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戦争終結


剣地:ミニマコーザ外れ


 俺とアーサーの戦いは予想外の幕引きで終わった。アーサーは、空襲を終えて戻って行く戦闘機にぶつかり、どこか遠くへ吹き飛んだ。何とか地上に落下したアーサーを見つけて近付こうとした時、アーサーは俺を睨みながら震える声でこう言った。


「く……くるな……」


「勘違いするなよ。俺はお前にとどめを刺しにきたわけじゃないよ」


 俺はそう言って、後から合流した成瀬たちと一緒に治療を始めた。だが、アーサーの体からは大量に血が流れ、落下した際の衝撃のせいで骨が飛び出て、体の一部は骨がへこんでめり込んでいる。ルハラはアーサーを見て、不安そうにこう言った。


「これ……助かるのかな?」


「だけど、目の前で死にそうな奴をほっとけないだろ」


「ケンジの言う通りね」


 俺たちはそう言いながらアーサーを治療したが、アーサーが受けた傷はかなり酷く、魔力を使って治療しても、治る気配は一向にない。そんな中、アーサーの嫁が駆け付けた。


「アーサー……そんな……」


「ぼさっとしているなら、あんたらも手伝ってくれ」


 俺はアーサーの嫁にこう言ったが、アーサーが俺にこう言った。


「魔力を……止めろ……」


「はぁ? 嫌だよ、そんなことをしたらお前が死ぬだろうが。何が何でもお前を治す」


「無駄だ……もう……私は……死ぬ……だが、一つだけ聞きたい。何故……私を治そうとする?」


 はぁ、こんな状況で何言っているのやら。人を治すなんて答えは一つしかないだろうが。


「目の前で死にかけている人をほっとけるか。たとえ悪人でも、俺たちは命を奪わない。そこまで心は腐ってねー」


「そうか……強者の中でも、お前たちのような……心の持ち主が……いるのだな」


「世界は広いよ。きっと私たちみたいな人間もいたさ」


 ルハラの言葉を聞き、アーサーは少し笑った。


「早く出会いたかった。お前たちのような……素晴らしい人間に……」


「俺も同じ気持ちだ。弱い人のために戦うあんたにいろんな言葉をかけられただろう。そんで、俺もあんたの手伝いをできただろう」


「何……ギルドが許さないだろ……勝手に動いては……」


「あれこれ言われたら、ギルドを辞める覚悟がある。なあ皆」


「ええ。剣地の言う通りよ」


「金で解決しようとする成金野郎は、はっきり言って私は嫌いだよ」


「これまで、何度も無償で困っている人を助けたことがあるの」


「勇者だからね。いろんな人の味方でなくちゃ」


「魔王だが、我は弱い者をいじめる悪趣味はない」


 俺たちの言葉を聞き、アーサーはにやりと笑った。だが、突如咳き込んだ。アーサーの嫁が慌てて駆け付け、俺たちと一緒に治療を始めた。だが、もうアーサーは助からないだろう。それでも、俺は一生懸命魔力をかけ続けた。


「もう……いい……私は……満足だ。弱い者を助けるため……命を懸けた。人生をかけた。そして……素晴らしい人たちと最期に話すことができた……」


 そう言った後、アーサーは自分の嫁の方を向いて、言葉を続けた。


「ソレイド……シェイバー……タナ……シャベレーロ……リーバ……先に逝く私を許してほしい……弱い者を助けられなかった……私を……許して……ほし……い……」


「アーサー!」


「アーサー様!」


 アーサーの嫁たちは、項垂れたアーサーの手を掴んで泣き始めた。成瀬がアーサーの脈を確認し、悲しそうに首を振った。




 アーサーの死を知り、ミニマコーザの軍はすぐに白旗を上げた。それを知った連合軍の一部は喜んでいた。その一部というのは、後々セントラー王国からお叱りがあることを知らない兵士たちであり、上の役員は戦争に勝利してもあまり嬉しくなかった。その後、連合軍結束に加担した国はセントラー王国からとんでもない額の罰金を支払うことになった。それと、ウィリーの上司はミニマコーザの未開発の鉱山を秘密裏に入手しようとしたことをウィリーによって密告され、軍からも国からも追われる始末となった。


 戦争が終わって数日後、リーナ姫はハーレムパーティーとオハリの飛行団、ウィリーなどの一部の連合軍と共にミニマコーザへ向かった。彼らがきたことを察した町人は、一瞬怖い顔をした。だが、剣地は彼らに近付いてこう言った。


「怖い顔するなよ。俺たちは助けにきた。これ以上あんたらを苦しめることはしないから、安心してくれ」


 その後、復興作業を始めた剣地たちを見て、次第に町の人たちも剣地たちに心を開いて行った。そんな中、成瀬は空襲で半壊したミニマコーザ城へ向かった。人の手では持ち上げられない瓦礫を魔力で持ち上げるため、手伝いに行ったのだ。


「うわ……これは酷い……」


 瓦礫を持ち上げた時に成瀬が見たのは、爆発や瓦礫の倒壊に巻き込まれて命を落とした兵士たちの亡骸。どれも無残な姿になっており、成瀬は彼らの最期を考え、少し憂鬱な気分になった。その時、作業をしていたウィリーが叫んだ。


「ナルセさん、こっちの方にも人がいます!」


「分かりました、ちょっと待ってください!」


 成瀬はウィリーの元へ向かい、風の魔力で瓦礫を上げた。その下にいたのは、成瀬が殺したいほど憎んでいた相手だった。


「あっ……」


「どうかしましたか?」


「ジョン……」


 成瀬の一言を聞き、ウィリーは亡骸の正体を把握した。裏の武器屋として、活動しているジョンの名をウィリーは知っていた。だが、この状況でジョンと遭遇するとは考えてもいなかった。


「彼も、この戦争の裏で活動していたのですね」


「ええ。戦争があるところ、こいつがいたからね……」


 成瀬はジョンの亡骸を見て、少し切ない気持ちになった。殺したいほど憎い相手であったが、顔見知りが惨めな形で最期を遂げると、なんだかやるせない気持ちになったのだ。


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