剣地の敗北?
剣地:アジト近く
周囲に響いていた激しい音が、少しずつ収まって行く。ルハラとヴィルソルの戦いが終わったのだろうか? すぐに二人と合流したいが、今はそれどころじゃない。
俺は木の陰に隠れながら移動をしている。拳銃を構え、いつあの男に向けて発砲できるように準備をしている。マガジンに弾丸代わりの魔力はたっぷり詰め込んだし、これで何度でも撃ってやる!
「どこだ! 坊主!」
おっと、あいつの声が聞こえた。ナチュラルエアを使っているおかげで、俺の気配は相手には察することができない。このまま撃って終わりにしてやる。
あいつが俺の後ろを通り過ぎた時、俺は木の陰から出て、銃を発砲した。
「そこか!」
何! この一瞬で俺の気配がばれたのか? しかも、剣を一振りしただけで弾丸を落としやがった!
「ナチュラルエアを使っていたとは。おかげで見つけることはできなかった。が、そちらから出てきてくれたおかげで、やっと見つけたよ」
あいつは剣を構えてこう言うと、少し笑ってこう言った。
「切り刻んでバラバラにしてやる」
その直後、相手は猛スピードで俺に突っ込んだ。相手の斬撃をギリギリで回避し、俺は剣と盾を装備した。
「剣と盾か……銃だけではないのか」
「そうだ。文句あっか?」
「特にない。今から殺す坊主の戦闘スタイルを知ったところで、何も得もしないからな」
「そうですか」
相手は再び、俺に向かって突っ込んだ。俺に接近したと同時に攻撃を仕掛けるつもりだ。俺は盾を前に出し、相手の攻撃を防御しようと考えた。だが、相手は俺の目の前で高く飛び上がり、俺の背後へ回った。
「そのまま攻撃すると読んでいたのか?」
「そんなわけねーだろ」
俺はこの時、相手がどんな行動をするか考えていた。
一つ。そのまま俺に攻撃する。
二つ。防御を崩すために足元へ攻撃する。
三つ。手っ取り早く殺すために背後へ回って攻撃する。
この三択のうち、一つが当てはまった。もちろん、それに対しての対策も考えてある。
「甘いのはお前じゃねーの?」
俺は後ろへ飛んで相手との距離を開け、刃に魔力を込めて剣を振り下ろした。振り下ろした際、刃に込められた魔力が刃となって、相手に飛んで行った。
「魔力を使った剣技か。その位、私もできるぞ!」
相手は二本の剣を振り下ろし、交差状の魔力の刃を発生させた。俺が発した魔力の刃とぶつかり合い、周囲に激しい風が発生した。
「威力は同等……少し厄介な相手だな」
「口を動かしても、手が動いていないとやばいことになるぜ、おっさん」
隙だらけの相手に対し、俺は一気に接近して攻撃し、勝負を付けようと思った。だが、相手は左手の剣で俺の攻撃を防御してしまった。
「そちらから動いてくれたのはありがたい。いろいろと手間が省けた」
相手は俺の足を剣で刺した。奥深く刺さったせいか、足から体中に激痛が走った。
「ぐううっ!」
「これで貴様の足は使えないはずだ」
剣が抜かれ、刃から流れる血が俺の頬や服に飛び散った。相手は刃に付いた血を振って落とし、俺に剣を向けてこう言った。
「さぁ、始末するか」
「こんな所で死んでたまるか!」
俺は足の激痛を我慢し、立ち上がって反撃を行った。相手は俺の行動を見て驚き、俺の反撃を受けた。
「クソッ! あの傷を負っても動けるというのか!」
俺の反撃は相手の頬に命中した。頬から流れる血をぬぐったのだが、傷が深いせいか、また血が流れだした。
「俺の顔に傷を付けたな……」
「自分の顔に自信でもあったのか? あまりかっこよくねーぞ」
「クソガキが……」
こんな安っぽい挑発に乗るか普通? 相手は逆上し、俺に襲い掛かった。だが、怒りで我を失ったせいかどうか分からないけど、動きがかなり単純になった。俺は攻撃をかわしつつ、隙を見て反撃をしていった。何度も反撃をしたせいか、相手はかなり傷ついた。
「グウッ……はぁ……はぁ……」
「さて、これで終わりにしますかね」
俺は相手に近付き、捕獲しようとした。だが、遠くから何かの気配を感じた。そこで俺の意識は途切れた。
急に血を流して倒れた剣地を見て、レッジはにやりと笑った。
「よくやったぞ、イング」
