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王の死


ヴァリエーレ:王の寝室前


 私たちは急いで王の間へ向かった。扉の前には数人の兵士たちが待機していて、皆うつむいていた。


「あ、皆様」


「きてくれたのですね」


 兵士の人たちは私たちがきたことを確認し、立ち上がって挨拶をした。ルハラが扉に近付こうとしたが、兵士が行く手を止めた。


「我々はここで待機との命令です」


「今、リーナ姫だけが面会を許されています」


「そうですか……」


 ルハラはおとなしく返事をし、後ろに下がった。中の様子が気になるのだろう。その気持ちは私も分かる。だけど、今は二人だけにしてあげないと。これが最後の親子の会話だから。


「我は部屋に戻る。何かあったら呼んでくれ」


「私も戻るよ。ケンジとナルセが起きたかもしれないし」


「そだねー」


 と言って、ルハラたちは部屋に戻ろうとした。その時、ティーアが私に近付いてこう言った。


「部外者の私たちは戻った方がいいかもね。一度きてくれって言われたけどさ」


「そうね」


 ティーアの言葉に返事をした後、私は兵士たちに戻ると告げてルハラたちの後を追って行った。




剣地:寝室


 うーん……何だか頭が気持ちいい……なんか、枕よりもずっと柔らかくてずっと気持ちいい。


「ちょっと剣地……剣地ってば!」


 成瀬の声が聞こえる。そう言えば、クァレバとの戦いが終わってから記憶が一切ない。というか、ここどこ?


「いい加減私から離れろ!」


「アッー!」


 成瀬に蹴飛ばされ、俺はベッドから転げ落ちた。床にぶつけた鼻をさすりながら立ち上がり、周囲を見回した。


「あれ? ここってセントラー城?」


「知らないわよ! 人の胸を枕代わりにして」


「あれ? いつの間にかお前の胸を枕にしていたのか。ごめんごめん」


 俺は何度も頭を下げて謝ったが、成瀬の機嫌はよくならない。仕方ない、あいつが喜びそうなことを言って機嫌を取ろう。


「成瀬、前よりもおっぱいでかくなってねーか?」


「そんな言葉で機嫌を取れると思うな!」


 成瀬はベッドから降り、風で俺を持ち上げ、ベッドに押し付けた。そして、俺の上に乗っかった。


「少しお仕置きするわよ?」


「止めてくれ。まだ体が痛い。いやマジで」


「おーい、起きてすぐイチャイチャかい?」


 と、にやけながらティーアがこう言った。いつの間にか、部屋の中にはルハラやヴィルソルもいた。しばらくして、ヴァリエーレさんも入ってきた。


「二人とも、イチャイチャやってる場合じゃないわ」


「何かあったのですか?」


「王様が……死にそうなのよ」


 この言葉を聞いた成瀬の顔が、一気に青ざめた。


「そんな……」


「限界だったかもしれないね」


 ティーアが声のトーンを低くしてこう言った。


「たとえ勇者でも、人の死を目のあたりにするのはちょっと辛いよ」


「ねぇ、魔力を使った治癒法でどうにかできないの?」


 成瀬がこう聞いたが、ヴィルソルはそれに対してこう答えた。


「無駄だ。魔力を使って治せるのは傷と一部の病だけだ。死にかけた者の傷や病は治ることはない」


「そんな……」


 成瀬は少し落ち込んでいた。俺は上にいる成瀬を抱き寄せた。今の俺は成瀬を慰めることしかできない。少し悔しい。




 王の寝室。リーナとリーナの父は最期の親子の会話をしていた。


「リーナ……すまないな……お前を残して……逝ってしまうことを」


「いえ……気にしないでください」


 その時、リーナの父は激しく咳き込み始めた。リーナは慌てて父の背中をさすり、少しでも癒そうとしていた。


「大丈夫ですか?」


「少し……気が楽になったよ」


 そう言うと、リーナの父は少し深呼吸をしてこう言った。


「リーナよ。まだ若いお前に王の座を譲るのは、少し早すぎるかもしれん。だが、若い分お前には成長する機会がある。王として民をまとめるのは当然だが、民とふれあい、何かを学ぶことも王として大切な仕事だ。王というのは民に慕われなければならない。よいか? 民が困った時は何が何でも助けになれ。力というのは、弱きものを助けるために使うのだぞ」


「はい……」


 この時、リーナは過去のことを思い出した。リーナの父は王として、民のためにいろいろと尽くしていた。ある時は民の仕事を手伝いし、ある時は急病の運転手に代わって配達をしたりしていた。その時のリーナの父の顔は、とても生き生きしていた。この時の光景をリーナはずっと忘れなかった。


「リーナよ……これだけは覚えていてくれ。力を自分のために使うのは絶対にするな。国があるのは王の力ではない、民がいるから国は存在するのだ」


「お父様……」


「考え方を誤ればシリヨク王国のようになる……」


「私は、絶対にそのようなことはしません。お父様のような、立派な王になってみせます!」


 リーナの父はこの言葉を聞き、涙を流し始めた。


「いい声だ……リーナ、お前はきっと立派な王になる。そして、私を超える王となる……ああ……迎えがきたようだ。これからは妻と一緒に天国で……お前を見守るとしよう……」


 リーナの父はゆっくりと息を吐き始めた。リーナはこの動きを見て、父親の手を握りしめた。


「リーナよ……最期にギルドの者へ伝言がある……娘を守ってくれてありがとうと……」


「分かりました。皆様に伝えておきます」


「頼んだぞ。では……さらばだ、リーナ……良き王となるのだぞ……」


 この言葉の後、リーナの父はゆっくりと息を吐いた。その直後、心電図モニターで映る心臓の動きが完全に止まった。


「お父様……お父様!」


 リーナは何度も父のことを呼び、涙を流し始めた。兵士たちはリーナの叫びを聞き、部屋に入った。そこで彼らはリーナの父が息を引き取ったことを確認した。




成瀬:王の寝室


 リーナ姫のお父様が亡くなった。兵士の一人が大慌てで私たちの部屋に入り、このことを伝えた。私たちは急いで部屋へ向かい、王様の亡骸に抱き着いて泣き叫ぶリーナ姫を見た。


「姫……」


 私は姫に近付こうとしたけれど、剣地が私の服の裾を引っ張った。


「少しそっとしておこうぜ。まだ、気持ちの整理ができてないと思う」


「うん」


 その後、私たちは部屋から出て、泣き叫ぶリーナ姫を見守った。数分後、リーナ姫は泣き止んだようだ。周りを見回し、私たちの姿を確認して、私の方へ歩いてきた。


「すみません……みっともない姿を見せてしまいましたね」


「みっともなくなんてないわ。大切な人が亡くなったのです。姫の気が済むまで泣き叫んでもいいのですよ」


「そうですよね……ナルセ様、暖かいお言葉ありがとうございます」


 そう言って、姫はどこかへ行こうとした。だが、泣き疲れたのか壁に寄りかさった。


「大丈夫ですか?」


「すみません……疲れたのか頭がボーっとします……」


「肩をお貸しします」


「部屋まで連れてくよー」


 ヴァリエーレさんとルハラが両端から姫の肩を抱き、部屋まで向かって行った。姫様……まだ精神的に疲れているようだけど、大丈夫かな?


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