ピーギュの真の力
剣地たちより先に神殿内に入った家光は、後ろからの魔力を感じて呟いた。
「結構激しい戦いですねー。魔力が花火のように音を出していますよ」
「そんなことを言っている場合か。お前のダチの魔力が消えたぞ」
「ま、しょうがないですね。生きていればまた会えるでしょう」
「こんな時でもあんたは冷静だな……」
と、幹部の一人が家光に言葉を返した。その時、別の魔力を感じて幹部は驚いた。
「ピーギュ……かなり強い奴と戦っているのか」
「みたいですねぇ。死ななければいいですけど」
「死なないさ。ロストジャスティスの幹部はそう簡単にやられない」
「一人死んだみたいですけどね」
家光の言葉を聞き、幹部たちは言葉を失った。その時、ボスがゆっくりとこう言った。
「ラメトのことは仕方あるまい。敵が悪かったか、運が悪かったかだ。いずれにせよ、俺たちはあんたの頼みごとを解決しなければならないのだ。死んだ仲間もいるが、仕事だけは達成しなければ」
「そうですね。では、最後までよろしくお願いします」
そう言いながら、家光は笑顔でボスを見た。幹部の一人は家光の笑顔を見て、少し不気味に思った。
タトミはピーギュが放った電撃の刃を自身の刀に吸収させ、跳ね返すように斬撃を放った。この一撃で終わってくれとタトミは願ったが、その願いを打ち砕くようにピーギュは魔力を開放させ、解放した衝撃で斬撃を破裂させた。
「グゥゥゥゥゥ! こんなもんで俺を倒せると思ったか! 考えが甘いんだよ!」
「チッ、失敗してしまったか! かなりタフな奴じゃ!」
「今度はこっちの番だ、俺を本気にさせて……後悔するなよ!」
ピーギュはそう言うと、足に電撃を溜め、爆発するように移動した。
「早い!」
タトミはすぐに刀を使って防御をしようとしたのだが、予想以上のピーギュの早さをとらえきれず、防御はできなかった。その結果、タトミの腕や足から切り傷が発生した。
「タトミ殿!」
「ニッコー殿! 気を付けてください、次はあなたが狙われます!」
タトミの言葉を聞き、ニッコーは慌てて飛び上がった。宙にいれば相手も飛んでこないだろうと思っていたのだが、それより先にピーギュは飛び上がっていて、ニッコーの後ろに回っていた。
「さっきのお返しだ! くたばれ!」
ピーギュはそう言うと、ニッコーを地面に向けて強く蹴り飛ばした。
「ハーッハッハッハッハ! ロストジャスティスの幹部を甘く見るなよ!」
傷を負って倒れている二人に向かって、ピーギュは勝ち誇ったかのように大声で笑い始めた。タトミは呼吸をしながら地面に埋まっているニッコーを救い、小声でこう話した。
「このダメージは予想以上ですね」
「ええ、電気の魔力を利用して自身の速度を上げて攻撃する奴か。かなり速いし、厄介ですね」
「ですが、何かしら弱点があります。早く弱点を見つけましょう」
「それまで、お互いくたばらないようにしましょう」
「はい。ん、構えてください。奴がきます」
二人が話をしていると、割り込むような形でピーギュが突っ込んだ。直感でピーギュが攻撃を仕掛けてくると察した二人は後ろに飛んで攻撃を回避し、刀を握った。
「防御するつもりか? 反撃するつもりか? 無駄だぜ、俺の動きをとらえない限りなァァァァァ!」
そう叫ぶと、ピーギュは再び魔力を開放して足に電気を発生させ、目で追えないほどの速度で攻撃を始めた。
奴がくる!
心の中でそう叫んだタトミは少しでも敵の弱点を見切ろうと思い、目を開いて動きを読もうとした。しかし、タトミの努力もむなしく再び攻撃を受けてしまった。次に傷を受けたのは脇腹。こうやって相手をいたぶった後、殺すつもりなのだろうとタトミは察した。
これ以上ピーギュの好き勝手にはさせてたまるかとタトミは闘志を燃やした。その時、あるアイデアをタトミは思いついた。一か八かの賭けだが、やってみようとタトミは思い、口を開いた。
「趣味が悪い男だな……わざと相手を痛めつけて、苦しませた後に殺すのか……」
「その通り。無礼な奴には似合いな最期だ」
「無礼な奴か……それはお前のことなんじゃないか? 年上にはそれなりに敬意を払うものだぞ。私たちは若く見えるが、エルフであるためそれなりに年齢を重ねている。年寄りはもっと丁寧に扱えよ、無礼で尻の青い若造が」
タトミの言葉を聞き、少し苛立ったピーギュはさらに魔力を開放した。
「その口永遠に黙らせてやるよ。雑魚のおっさんが強がるものじゃないぜ! さっさとくたばれ!」
わざと相手を挑発するタトミを見て、ニッコーは不安になった。まだピーギュの弱点が見つかってない今、わざと相手を挑発させるのは危険な行為だとニッコーは思っている。
「タトミ殿、今は相手を怒らせてはいけません! 相手が余計力を使います!」
「仲間のサルの方がよっぽど利口のようだな! 褒めてやるよ、テメーは最後に始末してやる!」
「いーや、お前がニッコー殿に始末される!」
最初、ニッコーはこの言葉を聞いて何を言っているのだと思った。しかし、タトミがニッコーの方を見て笑顔を見せた時、ニッコーはタトミがどんなことを考えているか把握した。
「さぁ、始末してやるよ! クソ野郎がァァァァァ!」
ピーギュは足元の電撃を爆発させ、猛スピードでタトミに迫った。その隙を狙い、タトミは足元にクッションのような物を発生させた。それを見たピーギュは驚き、動きを止めようとした。しかし、動きを止めることはできず、クッションにめり込んでしまった。
「く……クソが! こんなものを作りやがって!」
「おやおや、何とも間抜けな姿ですなぁ」
と、後ろからニッコーが刀を持って迫ってきた。やられると思ったピーギュはすぐに動こうとしたのだが、その前にニッコーはピーギュに向かって刀を振り下ろした。
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