魔力使い同士の戦い
プラチナタワー頂上で、斬り合いをしている剣地とレッジは、何かしらの異変を感じ取っていた。
「クッ……皆やられてしまったか」
「俺の嫁にやられたみたいだな。ザマーミロ!」
「クソガキが!」
剣地の挑発を受け、レッジは剣地を蹴り飛ばした。
「よっと」
剣地は蹴り飛ばされたが、何とか起き上がってレッジに向かって行った。
「この程度か、おっさん」
「私を舐めるなよ、小僧!」
その後、二人は大声を上げながら剣を振り上げ、走って行った。
成瀬:プラチナタワー頂上
こいつ……意外と強いかもしれない。私は周囲に火や水、雷で作った魔力の弾を作り、目の前をちょこまかと飛んでいる男に向けて放っている。だが、攻撃は相手には当たらなかった。
「おいおい、それで終わりかお嬢さん!」
男は笑いながら私を挑発している。前みたいに隕石を雨のように降らして一気に敵を倒したいけれど、この状況じゃあそんな技はできない。今はリーナ姫が捕まっているし、離れた所で剣地が戦っている。そんなことしたら敵だけではなく、剣地とリーナ姫にも被害が及ぶ。
頂上は意外と広い。東京ドーム一個分くらいの大きさだろう。落下防止のためか、隅には三メートルほどの柵があり、至る所に池のような水場がある。ただ、剣地とクァレバのリーダーが戦っているせいでいくつか壊れたようだけど。リーナ姫は頂上の中央部分にいる。魔法の縄で体を縛られ、動けない状態だ。
何か使えるものはないか? 私はそう思いながら周囲を見回した。その時。
「さーて、今度はこっちから仕掛けていくぜ!」
宙にいる男は私に向かって突っ込んできた。攻撃がくると察した私は自分の周囲に魔力の壁を作った。
「そーらそらそらそらそらそら!」
男は矢のような火を放ち、私に向かって攻撃をした。攻撃力が高いせいか、魔力の壁にひびが入ってしまった。魔力の壁が壊れることを察した私は、魔力の壁を消して攻撃の構えを取った。こうなったら反撃してやる!
「さーてと、ぶっ殺してやりますか!」
私が攻撃の構えを取ったことを知らない相手は、私に向かって突っ込んだ。
「殺すことしか考えてないの?」
私はこう言って、両手から大きな炎の渦を発した。男は炎の渦を見てびっくりしたのか、態勢を整えて逃げようとしたが、行動に移るまでが遅かったせいで、炎の渦に飲まれてしまった。
「グァァァァァァァァァァ!」
渦から男の悲鳴が聞こえる。しばらく炎の渦を出していたが、悲鳴が聞こえなくなったため、私は渦を消した。
「グググ……やるじゃねーか」
消えた渦の中から、少し焦げた男が姿を現した。強がっているようだけど、傷は受けたみたいだ。
「クァレバの魔導士、ラペラを本気にさせたようだな。あの世で後悔するなよ」
あの男、ラペラという名前のようだ。ラペラはまた宙に浮き、赤い色のオーラを纏った。
「俺の炎で消し炭にしてやる」
「消し炭になるのはどちらかしら?」
私は火の魔力を発し、ラペラに向けて放った。ラペラは私の攻撃に合わせ、同じように炎を発してきた。
炎同士のぶつかり合い。ぶつかっている所から伝わる熱が、私にも伝わってくる。力は互角。だけど、相手がどんなスキルを持っていても、私にはゼロマジックというスキルがある。
「クソ! お前もファイアーマジックゼロを持っているのか!」
この言葉を聞き、私は相手がファイアーマジックゼロというスキルを持っていることを知った。名前からして、火の魔力を使っても魔力を消費しないスキルだろう。
「さぁ、本気を出すわよ!」
私は叫び声をあげながら、炎の火力を一気に高めた。ラペラは急な火力に驚き、一瞬だけ力を弱めた。
「何!」
この直後、ラペラは再び炎に飲まれた。私は炎を消し、そこから出てきたラペラに近付いた。
「この俺がここまでやられるとは……」
「結構余裕あるのね」
あれだけ炎を受けてまだ元気であることを知り、私は少し驚いた。炎を受ける際、何かを使って傷を抑えていたのだろう。
「だけど! やっぱり俺の方が強い!」
ラペラの叫びの直後、私の周りに炎で作られた人形らしき物体が現れた。
