成瀬VSズルーオ
ヴィルソル:神殿内
少し休んだおかげで、魔力と体力がかなり回復した。ただ、これ以上進むことは不可能だ。戦いになっても、我はケンジたちの足手まといになることが目に見えている。何もできないと察して悔しいが、ここは戻ってしっかり休むのが先決じゃ。
そう思って我はきた道を戻っていると、壁に背もたれて休んでいるタトミさんとニッコーさんの姿が見えた。
「タトミさん! ニッコーさん!」
「あ、ヴィルソル殿。無事のようですね」
「無事じゃったか。よかったー」
「我も同じことを思っている。二人が無事でよかった」
少し怪我があるようじゃが、無事みたいじゃ。我は二人と合流し、話をした。二人も幹部を倒し、その最期を見届けたらしい。
「今回の戦いはかなりきつかったです。あんなに苦戦するとは思ってもいませんでした」
「ヴィルソル殿の言う通り、ここは先に進むより、一旦戻って休んだ方がいいですね」
「先の敵はオノブ様たちに任せましょう。上司に頼るのは少し情けないですが、体力も魔力もない今、そうするしかありません」
「勇者も入口にいるはずじゃ。魔力は多少感じるが弱い。早く戻って合流しよう」
その後、我はタトミさんとニッコーさんと共に神殿の出入り口へ向かった。その時、奥の方からとんでもなく強い魔力を感じた。この魔力はナルセの物だ。一体どれだけ強い奴を相手に戦っているのじゃ?
成瀬:神殿内、邪神の心臓部屋前
銃を持った男は部屋を走りながら私に向かって銃を放っている。魔力を纏った弾丸のため、弾丸を自由に動かすことができる。爆発させたり、急に止まったと思ったら急に動きだしたり。もう何でもありだ。私のバリアで何とか防げるが、かなり威力が高いため、バリアにひびが入る。
「ハーレムパーティーの最終兵器、ナルセ。噂通りの魔力を持っていやがる。俺の弾丸を受けてもバリアを壊せない。いつもなら壊せるのに……これだけ強い奴と戦うのは初めてだ」
男の言葉を聞く限り、あの弾丸はバリアを破壊するほどの威力があると思われる。しかし、私の魔力の前ではひびしか入らないようだ。
「焦るなよ、ズルーオ。こうなったら魔力で戦え。それしか方法はない」
と、オノブさんと戦っている男がこう言った。ズルーオと呼ばれた男は銃をしまい、魔力を開放した。
「しゃーねーな。クーマの言う通り、魔力で戦うか!」
ズルーオは銃よりも魔力で私と戦うことに切り替えたようだ。そう思っていると、ズルーオの右手から炎、左手から雷が発した。
「燃えて死ぬか、感電して死ぬかどっちか選びな!」
「やれるものならやってみなさい。ちっぽけな魔力が私に通用すると思わないで」
私は返り討ちにしてやろうと思い、左手に闇を発した。これでズルーオが放つ炎と雷を消そうとしたのだが、ズルーオは高く飛び上がって闇をかわし、直接私に向かって走り出した。
「悪いな、俺は銃だけじゃなくて体術もできるぜ。甘く見るなよ」
「あっそう。私も魔力だけじゃないわ。剣も使えるのよ!」
接近戦になると予想した私はすでに剣を装備しており、飛び越えてきたズルーオの攻撃を受け止めた。そしてそのまま後ろに飛ばした闇に向かって吹き飛ばそうとしたのだが、その考えに奴は気付いたらしく、途中で踏ん張って動きを止めた。
「恐ろしい娘だ。この俺を闇で消そうとしやがったな」
「しぶといわね。やはり有名所の悪党は、他の所より悪知恵が働くのね」
「褒めるなよ。褒めても何もやる物はないぞ。残念だったな」
「別にそうでもないわ。あんたから何もほしくないわよ」
そんな言葉のやり取りをした後、魔力で作った炎の剣と雷の剣の二刀流となったズルーオと剣の戦いを始めた。ズルーオの二刀流は素早い動きと隙のない剣の技で攻撃するタイプだが、攻めるだけで守りが薄い。ただ、私も一本の剣しか持っていないが、二刀流に対しての対処法も一応心得ている。ソードマスターのスキルを持っているせいだろう。
「クッ、ちょこざいな!」
激しい動きを続けて少し疲れたのか、ズルーオは攻撃を止めて後ろに下がった。狙うなら今だ。私は下がったズルーオに急接近し、剣に魔力を込め、ズルーオの両手の剣を叩き壊し、そのままズルーオの体を二回斬り付けた。
「グッガァァァァァ!」
攻撃は通ったが、傷は浅い。剣が思ったより奥深く入らなかったようだ。傷を負ったズルーオは腹を抱えながら後ろに下がり、銃で私に攻撃をした。
「ウッ!」
何かするだろうと読んでいた私はバリアを張って奴の弾丸を防御したが、距離があまりにも近すぎた。ズルーオの弾丸は私のバリアを貫通し、左肩と左足の太ももを打ち抜いた。
「ガウッ!」
思わぬダメージを受け、私は短い悲鳴を上げた。左肩をやられたのはいいが、左足をやられたのはまずい。下手に動くと傷が広がる!
「ヘヘッ……ザマーミロ……グゥッ」
ズルーオも私からの一閃を受け、かなり深い傷を受けたようだ。回復する時間があれば、ズルーオも腹の傷を治すだろう。しかし、この足と肩の傷をどうにかしないと私自身も動けない。このまま勝負を付けたいが……仕方ない。ここは回復しよう。
「ケッ、俺と同じことを考えたな」
「変な所で気が合うわね。あんたみたいな裏ギルドの奴と気なんて合いたくないけど」
「俺も同じことを考えていたよ」
互いの回復が終わった後、すぐに攻撃へ移った。ズルーオが銃を撃ち続ける中、私は剣で弾丸を叩き落としながら奴に接近し、もう一度腹に大きな傷を与えようかと思った。だが、そう簡単にうまく行かないようだ。私の目の前にズルーオが操った無数の弾丸が迫ってきた。
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