悪人共の運命
プラチナタワーでの激闘は、翌日の新聞やニュースで大きく扱われた。内容としてはリーナを狙ったテロリストに対し、リーナが雇ったギルドの戦士が戦い、勝利したというもの。それからしばらくは、プラチナタワーは営業を停止、戦闘のせいで破壊された外壁や頂上のモニュメントの補修作業に入ることになった。
剣地と成瀬はリーナと倒したレッジとラペラを連れてヴァリエーレたちと合流した後、疲れ果てたのかすぐに倒れてしまった。その後、皆と一緒にセントラー城へ戻ったのだが、事件の翌日が経過しても、二人はまだ眠っていたのであった。
そして、剣地たちが倒したクァレバの団員は皆、セントラー王国の騎士団の手によって捕らえられた。
セントラー城の地下牢獄。クァレバの団員はここにいた。剣地たちにやられて負傷している者、元気になって騒いでいる者がいた。
「う……ん……うーん……うるさいなぁ……」
「やっと起きたか、バルサ」
と、バルサに声をかけたのはラペラだった。バルサは状況を把握し、すぐにラペラに声をかけた。
「あの後どうなったの?」
「全員捕まったよ。それで、ここにぶち込まれたよ」
「私たち……裁かれるのですね」
「そうだな。ま、死刑にはならないと思うよ」
ラペラはこう言うと、ため息を吐いた。
「まぁ、暗殺未遂事件を起こしたから、何十年かはここで住むことになるけどな」
「そう……ですね……」
バルサは肩を落とし、その場に座り込んだ。しばらく間を開けた後、バルサはラペラにこう聞いた。
「レッジさんはどこですか?」
「あの人はもうダメだ」
「ダメってどういう意味です?」
「もう人じゃないってことさ」
その時、バルサの耳に誰かの声が聞こえた。その声がレッジと分かると、バルサはすぐにレッジの元へ向かった。
「レッジさん! 無事でよかった!」
バルサはレッジの姿を一目見て、茫然とした。彼の目は上を向いていて、情けなく開いた口からはよだれが垂れている。そして、幼い子供の用にたまに手足をじたばたさせている。
「レッジ……さん……」
「モンスターソウルを使った代償でござる」
レッジの近くにいたカグワがこう言った。頭が混乱し始めたバルサは、近くにいたイングにこう聞いた。
「モンスターソウルって何ですか? いつレッジさんはそんな訳の分からないスキルを手いつの間に!」
「アジトが襲われた後だよ。私たちに黙ってスキルを取得しに行っていたらしい」
「そんな……何でこんなことを……」
「あの時いた坊主に押されていたこと、相当悔しかったみたいだよ。クソッ! あの時……私があの坊主を始末しておけばこんなことにならなかったのに」
イングは壁を叩き、こう叫んだ。バルサはレッジに近付き、頬を撫でた。だが、レッジにはその感覚が分からないようだ。
「レッジさん……嘘だ……何でこんなことに……」
人としてもう戻ることはないレッジを見たバルサは、その場に泣き崩れてしまった。
同時刻、ピレプは自室でテレビを見て絶望していた。
「そんな……クァレバの連中が負けるなんて。この辺の裏ギルドの中じゃあトップクラスの強さではなかったのか……」
その時、誰かが扉をノックした。ピレプは立ち上がって身だしなみをし、なるべく威厳があるような声でこう言った。
「誰だね?」
「騎士団のダーリュです。今、部屋に入っていいでしょうか?」
「構わん」
そう返事をした瞬間、騎士団が一斉にピレプの部屋に入ってきた。
「な……何だ、騒々しい! 一度にそんな人数で入ってくるとは、迷惑をかけているのが分からんかね!」
「迷惑をかけたのはあなたですピレプ大臣……いや、ピレプ元大臣!」
騎士団の一人がこう言った。言葉を聞いたピレプは、焦りながらこう叫んだ。
「元……元って……貴様ら、失礼ではないか! 私はまだ大臣の椅子を降りていないぞ! それに、姫亡き後の王はこの私になるのだぞ!」
「あなたに王の座はふさわしくありません」
そこに現れたのはヴァリエーレたちを連れたリーナだった。彼女の手には、一枚の紙があった。
「ピレプ大臣……いえ、元大臣! 今回の私の暗殺未遂事件について、詳しくお話を聞かせてもらいます!」
「姫の暗殺未遂? ど……どどどどど……どういうことだ? 意味が分からん」
「クァレバの団員の一人がさ、レッジとかいうリーダーが頻繁にあなたと連絡していたって言っていたよー」
ヴァリエーレの後ろにいたルハラが顔を出し、ピレプにこう言った。
「何を言うか。クァレバとか、レッジとか、私には聞き覚えのない単語ばかり出てくるではないか。もしかして、誰かが私に罪を擦り付けようとしているのではないかね?」
ピレプは焦りながら後ろへ下がり、隠してある拳銃の元へ移動していった。
「こう見えて私は忙しいのだ。用がないならさっさと出て行ってもらおう。暇人の相手はできないのだ」
そう言いながら、ピレプは拳銃に手をかけた。ピレプは最後の手段で、自分で姫を銃殺することを選択の一つに入れていた。クァレバがしくじった場合のことを考えて、この選択肢を考えていたのだ。
「さぁ帰った帰った……では姫、ごきげんよう」
ピレプは拳銃を構え、リーナ姫に銃口を向けた。だがその前に、ヴァリエーレが闇の弾丸を放ち、ピレプが持つ拳銃を破壊した。
「ガアッ!」
「連行なさい」
リーナの合図を聞き、二人の騎士団が手を怪我してうろたえているピレプを掴み、部屋から出て行った。
「これで、やっと終わりましたね」
ヴァリエーレがリーナに向かってこう言うと、返事を返した。
ティーア:寝室
ケンジとナルセはまだ眠っている。廊下の外はかなりドタバタしていて騒騒しい。きっとピレプを捕まえたのだろう。
「それにしても、気持ちよさそうに寝ているのう」
魔王が二人の寝顔を見てこう言った。魔王も私と同じように、ずっと寝ている二人を心配しているのだろう。
「かなり疲れたみたいだね。ま、起きるまでそっとしておこうよ」
私はこう言うと、ケンジの顔に近付いて、その隙にキスをしようとした。だが、魔王に止められた。
「何をやっている勇者?」
「キス。最近チョメチョメしてないからさー」
「ルハラのようなことを言うな。お前はいつから色欲魔になったのだ?」
「アジトへ向かった時、泊った宿屋でルハラと一緒にケンジと寝たのはどこの魔王さんでしたっけー?」
「何故そのことを知っている!」
「ルハラに聞いたら寝たって聞いた」
「あのエロエルフが……」
魔王はため息を吐き、二人の様子を見た。数分後、ヴァリエーレとルハラが帰ってきた。
「戻ったよー」
「二人はまだ起きない?」
「おかえりー。うん、ぐっすり爆睡中」
ヴァリエーレは二人の元へ行き、寝顔を見た。それを見たヴァリエーレは、小さく笑った。
「まるで子供みたいに寝ているわね」
「子供だしね」
と、ルハラは回転いすで遊びながらこう言った。その時、城の兵士が慌てて部屋の中に入って来た。
「申し訳ありません! 王がいる部屋へきてもらえないでしょうか!」
この慌てよう、かなり大きなことが起きたらしい。だけどクァレバの連中は全員捕まえたはず。そして、黒幕であるピレプは捕まえた。一体何が?
「また事件?」
「王の容態が急変しました……恐らく、今日が峠でしょう」
この言葉を聞き、私たちは言葉を失った。
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