最初の犠牲者
ヴァリエーレ:山の道中
ゴンダとギメキはかなりと強い。素早いノーバッドの動きを見切り、一瞬で切り伏せている。斬られていく仲間を見て、スノーバッドは驚いているようだ。
「こんなもんか? 俺はまだまだ戦えるぜクソ野郎!」
「その白い体を血で染めてやるぜ!」
うーん、確かに強いけど、口から出る言葉はかなり野蛮だなぁ。
「品のない人だ」
と、ティルさんが呆れてため息を吐いた。その時、背後からスノーバッドが襲い掛かった。だが、ティルさんはすぐにリボルバーを持ち、後ろに銃口を向けて弾丸を放った。その弾丸は、スノーバッドに命中した。
「これでもガンマスターのスキルを持っている。残念だったな」
ティルさんはリボルバーを回しながら、腰のガンホルダーにしまった。
「ほえー、結構強いね」
「ああ。俺もびっくりした」
三人の戦いを見ていたケンジとルハラは、驚いたようにこう言った。
「さて。レクレスさんの所へ戻ろう」」
その後、私たちはナルセたちの元へ戻った。
「ヴァリエーレさん、剣地、ルハラ! 無事でよかった」
ティーアとヴィルソルと協力しながらバリアを張っていたナルセが私たちを見てこう言った。ずっと心配だったのだろう。
「まーな。この人たちのおかげだよ」
ケンジはゴンダたちが戦ってくれたから何とかなったと伝えた。その言葉を聞いたキーツが、笑いながらこう言った。
「はーっはっはっは! 一時は心配だったけど問題ないじゃないか! さぁ、先へ進もうではないか!」
「黙れ若造。貴様のような奴が前に立って歩くな」
ゴメスさんはレクレスさんに先に進むぞと言った後、私たちはその後について行った。
ヴィルソル:山の道中
スノーバードの襲来からしばらく時間が経過したが、モンスターが我らに向かって襲ってくることはなかった。魔王である我がいるというのもあるが、それ以外にも急激な気温低下も理由の一つで上げられるだろう。流石にこの気温では、並のモンスターでも生きることは無理だ。
山の入口近くを歩いていた時は冬のような気温だなと思っていたが、登って行くにつれてだんだんと寒さが増していった。魔王である我もこの寒さに耐えられるかどうか少し分からないだろう。
このイルシオンシャッツを制覇できないのは、モンスターの強さと強くなっていく寒さが原因だろうな。
「さ……寒い……何だ、この寒さは……」
キーツが鼻水を垂らしながらこう言った。奴が垂らしている鼻水は、出たらすぐに凍ってしまった。
「ああもう、また凍ったよ」
と言いながら、キーツは凍った鼻水を払いながら歩いていた。
「ふぃー、結構きつくなったな。大丈夫かラロ」
「ええ。宝のためなら耐えられるわ」
ギメキとラロはこんな会話をしていた。宝のためなら危険な場所へ向かうのか。宝と命、どっちが大切なのか分からないのかこいつらは。
「あー腹減ったな……さっきの奴らを食っておけばよかった」
恐ろしいことを言ったのはゴメス。こいつ、腹が減ったら何でも口にするつもりか?