「俺特製の魔法、ファイアーパペット! さぁ、こいつらと踊って消し炭になっちまいな!」
「炎の人形ね」
私は左手を天に掲げ、魔力を解き放った。しばらくし、私の周囲に雨が降り出した。
「水の魔力だと……何だよ、お前他の魔力も使えるのか」
「他の魔力? ええ。使えるわ」
私がこう言うと、ラペラは歯を食いしばり、私に向けて火炎球を放った。ただの火炎球かと思ったが違った。火炎球は私に当たる前に破裂し、中から煙が現れた。
「煙玉!」
私はラペラの姿を見失ってしまった。まさか、リーナ姫を狙いに行ったのか! よくよく考えれば、奴らの目的は姫の暗殺。私たちの戦いが目的ではない! 私は急いでリーナ姫の元へ向かった。
頂上の中央にいるリーナは、剣地と成瀬の無事を願っていた。
「神様……どうかケンジ様とナルセ様の無事でありますように……」
小声でこう呟くと、リーナの耳に足音が聞こえた。まさか剣地か成瀬が戦いを終えて戻ってきたのか。そう思ったリーナが振り向くと、そこに立っていたのは剣地でも成瀬でもなかった。
「さぁリーナ姫、あの世へ逝く時間ですよ」
ラペラはナイフを取り出し、リーナに飛びかかった。だが、突如飛んできた何かに衝突し、ラペラは吹き飛んだ。
「ガッハァ!」
「そんなことさせないわよ」
成瀬が走りながら、こう叫んだ。
成瀬:プラチナタワー頂上、中央部
何とか間に合った! リーナ姫は無事のようだ。よかった。
「ち……このアマァ! よくも仕事の邪魔をしやがったな!」
「人の命を奪うのが仕事? 笑わせないでよ!」
私がこう言うと、ラペラは私を睨みながらナイフを取り出した。
「このガキ! テメーをナイフで刺し殺して姫もぶっ殺してやる!」
「あんたの望む展開にはならないわ!」
私の言葉を聞いたラペラは、叫び声を上げながらナイフを構え、私に向かって走ってきた。
「死ねェ!」
ナイフで私を殺そうとしているのか。そんな攻撃が私に通用するわけがない。それに、あいつは私が魔力による攻撃だけしか使えないと思っている。
「ナルセ様!」
リーナ姫が私の名前を叫んだ。その直後、私はこっそり作った風の剣で、ラペラのナイフを吹き飛ばした。
「な……何……」
「残念ね。私は魔力以外にも、剣を使えるのよ」
「剣……だって? 何も見えねーぞ!」
「見えなくて結構。じゃあ、あんたを斬るわね」
私はラペラに近付き、風の剣でラペラを一閃した。
「ガハァッ……」
ラペラは悲鳴を上げながら宙を舞い、地面に落下した。急所を外しているから、そんな傷はないと思うが、動けないだろう。だけど、ラペラはまだ元気のようだ。しつこいわね。
「まさか……風で作った剣……じゃあ……目に見えないし、切れ味もいいはずだ……」
ラペラはその場で片膝をつき、荒く深呼吸を始めた。
「ケッ……こんな奴に……女ごときに……やられて……たまるかよ……」
「残念だけど、あんたはここでやられるのよ。さぁ、歯を食いしばりなさい」
私は周囲に各属性で作った剣を発した。私はそれらを使い、ラペラに猛攻を仕掛けた。何度も何度も斬りつけ、最後に周囲に浮かんだ剣を一本にまとめ、強烈な一閃をラペラにお見舞いした。
「グハァァァァァ!」
猛攻を受けたラペラは大声で悲鳴を上げ、その場に倒れた。うーん……ちょっとやりすぎたかな。まぁいいや、姫が無事だし。
「姫、無事ですか?」
「あ……あばばばばば……」
リーナ姫は私の姿を見て、何故か怯えていた。
「どうかしましたか?」
「血が……ナルセ様が血で……」
「血?」
どこか怪我したのかな? そう思った私は服を触ってみた。すると、手にはヌメッとした感触がした。
「あの……もしかしたら返り血で……」
どうやら、私がラペラに剣で猛攻を仕掛けている際に、奴の返り血を浴びていたようだ。
「あ……驚かせてしまいすみません」
私はリーナ姫に詫びの言葉を言うと、急いで返り血を拭いた。
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