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邪神が飛びだった後で


ヴァリエーレ:神殿外


 突如大きい音が聞こえた。それと同時に神殿から何かが突き出て空を飛んで行った。早いスピードだったため、あれが一体何なのか分からずじまいだった。


「なんかすごい音がしたけれど……」


「ルハラも聞こえた?」


「うん。なんか嫌な予感がする。私、神殿の中に行ってくるよ!」


 嫌な予感がすると言ったルハラは、急いで神殿の中へ入ろうとした。私はルハラを止め、落ち着かせるようにこう言った。


「思い出して、ティーアとヴィルソルが中に入ったでしょ? 二人が戻ってくるのを待ちましょう!」


「待てないよ! こうしているうちにケンジとナルセがイエミツの野郎と戦っているかもしれないんだよ! ヴァリエーレは二人のことが心配じゃないの!」


「私も心配よ! だけど、まだ力も魔力も不足している状態の私たちじゃあ何の役に立つのよ!」


 私の声を聞き、ルハラは大人しくなった。私もルハラと同じ気持ちだ。本当だったらすぐにでも行きたいが、まだ力も魔力も完全に回復していない。もし、ロストジャスティスの連中と遭遇して戦いになったら生きてはいないだろう。


「分かった。私、あの人にセクハラして待っているよ」


 反省しているのかしてないのか分からないけど、真剣な目でとんでもないことを言ったルハラは重い足取りで小屋に戻った。しばらくして、敵の女の轟くような悲鳴が響いた。激しいセクハラを受けているのだろう。




ヴィルソル:神殿内


 地震のような揺れが発生したが、落ち着いたようだ。我と勇者は揺れが完全に収まった後、周囲を調べた。


「見て魔王、罠が起動してないよ」


 勇者が道にある罠を指さしこう言った。神殿内には罠があって、心臓を狙う者の命を奪っていた。この罠のせいでロストジャスティスの団員は命を落としていった。犯罪者の命だし、まぁこんな最期を迎えるのは自業自得と言える。今はこんなことを思っている場合じゃない。罠が止まっているとしたら、この奥で何かが起こったのじゃろう。


「勇者、何かが起きたことに間違いはない。武器を持って用心しろ」


「うん」


 その後、我と勇者は武器を持って歩き始めた。しばらく歩いていると、ケンジたちが戦ったと思われる場所に到着した。炎の魔力を使ったのか、周りの壁や床、天井には火を受けたのか焦げている箇所があり、他には何かがぶつかったのか一部壊れた個所があった。それと、部屋の中央にはロストジャスティスの団員らしきミイラが転がっていた。ミイラなんてものはなかったはずじゃ。


「なんか変なスキルでも使ったのかなー?」


「丁重に扱えよ、勇者。ロストジャスティスの罠かもしれんからな」


 勇者はそのミイラを持ち上げて調べようとしたのだが、その途中で手を滑らせて落としてしまい、粉々になってしまった。


「あらま。粉々になっちゃった」


「何があらまじゃ。丁重に扱えと言ったじゃろうが」


「ごめーん。手が滑っちゃった」


「こんなバカをやっている暇があったらケンジたちを探すぞ。そっちが大事じゃ」


「その必要は……ないぞ……」


 突如、オノブさんの声が聞こえた。無事だったのかと思って喜んだのだが、声が弱弱しいことに気付き、喜んでいられないと我は思った。声のした方へ向かうと、そこにはボロボロになったオノブさん。そして腹から血を流してぐったりとしているケンジとナルセの姿があった。その姿を見た瞬間、我と勇者は急いで回復を始めた。


「わしも……残った力で治療をやってみたんじゃが……まだ……完全には治っておらぬ……」


「治癒してくれただけでもありがたい」


「だけど……酷い傷。一体何があったの?」


「休んだら話す。悪い内容の話じゃから……覚悟しておいてく……れ……」


 オノブさんはそう言い残した後、気を失った。オノブさんもかなり酷い傷を負っているため、かなり激しい戦いがあったんじゃろうと我は思った。その後、我と勇者で力を合わせ、傷を負ったケンジたちを外へ連れ戻した。




ヴァリエーレ:神殿外


 ティーアとヴィルソルが外に出られたのは中に入ってから一時間近く時間が経過した後だった。神殿の奥でかなり大きな戦いがあったらしく、ケンジとナルセ、そしてオノブさんは重傷を負ったようだ。ケンジたちはすぐにベッドに運ばされ、村長の呪文で治療を受けることになった。三人が完治するまで、村長の家で絶対安静だという。


「オノブさんは悪い内容の話があると言っている」


「多分……イエミツの奴が邪神の心臓を手にした話じゃないのかな?」


 神妙な顔でティーアとヴィルソルがこう言った。もし、あの時私が見た神殿から飛び上がる影の正体がイエミツだとしたら、その可能性が高い。ケンジとナルセは邪神の心臓を手にしたイエミツに挑み、やられた。


「オノブ様があそこまで追い込まれるとは……」


「邪神の力、恐ろしいですね」


 今回ばかりはニッコーさんとタトミさんも不安な顔をしている。オハリのメンバーの中で、一番オノブさんが強かったから、邪神の力のすごさを再認識しているのであろう。


 それからしばらく誰も喋ることはしなかった。聞こえているのは、ルハラの腹いせでセクハラを受けているロストジャスティスの女の声だけ。私は心の中でどうすればいいのかとため息を吐いていると、村長が小屋に入ってこう言った。


「オノブさんが目覚めたぞ。ただ、あの二人の治療はまだかかりそうじゃが」


 この言葉を聞き、タトミさんとニッコーさんはホッとしたような顔をした。ひとまず、オノブさんが回復したのは一安心かな。でも、ケンジとナルセは大丈夫かしら……。


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