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これからやるべきこと


ティーア:ギルドの部屋


 ミニマコーザでの戦いが終わって数ヶ月が経過した。あれから、ケンジは何かを考えることが多くなった。酷いときは夜遅くまで考えているのか、寝坊することがあった。この日もそうだった。


「ふぁあ……ごめん、寝坊した」


「これで今月三回目だね」


「何かあったの?」


 心配そうにナルセとルハラが声をかけてきた。ケンジはコーヒーを淹れてテーブルに座ると、私たちを呼んだ。


「皆に言いたいことがある」


「何かしら?」


「ずっと考えていたことに決着がついたのか?」


 ヴァリエーレと魔王がそう言うと、ケンジはコーヒーを飲んでこう言った。


「アーサーは弱い人のために戦った。俺らより若い奴がその道を選んだ。そう思うと、俺がやっていたことに自信が持てなくなって……」


 どうやら、ケンジは本当に人のために戦ったアーサーと今までの自分を比べ、少し惨めだと考えていたのだろう。まぁ、アーサーは弱い人のためにあれこれ頑張ってきた。戦争を起こしたのはよくない行為だけど。だけど、私たちはあくまで仕事でやっているだけだ。そう思うと、金のために戦う傭兵と変わらないのかも。


「俺たちはルハラのせいで長寿になった」


「いやー、それほどでもー」


「多分褒めてないわよ」


 と、ナルセは照れるルハラの頭を叩いた。その後、ケンジは話を続けた。


「この世界には弱い立場の人がたくさんいる。ミニマコーザも復興したとはいえ、まだ世界的な立場としたら弱い方だ。俺たちのような強い奴が助けないといけないって考えてさ」


「だけど、ギルドの仕事があるしね……」


「ヴァリエーレさんの言う通りだ。俺たちはギルドの戦士。だから、あまり大きな行動ができない。その問題もあるけどさ」


「もう一つあるのか?」


 ケンジはヴィルソルの方を見て頷いた後、話を続けた。


「俺たち六人だけじゃ世界中の弱い人を救うことはできない。そこだよ、どうしたらいいのかなーって」


 ケンジの言葉の後、皆は深く考えた。弱い人たちは世界中に存在する。だけど、私たちだけじゃ手が足りない。六人じゃあ数が少ないしなぁ……ん、待てよ。数が少ないなら増やせばいい。私たちみたいな強い人を育てればいい。なら!


「いい案思いついた! 私たちのような戦士を育てればいいのよ!」


「それってもしかして!」


 何かに気付いたルハラは、いつの間にかバスタオル姿になっていた。そういうことじゃないのに。


「ルハラが想像しているのは違うよ。私は学校みたいなものを作るってこと」


「なーんだ。違うのね」


「まぁ、俺も子供は欲しいが」


 ケンジの言葉を聞き、皆の顔が赤くなった。その後、ナルセが魔力を込めてケンジの頭を叩いた。


「何言っているのよ!」


「何で叩かれるの?」


 ナルセの一撃を受けたケンジの顔面は机にめり込んでしまった。だけど、これでケンジの考えにも決着がついた。弱い人たちを救うため、私たちのような強い人を育て、色んな人を助けるようにする。このギルドから旅立つことになるけど……いずれこうなるだろうと私は思っていた。




ヴィルソル:ロイボの町


 我らがこれからすべきことをギルドの人たちに伝えた。すぐに辞めるわけではく、まだ残っている仕事を終わらせてからということになった。それから我らは残った仕事を終え、正式にギルドを脱退した。ギルドを脱退することは、長年住んでいたこの部屋も、今日でお別れというわけじゃ。


「この三十年以上、いろいろあったけど」


「いろんな思い出ができたわね」


 ケンジとナルセはギルドの部屋を見て話していた。そう言えば、二人がこの世界へきてから、ずっとここで住んでいた。名残惜しいわけだ。


「もう少しいるか?」


「いや、もういいよ」


「少し寂しいけど、前に進まないと」


 その後、荷物をまとめた我らは下へ向かった。だが、我らを待ち構えていたかのようにロイボの町の人たちが出迎えてくれた。


「寂しくなるなー」


「これから学校を作るって? 頑張れよ!」


「世界のことを考えているなんてすげーよ、俺にはできない!」


「旅立ってもまたロイボの町にこいよ、あんたらならいつでも大歓迎だ!」


「ずっと応援しています、新天地でも頑張ってください!」


 ロイボの町の人たちの声を聞き、我らの目には涙が出てきた。その時、ギルドの役員がペンダントを持ってやってきた。


「これはお守りです。長年、ロイボの町で活躍してきたあなたたちへプレゼントするため、役員全員が協力して作ったのです」


「ありがとうございます! うわー、カッコイイ」


 ケンジはペンダントを手にし、目を輝かせながらこう言った。我らはペンダントを首にかけ、皆に返ことや握手をしながらロイボの町を出て行った。町の人たちは、我らの姿が見えなくなるまで手を振り、声をかけていた。本当にうれしかった。




剣地:ロイボの町周辺の草原


 俺と成瀬がこの世界に転生し、三十年以上経過した。俺と成瀬が日本で命を落とし、この世界に転生し、この草原にやってきたのが始まりだった。


「すべてはここから始まったのね」


 と、隣にいる成瀬がこう言った。俺は短く返事をし、遠くから見えるロイボの町を見ながら成瀬たちにこう言った。


「俺と成瀬の第二の人生はここから始まった。あの時はどうすればいいか、何をやればいいのか分からなかった。だけど、今はやるべきことを見つけた。そのために頑張ろう」


 俺がこう言うと、皆は返事をした。俺は皆の顔を見た後、笑ってこう言った。


「さぁ、行こう!」




 ロイボの町から旅立った剣地たちは、学校を作るため幻大陸へ向かった。ヤーウやリュッセに事情を説明し、彼女らの協力の元学校を作ることができた。そして、世界中にチラシを発行して学校を作ったと宣伝した。その宣伝の下、世界中から剣地たちのように強くなりたい者、剣地たちと同じように弱い人を救いたいと思う者などが集まり、ハーレムパーティーが作った学校は賑わった。それから、剣地たちに学んだ戦士たちは、世界中で弱い人を救うため活躍したという。


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