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さらば、セントラー王国よ


剣地:セントラー王国


 王様が亡くなって、一週間が経過した。この世界での葬式は日本と違って、お通夜とかそういうのは一切ない。人が亡くなったら翌日のうちに親類や親しい人たちに連絡を取る。それから王室関係者が会見を開き、王がいつ亡くなったのかという情報を世界の人たちに話す。その後で葬式が行われた。


 葬式には俺たちも参加した。そこでリーナ姫が王様からの伝言を聞いた。娘を守ってくれてありがとうと。


 葬式の後でピレプは姫の暗殺未遂の主犯格として捕まった。あいつは聞き苦しい言い訳を繰り返しているが、耳を貸す人は誰もいない。まぁ俺も奴の話を聞いていたが、どれもこれも出まかせの嘘っぱちだった。騎士団の人曰く、容疑が固まり次第処分されるだろう。おそらく、処刑はないと思うけど、一生刑務所の中で過ごすことになりそうだな。


 レッジのその後だが、禁断スキルとやらの影響で精神が崩壊したようだ。精神に関する医療に携わる先生によると、もう二度と元には戻らないようだ。禁断スキル、効果はすごいけどその反動が大きい。これだけは使わないようにしないと。


 今、俺たちは部屋で荷物をまとめている。依頼であるリーナ姫の護衛任務が終了したのだ。


「さて、出る前に姫に挨拶しないと」


 俺は皆の荷物をインフィニティポーチにしまった後、こう言った。皆はそうだねと返事をし、リーナ姫の元へ向かって行った。


 数分後、俺たちは城の外の外れにきていた。そこには王家の墓がある。亡くなった王様の遺骨はここに納骨されたのだ。その墓の前に、リーナ姫がお祈りをしていた。


「どうも」


「あ、皆様」


 リーナ姫は俺たちに気付き、近付いて頭を下げた。


「もうお帰りなのですね」


「はい。もう姫様を狙う奴はいないと思いますし、それに優秀な騎士団の人がいれば安心だと思います」


「また何かあれば、遠慮なく私たちギルドへ連絡ください」


「すぐに駆け付けるよー」


 成瀬とヴァリエーレさん、ルハラがこう言うと、ティーアとヴィルソルがその後でこう言った。


「勇者がいますので、ご安心ください」


「我の力が欲しければ呼べ」


「はい。分かりました」


 と、リーナ姫は笑顔でこう言った。その後、リーナ姫は俺に近付き、手を差し伸べた。


「ケンジ様もありがとうございます」


「いえ、困っている人を助ける。当たり前のことをしただけですよ」


 改めてリーナ姫の顔を見たけど、やっぱりこの人美人だな。美人に礼を言われると少し照れるな。そんなことを思っていたら、嫉妬したのか成瀬が肘で俺の腰を攻撃してきた。その光景を見たリーナ姫は、少し苦笑いをしていた。


 数分後、俺たちは帰りの車の中にいた。長い任務だったけど、いろいろと勉強になった。今の自分の弱点を理解することができた。魔力に関するスキルが俺には足りない。転生前に神様に会った時、俺も素直に成瀬と同じようにゼロマジックとかマジックマスターとか選んでおけばよかったかな。


 それと、今後についてある意味重要なことを俺は知った。禁断スキル。今後、このスキルを使った連中を相手にする可能性がある。あのスキルの威力は他のスキルと違い、とてつもない力がある。禁断スキルに対抗できるように、今あるスキルのことをしっかりと理解し、鍛えないと駄目だな。


 俺がこんなことを考えていると、ティーアが俺の膝の上に座って来た。


「いやー、やっぱ車での移動は暇だねー」


「だからと言って、ケンジの膝の上に座るな! そこは我の指定席だ!」


 ティーアとヴィルソルが、俺の膝を巡って喧嘩を始めた。二人が喧嘩をしている隙に、ルハラが俺の足元から顔を出し、そのまま俺に抱き着くような姿勢で座った。


「ダメだな、二人ともー。どうせならこうやって体を密着させないとねー」


「お前は恥というのを知れ!」


 と、ティーアとヴィルソルは同時にこう叫んだ。こいつら、仲がいいのか悪いのか分からねーな。


「ヴィルソル。ほら、あの時の威勢のよさはどうしたの? クァレバのアジトに乗り込む前に泊った宿屋でケンジとあれこれしたよね」


 この言葉を聞いた成瀬、ヴァリエーレさんの目つきが変わった。


「剣地、私その話聞いてないけど」


「ええ。私も聞いてないわ」


「ハーッハッハ! この世はやったもの勝ちじゃ! いーだろ、羨ましいだろー!」


 オイオイ、車の中でこんな話をするなよ……運転手の人がいるだろうが。


「いやー、仲がいい夫婦ですねー」


「ちょっと、恥ずかしいことを言わないでください!」


 俺は顔を真っ赤にした成瀬に、思いっきり強く頭を叩かれた。照れ隠しのつもりだろうが、何で叩かれるのか訳が分からないよ。そのせいでその後の記憶がない。




成瀬:ロイボの町の自室


 はー……やーっと部屋に着いた。私はギルドに報告をした後、気絶した剣地を魔力で浮かして部屋に戻った。


「うーん……何だか帰ってきたって気がするわね」


 ヴァリエーレさんが背伸びをしてこう言った。確かにそんな気がする。セントラー王国の豪華な部屋も好きだけど、やっぱこの世界に転生してからずっと過ごしているこの部屋の方が一番好きだな。


 私は気絶している剣地をベッドの上に置き、部屋着に着替えた。その横では私と同じようにヴァリエーレさんも部屋着に着替えていた。ルハラたちはベッドの上で気絶している剣地の横で、頬をつついたり布団の中にもぐったり、服の中にもぐったりしていた。


「ねぇ、こんなことしてもケンジ起きないよー」


「心臓は動いている。ナルセの一撃が強すぎたのだろう」


「強くやりすぎたかな」


 私がこう言うと、着替えを終えたヴァリエーレさんが、剣地の頭を触った。


「あらら……たんこぶがある」


「ちょっと反省します」


 うわー、やりすぎたな。私はこう思いながら剣地に近付いた。まだ気絶しているようだが、生きてはいるようだ。気持ちよさそうに寝息を立てている。


「そろそろ起こして晩御飯に行く?」


「そうですね。じゃあ起こしますのでちょっと待っていてください」


 私は剣地の近くに座り、頬を強くつまみ、掴んだまま上下に動かした。


「プッ。ケンジの頬ってこんなに柔らかいのね」


「どれ、我にもやらしてみろ」


 その後、私の他にルハラとティーア、ヴィルソルもいたずらに加わり、ちょっかいの激しさが増した。


「おい。止めろ」


 ようやく剣地は起きたようだ。


「あらあら、遅いお目覚めで」


「気持ちよく眠っていたのに、まだ頭がボーっとする」


「眠っていたというよりか、気絶していただけじゃない?」


「どっちでもいい。というかルハラ、俺の体を触りまくるな。くすぐったい」


「めんごー」


 ルハラは剣地の言葉に返事をした後、あくびをしながら周囲を見回した。


「あれ? いつの間に部屋に戻っていたのか?」


「ちょっと前に戻ってきたよ」


「報告は我とヴァリエーレがしておいた。報酬に関しては明日に支払うと言っていた」


「おう。分かった」


 その直後、剣地の腹から凄い音が聞こえた。


「着替えて晩飯食いに行くか」


「ええ」


 その後、剣地が着替えた後、私たちはそろって晩御飯を食べに行った。


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