レッジがこう言うと、遠くからスナイパーライフルを持った女性が現れた。
「よくやったぞ、じゃないですよ。あなた、傷だらけじゃないですか」
「すまない、油断をしていた」
イングはため息を吐き、ライフルの先端を剣地の頭に付けた。
「このまま頭を吹き飛ばします?」
レッジは周囲を探り、イングにこう答えた。
「この坊主は足を負傷している。それに、お前の一撃で臓器の一つは潰れただろう。もう戦えないはずだ」
「生かしておいて平気ですか?」
「次襲ってきたら、必ず始末するさ。今は団員たちの救出を優先してくれ」
「その前にあなたを治療します」
イングはそう言うと、レッジを治療し、その後で仲間の救出を行った。
ヴィルソル:アジトから離れた河辺
ケンジの魔力が消えた? さっきの銃声は、敵が撃ったものなのか? 嫌な予感がする。
「ヴィルソル!」
ルハラが闇のドームを解除し、我に近付いてきた。ルハラも異常を察知したようだ。
「ケンジの魔力が消えた。何かあったに違いない」
「急ごう、手遅れになる!」
我とルハラは急いでケンジの元へ向かった。その途中、前からクァレバの団員がこちらに向かって近づいてきた。数は一人。
「戦う?」
ルハラがこう聞いてきた。今は戦いよりも、ケンジの救助を優先したい。
「相手をしたら時間がかかる。身を隠して移動し、ケンジを助けに行くぞ」
我はこう答えると、同時に深い茂みへ移動し、身を隠してケンジの元へ向かった。
他に魔力を感じていたが、それは徐々に遠ざかっている。逃げるつもりなのだろうか。そんなことを考えていると、ルハラが何かを見つけた。
「ケンジ……ケンジ!」
それは倒れているケンジだった。様子がおかしい。ルハラが声を出したのに、返事をしないし立ち上がらない。嫌な予感が命中してしまったか! 我は急いでケンジに近付き、状況を把握した。ケンジの腹部から血が流れていた。傷を見ると、奥深くまで傷ついているようだ。それに、片足も何かで貫かれたか、血が流れている。
「これはまずい……応急手当をして、急いでセントラー城へ戻るぞ!」
「うん……」
その後、我らはケンジを手当てして、急いでセントラー城へ戻った。クァレバのアジトを潰したのはよかったが……まさかケンジが負傷するとは考えていなかった。我の予想に反し、クァレバには強い奴がいたのだろう。
剣地とレッジの戦いが終わってから、レッジたちクァレバは離れた所にある廃墟に来ていた。彼らはアジトが何かあって潰れた時のため、ここへ臨時のアジトにしていたのだ。
レッジは簡易的ベッドの上で、治療を受けていた。
「グアッ! ガアアッ! ウウウウ……ウッ!」
「もうしばらく歯を食いしばってください。後一か所で傷口が縫えますからね」
レッジは剣地から受けた傷を縫って治療していた。麻酔もないため、針が肌に食い込むたびに激痛が走った。
「はい終わり。しばらくはそこで寝てください。まだバルサさんの治療がありますので」
「うわーん! 汚されたこの体を誰か慰めて~!」
バルサはルハラにいろいろと汚されたのがショックなのか、精神的に不安定になっていたのだ。その声を聞き、レッジはため息を吐いた。
「誰かそこにいるか?」
「はい」
横にいたイングが、レッジに返事をした。
「聞きたいことがある。バルサは……体は汚されたようだが、傷はあったか?」
「ありませんでした」
「傷がないなら大丈夫。あいつが落ち着いたらこう言ってくれ。汚されても構わない、怪我が治ったら、俺が優しく抱いてやると」
「分かりました」
「それとトリバーはどうした?」
「酷い傷を負っています。もう、戦うことができないと思います」
「そうか……もう一つ、伝えたいことがある」
「なんでしょうか?」
レッジは両手を強く握りしめ、イングにこう言った。
「あの坊主は俺が始末する。あいつはまだ生きている。あいつがリーナ姫の護衛についている限り、また戦うことになるだろう」
「私の援護はいりますか?」
「いやいい。お前は別の奴を相手にしてくれ。あの坊主は俺の獲物だ」
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