「ヴィルソル」
おっと、ルハラが声をかけてきた。
「そっちはどう? 生きてる?」
「ああ。というか、勝手に殺すな」
「ごめん。声掛けしないと皆の無事が分からないからさ」
うーん、確かにルハラの言う通りじゃ。声を掛け合っていれば誰がいるのかいないのか分かるだろう。
「レクレスとやら、話をしながら先に行くのはどうじゃ?」
「あまり……よろしくない……口の中が……凍って……大変なことになるぞ……」
と、レクレスは途切れ途切れにこう言った。口の中を凍らせないように途切れ途切れに言っているのだろう。結果、声を出すのはやばい時に出すことに決まった。
しばらくし、我らは山道を歩いていた。寒さは増してくるのだが、モンスターが襲ってこないのは少し変だの。
「止まってください」
と、ティルが静かに言って、止まれと腕で合図を送った。
「雪崩です」
耳を澄ますと、轟音らしき音がうっすらと聞こえてくる。
「私の方へ集まってください。バリアを張りますので」
ナルセがこう言った直後、ゴンダとギメキとラロは急いでナルセの元へ集まった。
「早くバリアを張れ!」
「早くしないと死んじまうよ!」
「宝を取るまで死んでたまるか!」
身勝手な奴らだ。我は目で勇者とナルセに合図を出し、三人でバリアを張った。
「この位のバリアなら雪崩に耐えられるだろう」
「ええ」
その後、我らはバリアの中で雪崩が収まるのを待った。
成瀬:雪崩後の道
雪崩は止んだ。耳に聞こえるのは強烈な風の音だけ。
「やっと止んだか」
安心したキーツさんが、バリアの外に出た。
「さぁ、先に進もう」
「戻れ!」
ティルさんは大声でこう言ったが、キーツさんには何も聞こえなかった。
「クソッ!」
ティルさんは舌打ちをした後、バリアから出て行った。
「ティル! 待たんかティル!」
レクレスさんが叫んだが、ティルさんは止まる気はなかった。
「止まれバカ野郎! モンスターがいるぞ!」
「え?」
その直後、雪の中から鋭い爪を生やした猿のようなモンスターが現れた。そのモンスターは素早い動きでティルさんに近付き、鋭い爪で体を貫いた。
「ティル! ティィィィィル!」
その後、キーツさんは走って再びバリアの中に戻ってきた。それを見たゴメスさんが怒鳴るような声で叫んだ。
「バカ野郎! やたらむやみに外に出るな! この山には、雪崩と共に現れるアサシンモンキーという猿のモンスターがいる。そいつらは雪崩に飲み込まれて弱った生き物を殺して食べてしまう恐ろしいモンスターだ!」
「仕方ないではないか、私はそんなことを知らなかった!」
「己の無知を言い訳にするな! この野郎、貴様のせいで!」
ゴメスさんは外を見て歯を食いしばった。外には剣地とティーアがバリアから出てアサシンモンキーを倒していたのだが、二人とも浮かない顔をしていた。
「……何でこんなことに」
バリアに戻ったティーアは、うつむいてこう言った。剣地も少し元気がなさそうだった。
「こんなことってありかよ」
剣地は剣をしまい、疲れた様子を見せてその場に座った。私たちの疲れた様子を見てか、レクレスさんは外を見てこう言った。
「今日この辺りでテントを張ろう。もう……疲れた」
レクレスの日記:二日目
ティルが死んだ。キーツとかいう愚かな男のせいで。いや、あの男の愚行を攻めていては先へは進めない。しかし、長年の相棒を失ったとなるとこの先が不安だ。いくら優秀な戦士がいても、山に関しての知識や技術がないのであれば素人と同じだ。素人だけでこの前人未到の山を制覇できるのであろうか? 少し不安になった。
今この日記を書いて思ったことだが、キーツという男は一体何の目的でこの山にきたのだろう。ケンジたちは私の護衛、ギメキ、ゴンダ、ラロはこの山にあると言われる宝、それぞれ目的があるのだが、あの男だけは何のためにここに来たのか一斉口に出さない。それに、奴が背負っている大きなリュックにはモンスターに対抗するための武器は入っておらず、山登りのためのアイテムも簡易的な物ばかりだ。腰に携えているレイピアも役に立たなそうだ。
酒場で聞いた噂を思い出した。近頃都心の方で新しい麻薬が流行っているそうだ。その麻薬は町の若者以外にも、多数の芸能人が使っていると噂されている。その薬を育てるには、物凄く寒い場所でないと育たないと聞いた。キーツという男、少し様子を見た方がいいな。ケンジたちにもこのことを伝えておかなければ。何かあった時では遅いだろうし。
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