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守り手リュッセとの手合わせ


成瀬:神殿前


 うーん、なんだか変な展開になってしまった。私たちの実力を見るために神殿の守り手であるリュッセさんと剣地が戦うことになってしまった。私はヴァリエーレさんの方へ寄って、耳元でこう言った。


「いいんですかね? 剣地が女の子とまともに戦えるとは思わないのですが」


「私もそう思うわ。だけど、向こうがやる気満々だから何とも言えないのよ」


「剣地の方も少しやる気があるみたいですよ。訓練用の剣で怪我はしないと言ってもどうなるか……」


 私とヴァリエーレさんが話していると、ルハラの声が上がった。


「おーい、戦いが始まったみたいだよー」


 嘘でしょ、あの二人はもう戦いを始めているの! 私とヴァリエーレさんは急いで剣地とリュッセさんの方を見た。二人とも本気で戦っているかのように剣を振り回しているし、剣地も魔力を発して運動神経を上げている。もう、どうなっても私知らないからね!




剣地:神殿前


 この大陸の人たちはかなり強い。ヤーウのぶっ飛んだ戦闘能力を見て思っていたのだが、この大陸の人たちは毎日とんでもなく強いモンスターと戦っている。中にはボーンアレクスのようなどでかい化け物もいるし、おっかないジャングルを歩く中で恐ろしいモンスターや植物と戦うこともある。そんなこともあってか、ヤーウは俺たち並みの戦闘能力を持っているのだろう。


 そして、俺が予想した通りにリュッセさんもヤーウ並みに戦闘能力が高い。剣の腕も多分俺以上だ。ソードマスターのスキルは使ってなさそうだ。多分、我流の剣術を使っているのだろう。どの攻撃も俺の予想を大きく外す。ソードマスターのスキルでも攻撃を見切ることは難しい。


「ハァッ!」


 リュッセさんは剣を振り上げ、そのまま勢いを付けて俺に振り下ろしてきた。俺は防御して反撃しようと考えたが、その直後に考えを見直した。さっきまで見切ることができない攻撃を仕掛けてきたのに、この攻撃だけは簡単に見切ることができた。だとしたら、これは罠だ。リュッセさんはわざと攻撃を外して相手を油断させ、その隙に相手に一撃を与えようとしているのだ。


「セアッ!」


 掛け声を発しながら、リュッセさんは俺の脇腹に向かって剣を振るった。何とか防御しようとしたのだが、無茶な姿勢で防御をしてしまった。右腕一本で剣の刃を下に向けて受け止めたのだが、重い一撃は俺の脇腹に命中した。もし、これが本当の剣だったら刃が脇腹にめり込んでいただろう。


「グ……」


「おいおい、君は私のことを女と思って甘く見ているのか?」


「いや……見たことのない剣技だから……どう対処すればいいのか分からないんだよ」


 俺は脇腹をさすりながらリュッセさんに言葉を返した。俺が言った言葉は本当だ。見たことのない剣技を見て動揺している。一度、防御に回ってリュッセさんの動きを観察し、どうやって対策するか考えようと思ったのだが、リュッセさんの攻撃は考える隙を与えなかった。素早い動きで翻弄され、たまに挟まれるフェイントで隙が生まれる。そんな流れのせいか、俺はかなり攻撃を喰らってしまった。


「ハァ……ハァ……」


「体力はあるようだが、まだ私の攻撃を見切ることはできていないようだな」


 すげぇ……とんでもない速さで猛攻を仕掛けているのに、リュッセさんは息一つ乱れていない。俺は何とか立ち上がり、剣を握ってどうしようか考えた。


「考える隙は与えないぞ」


 やっぱり隙を与えてくれないか。リュッセさんは猛スピードで俺に接近し、何度も剣を振るった。不規則な剣の攻撃は俺の思考を鈍らせてぐちゃぐちゃにさせた。これだけ滅茶苦茶な剣技は初めてだ。まるで子供が剣を振るうかのような動きだ。子供が剣を振るうかのような? 俺はそう思うと、あることを考えた。


「むっ」


 どうやらリュッセさんは俺の異様な動きを察して止まったようだ。俺はその場に立ち止まり、剣を握った。それまでは普通の動きだが、今の俺はリュッセさんの動きをじっと見つめている。


「どうした? 私をじっと見つめて。惚れたのか?」


「観察中だよ。あと少しであなたの動きを攻略できそうなんでね」


「ほう。どうやって私の動きを突破するか楽しみだな!」


 リュッセさんはそう言って俺に接近した。そして、先ほどと同じように変わった動きで剣を振るった。その時、俺はリュッセさんの腕に目がけて剣を当てた。


「いった!」


 よし。攻撃は命中した。俺の攻撃が通用したのか、リュッセさんは剣を落としてしまった。戦いを見ていた村長もリュッセさんが攻撃を受けたことに驚き、目を開いていた。


「何と、リュッセに一閃を食らわせるとは」


「フッ……やるではないか。だが、どうして私の剣技を見切ることができた?」


「子供のような動きだったからさ。確かに剣の動きは早いけど、剣を握る手の腕は初心者みたいな動きだった」


「子供のような動きか。これでも、一応考えて剣を振るっていたのだが」


 リュッセさんは剣をしまうと、俺に近付いてこう言った。


「もし、本当の剣で戦っていたらお前は怪我だらけになっていたか、命を落としていた」


「はい……確かにその通りです」


 リュッセさんの言う通りだ。動きを見破るまで俺は何度も攻撃を受けた。もし、本当の剣だったら血塗れになっていたか、死んでいた。


「私に一太刀を浴びせたのは見事だ。だが、まだまだ甘いようだな」


「うーん……ちょっと悔しいなー」


 一応褒められてはいるが……何だか負けたような気分だ。それにしても、リュッセさんは本当に強かった。魔力も何も使っていないのに、あれだけの強さを持っているとは本当に恐れ入った。


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