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何よりも強き刃


ティーア:プラチナタワー前


 カグワが持つ刀、クモキリの切れ味は恐ろしい。いくら魔力で防御力を高めていても、スパッと斬れてしまうだろう。


「きええええええええええい!」


 カグワが奇声を上げ、私に向かって突っ込んできた。クモキリを上に構えているから、振り下ろすつもりだろう。私はそう考え、隙だらけの胴に向かって光の弾丸を放った。だが、カグワは素早い動きで光の弾丸を切り落とした。


「甘い! 甘い甘いあまァァァァァい! そんな攻撃で拙者を倒せると思ったのか?」


「うるさいなー。もう少し静かに戦えないの?」


 私がこう文句を言うと、カグワは私に向かって飛びかかり、そのままクモキリを振り下ろした。攻撃を察した私は間一髪その攻撃をかわし、カグワに攻撃を仕掛けた。


「そうくると思っていたわ」


 地面に着地した状態で、カグワはジャンプしながら回転斬りを放った。そのせいで、私の左腕がクモキリの刃に命中した。


「イツツッ!」


 思ったより傷は深い。腕から出る血が止まらない。すぐに傷を治したいけど、カグワが襲ってくる。


「手負いの剣士など、拙者の敵ではない。その首、拙者がもらったッ!」


 どうやら私を倒そうとしている。そんなことはさせない。仕方がない、少し本気を出そう。


「ハァッ!」


 私は掛け声とともに、剣を振り上げた。金属音がぶつかる音が短く響き、しばらくして遠くの方で何かが落ちる音がした。


「クッ……まだそんな力があるのか……不覚!」


 カグワは右腕を抑えてこう言った。今、私が斬ったのはあいつの右手。狙い通り攻撃はあいつの右手に命中。そのせいで、奴の右手からは血が流れている。さらに私の攻撃はクモキリにも命中し、攻撃の反動で遠くに吹き飛ばしたのだ。


「さて……覚悟はいいかい?」


 私は立ち上がり、カグワに向けて剣を突き付けた。カグワは震えながら、小さく呟いていた。


「拙者は強い。拙者は強い。拙者はこの世界で最強の剣士。雑魚相手に負ける剣士ではない。何故なら、拙者はこの世界で最強の剣士だから!」


 カグワはこう叫ぶと、私を足払いで転倒させ、その隙にクモキリを手にしてしまった。


「フハハハハハ! これで再び拙者の有利なり! さぁ、このまま貴様をあの世へ送ってやろう。世界最強の剣士の手で、あの世へ逝くことを光栄に思うがいい!」


「世界最強ねぇ」


 くだらない。何が世界最強の剣士だ?


 戦って分かったことがある。まず、クモキリの切れ味。あいつの一撃を喰らったら本当にまずい。そして、カグワの剣の実力は一流ではない。剣術を習って一年にも満たない見習いレベルだ。多分、クモキリの切れ味に任せて刀を振り回しているだけかもしれない。これが分かれば、対策は簡単に練れる。なーんだ、思ったより弱そうな奴ね。


