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雪山のモンスターたち


剣地:イルシオンシャッツ


 山の入口から出発してもう数時間は経過しているだろう。今が昼か夕方なのか分からない。空は灰色の雲で覆われているからだ。


「ティル、出発してどのくらい経過した?」


「三時間ほどですね」


「そうか。本の通りだな」


「本って何ですか?」


 俺がこう聞くと、レクレスさんはこう答えた。


「数年前、イルシオンシャッツに挑んだ冒険家の本を読んだことがある。その冒険者は途中で諦めたが、その本にはイルシオンシャッツのことがそれなりに記されていた。その本には、イルシオンシャッツの天気は常に曇り、雲は他と違い、気味が悪い灰色だ」


 過去にもこの山を登ろうとした人はいるのか。だけど、途中で挫折した。その気持ち、何となく分かる。


「ブエックショイ! さっきより吹雪が強くなってねーか?」


「あー、鼻水がもう固まってらぁ」


 ギメキとゴンダが寒さに耐え切れず、くしゃみをしながらこう言った。ギメキの横にいるラロはやーねぇと言いながら少し距離を置いていた。成瀬たちはどうだろうか。俺より後ろに歩いているけど。


「剣地、大丈夫?」


 後ろから成瀬の声が聞こえた。どうやら向こうは無事みたいだ。俺は成瀬たちの方を見て、少し驚いた。


「どうしてバリア張っているんだ?」


「だって寒いから」


「ごめんね、ケンジ」


 と、ヴァリエーレさんが申し訳なさそうに頭を下げたのだ。ティーアとヴィルソル、ルハラはなんかリラックスした表情をしている。


「あー、温まる」


「いい気分じゃー」


「寒さが和らぐとともにムラムラするー」


 おいまさか、そのバリアには暖房機能があるのか?


「成瀬、俺にもそのバリアの中に入れさせろ!」


「待たんか坊主! あの子たちは女子だからいい。真の男なら、寒さに耐えきれい!」


 レクレスさんは熱くこう語っているが、一応俺も成瀬たちと同世代なのに。あー、どうしてこうなった? 仕方ねー。さっき貰ったカイロで身を温めるか。




成瀬:道中の脇道


 しばらく歩いていると、吹雪から身を守れるような穴を見つけた。


「今日はここで休もう。あそこでテントを張るぞ」


 レクレスさんは男衆を集めてテントを張りだした。数分後、私たちの目の前に大きなテントができた。その大きさはこの山登りに参加している全員が入れるぐらいだ。


「ふぃー……やっと休める……」


 剣地がこう言いながら、私に近付いてきた。


「どっか凍ってないか?」


「ちょっと待ってよ……大丈夫みたいよ」


「もし凍ったら私があっためてあげるからねー」


 と、ルハラが後ろから剣地に抱き着いた。それを見たティーアとヴィルソルがずるーいと言いながら、剣地に抱き着いてきた。この調子なら、体もあったまるでしょーよー。


「さて、晩飯の準備をする。少し待っておれ」


 レクレスさんはリュックから缶詰を取り出し、私たちに配った。その缶詰を見たキーツさんが、不満げにこう言った。


「富豪の私がこんなものを口にするとは……」


「いらないのか? じゃあ俺がもらうぞ」


 ゴンダが笑いながらこう言った。食料を取られると思ったキーツさんは、急いで缶詰を開けて食べ始めた。


 食事後、私たちは体を休めるために寝袋の中へ入っていた。レクレスさんが私たちに大きな寝袋を貸してくれたのだ。レクレスさん曰く。この寝袋なら激しくイチャイチャしても破れない。安心して使ってくれ。と言っていた。で、今はこんな状況。


「勇者、お主の肘を我にぶつけるな」


「仕方ないよ。やっぱり六人で寝ると窮屈だね」


「私はこれでもいいよー。皆の肌の感触が楽しめるから」


「ルハラ、どさくさに紛れて私のお尻を触らないで」


「く……苦しい……助けて……」


 私たちは一つの寝袋の中に入っている。流石に窮屈だ。こんなんで眠れるはずがない……。そんなことを思っていた時がありました。目をつぶっていたらいつの間にか眠ってしまった。




レクレスの日記:一日目


 本日、イルシオンシャッツ制覇へ向けての冒険が始まった。参加メンバーは私、長年の相棒であるティル。その他にも剣士らしいギメキとゴンダ。ギメキの彼女、ラロ。どこかの金持ちのキーツ、現地で合流した案内人のゴメス。そして有名なギルドの戦士、ケンジ、ナルセ、ルハラ、ヴァリエーレ、ティーア、ヴィルソル。彼らは道中で会ったモンスターを難なく撃破した。これなら、この山の制覇も達成できるであろう。


 しかし、気になることがある。ギメキ、ゴンダ、ラロはこの山の宝を狙っているらしい。噂で宝があると言っていたが、まさか私利私欲の為にこの山を登ろうとしているのではないか? この山は誰も制覇したことがない。だから、宝の存在もあるかどうかも知らないのだ。そんな噂を信じるとは、まったく愚かなものだ。




ルハラ:テントの前


 吹雪は昨日と変わらず強い。もしかして、先に進むたびにこの吹雪は強くなるかも。


「ルハラ、そろそろテントの中に戻って支度しろよー」


「うん、オッケー」


 私はケンジに返事をし、テントの中に戻ろうとした。だが、その時変な唸り声を耳にした。私は急いでテントへ行き、皆に話をした。


「モンスターですね……」


 ティルさんが冷静にこう言った。他の連中はビビっているのに。


「雪山のモンスターは他と比べて少し凶暴らしい。注意して進もう」


「はぁ? このまま進むのか?」


 レクレスさんの言葉を聞いたキーツが、目を開けて驚いていた。そう言えば、この人は剣とかしっかりした武器類を持っていない。雪山舐めているのか、こいつ?


「当たり前だ。仮に遭遇しても、対処できるように武器を持ってきている」


「だからって、凶暴な奴に勝てるのか?」


「急所を突けばいい。戦いなれていれば誰だってできるさ」


 ゴンダが笑いながらこう言った。ゴンダの笑みを見たキーツさんは、冷や汗をかきながらこう言った。


「私は皆のように武器や魔力を使えない。だから……今日は後ろを歩くよ」


 それから数分後、テントをしまった私たちは先へ進んだ。しばらく歩いていると、甲高い鳴き声が聞こえた。


「スノーバッドだ。気を付けろ、奴らは毒を持っている」


 氷の血を持った氷の蝙蝠のモンスター、スノーバッドが群れで現れた。それを見たキーツさんは悲鳴を上げて後ろに逃げた。


「成瀬、他の皆を守ってくれ」


「私も行くわ」


「私もー」


 私とケンジ、ヴァリエーレは前に出てスノーバッドの群れと戦おうとしていた。その時、後ろからゴンダ、ギメキ、ティルが現れた。


「雪山のモンスターとの戦いも、たまはいいか」


「あんなバケモン、始末してやるよ」


「やれやれ……血の気の多い人だ……」


 どうやら、この三人も戦うみたい。さて、この三人はどうやって戦うのだろうか?


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