汗をかいているではないか。


 我は呆れてこう思っていたが、レクレス以上に呆れた大バカが一人いたことを思い出した。


「うわァァァァァァァァァァ! 帰ろう、もうこんな危険な山から帰ろうよ! 私はまだ死にたくない!」


 キーツのバカが大声を上げて叫び始めた。その声を聞いて、ゴンダも騒ぎ始めてしまった。


「薬! 薬をよこしてくれェェェェェ!」


 その時、目の前から大きなスノーシャークが口を開いて姿を現した。


「クソッ!」


 ケンジが拳銃を構えて銃を放った。弾丸はスノーシャークの体を貫いたのだが、発砲音を聞いて他のスノーシャークが現れた。


「こうなったら殲滅するまでやってやるわ!」


 ナルセが構えを取り、空から光の雨を降らした。その結果、何匹かのスノーシャークはやっつけたが、音を聞いて周辺のスノーシャークが現れた。


「一旦逃げるぞ! 先に行こう!」


 レクレスが銃を持ちながらこう言ったが、目の前にスノーシャークが現れた。だが、現れたその瞬間にヴァリエーレの雷とルハラの風がスノーシャークを斬り刻んだ。


「こりゃーやばいね」


「常に戦闘できるように構えて移動しましょう」


「本気か……ねーちゃんたちよぉ」


 ギメキが震えながらこう言うと、ヴァリエーレとルハラは首を振って返事をした。


「あーもう! やってやる! やってやるぜ!」


 剣を持ったギメキが次々に現れるスノーシャークを斬って行った。我も戦いに参加したいのだが、厄介者を二人も連れている。戦える余裕はない。


「助けて! 助けてくれ!」


「あー、もう黙れ! 死にたくなければ黙れ!」


「ヴィルソル!」


 ケンジの叫び声が聞こえた。我の後ろにスノーシャークがいたのだ。我は振り返って対処していたのだが、キーツの下に潜んでいたスノーシャークが現れ、キーツに噛みついた。


「ギャァァァァァァァァァァ!」


 噛みつかれた痛みで、キーツは大きな悲鳴を上げた。他のスノーシャークは仲間が獲物を取ったことを確認したのか、急いでキーツの方へ移動していった。


「愚かな男だったな」


 レクレスが銃をしまい、こう呟いた。ケンジたちも武器をしまって、大きく呼吸をしていた。


「悪い奴だったけど、噛みつかれて死ぬのはちょっとかわいそうだな」


 ケンジはスノーシャークの餌になっているキーツを見て、小さく呟いた。


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