「世界最強さん。まず私の腕を斬ったことを褒めてあげるわ」


 私はカグワに向かってこう言った。すると、カグワは笑いながらこう言った。


「フン! 何を言うか小娘」


「だって、あなたは勇者の腕を斬った男だから」


「勇者……」


 私の正体を知り、カグワは腹を抱えて笑い始めた。


「そうか、拙者は勇者を斬ったのか! いやー、さすが拙者! 自分で自分が恐ろしい!」


「恐ろしいのはあんたの性格よ」


 私の言葉を耳にしたのか、カグワは笑うのを止めた。


「拙者の性格が恐ろしい?」


「何が世界最強だよ。あんたが強いのはその刀のおかげだよ。そこまで自分が強いってうぬぼれている奴、始めて見たよ」


「何だと?」


「はっきり言うよ。あんたの剣技は素人以下!」


「素人以下だと……貴様はその素人以下に腕を斬られたのだぞ!」


「まーねー。でも、魔力があればこんなのすぐ治るよ」


 私はそう言うと、斬られた腕を治療し始めた。


「お主、わざと会話をして時間稼ぎを」


「それもあるよ。だけど、あんたに伝えたいことがある」


「何だ?」


「くだらない自己満足で刀を振り回すな!」


 私の言葉を聞き、カグワは狂ったように笑いながら、私に向かってきた。


「何を言うか! 拙者は戦うために刀を振るう! 戦いに勝つために刀を振るう! そして、敵を殺すために刀を振っている!」


「そんなことしか考えてないから、あんたは弱い!」


 私は剣を構え、魔力を刃に込めた。すると、刃の周りに光のオーラが発した。


「今から本気出して戦うよ。あんたみたいなやつに負けたくない」


「ほざくな、青二才! あの世で拙者に戯言を言ったことを後悔するがいい!」


 カグワは叫びながら再び私に向かって走ってきた。


「死ねェ!」


 構えたクモキリを高く振り上げ、私に向けて振り下ろした。それに対し、私は剣を振り払ってカグワの攻撃を払った。


「ぬぅっ!」


 クモキリを払った際に発生した重い衝撃が、カグワの手に伝わったようだ。あいつの手の傷は治っていない。もう少しあいつを動揺させよう。


「手の怪我、治ってないのね。少し手加減してあげようか?」


「ふざけたことを言うな」


 怒ったカグワはクモキリを振り回し始めた。だが、所詮青二才剣士の滅茶苦茶な攻撃、剣の軌道は分かるし、次の相手の行動も分かる。次の行動は、やけになって再び剣を構え、私に襲ってくる。


「お主だけは許さん! 確実に拙者のクモキリであの世へ送ってやる!」


 予想通り。やけっぱちになった相手の攻撃なんて、経験を積んだ戦士なら簡単に分かる。プライドをズタズタにされ、相手は相当怒っている。こうなったら、私が勝つのも目に見えている。


「じゃあ終わりにしようか。次があるかどうか分からないけど、もう少し経験積めばいい戦士になると思うよ」


「次? 今からお主は拙者に斬り殺されるのだぞ? 次なんてないぞ!」


 カグワは私に接近し、クモキリを振り上げ、勢いよく振り下ろした。この動きも察していた。さて、そろそろこの戦いを終わらすとするか。


「ハァァァァァ!」


 私は相手の攻撃に合わせ、剣を振り上げた。光のオーラを纏った一撃は、とんでもない破壊力だ。私の耳に、激しい破裂音が聞こえた。


「そ……そんな……拙者のクモキリが……」


 カグワはクモキリを見て、嘆いていた。今私が斬ったのは、クモキリの刃。折れた刀はもう使えない。


「覚悟決めなよ。こいつの一撃は恐ろしいよ」


 私は再び剣を構え、カグワを一閃した。


「か……ガハァ……」


 カグワは短い悲鳴を上げ、その場に倒れた。私は剣をしまい、軽く深呼吸をした。その後、魔力を使って周囲を探った。どうやら魔王の方は戦いが終わったようだ。だけど、ヴァリエーレとルハラの戦いは終わってないようだ。ケンジとルハラはあの高い塔を飛んだまま、戻ってこない。二人が大丈夫だといいけれど。




ルハラ:プラチナタワー前


 んー。この女の人、この前戦った時よりも顔が怖い。


「そんな怖い顔しないでよー。私が何をしたのさー?」


「テメーは自分が何をしたか覚えてねーのかこの女ァァァァァ!」


 うーん……私がそんなにあれしたこと、怒っているのかな?


「あなたにあれやこれしたことをまだ根に持っているの? 気持ちよくなっていたのに」


「うるせェェェェェ!」


 女の人は怒りながら、私に向けて剣を振り下ろした。うーん。こりゃ相当根に持っているな。仕方ない。今回は本気で相手しよう。戦いも、セクハラも!


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