さよなら、剣地と成瀬?
ヴァリエーレ:集落の外
二人がボーンアレクスに飲み込まれた時、私は二人との出会いを思い出していた。まるで、走馬燈のように。何でこんな時に前のことを思い出すの? まだ二人は死んだって決まってないのに!
「ケンジィィィィィィィィィィ! ナルセェェェェェェェェェェ!」
ルハラは大声を上げながらボーンアレクスに向かって強い風の刃を放った。無数に放たれる風の刃はボーンアレクスに命中したが、切り傷一つも付いていない。
「この野郎……」
「よくも二人を! このデカブツ野郎! ぶっ倒してやる!」
ティーアとヴィルソルが光と闇が混じったビームをボーンアレクスに向かって乱射した。しかし、ビームはボーンアレクスの体を貫くことはなかった。
「ケンジ……ナルセ……」
私は体内の魔力を全て電気に変換させ、ボーンアレクスに向かって飛んで行った。そして、剣を構えて奴の頭を一閃しようとした。
「ヴァリエーレ!」
「すごい魔力……」
「ヴァリエーレも同じ気持ちじゃ。あの憎き象を倒したいと!」
皆の声が聞こえる。私だって同じだ、ケンジとナルセの仇を取りたい! 私は剣を振り下ろし、奴の頭に命中させた。やはり、刃は奴の頭を貫くことはなかった。だけど! 無理でも無茶でもこのまま奴を斬る!
「グッ……うォォォォォォォォォォ!」
大声を上げながら全身に力を込めた。普通に力を込めるだけじゃ足りないから、魔力を使って全身の筋肉を強くさせ、力を上げた。このまま力に任せて奴を斬る。その位やらないとダメージを与えられない! 力を込めて剣を振り下ろそうとしているが、なかなか奴の頭は斬れない……どうしよう。そう思っていると、突如体が楽になった。横を見ると、皆が私の隣にいた。
「無茶をするねー、ヴァリエーレ」
「私たちも手伝わせてよ」
「お前一人だけにやらせるわけはいかん。皆、気持ちは同じだ」
皆が私の元に集まり、一緒に剣を持ってくれた。ルハラはティーアとヴィルソルの方を見て、こう言った。
「同時に行くよー。せーのっ……」
「せっ!」
ルハラたちの魔力と力が加わったおかげで、剣が動いた。このままの勢いで奴の頭を斬る! 私たちは声を上げながら落下していき、ついにボーンアレクスの頭に傷を付けることに成功した。地面着地する間、ボーンアレクスの甲高い悲鳴が聞こえた。これは演技なんかじゃない、本気で痛がっているようだ。
「これで倒したかな……」
私は体中を滝のように流れる魔力を止めてこう言った。だが、ヴィルソルは鎌を構えていた。
「まだ終わっておらぬようじゃ……見ろ、傷を負ったことで逆上しておる」
ボーンアレクスの様子を見ると、さっきより大声を上げ、足踏みをしている。どうやら……まだ戦いは終わってないようだ。
成瀬:ボーンアレクスの腹の中
う……ん……ここはどこ? 臭いし、ぬちょぬちょする。
「うぐ……苦しい……どいてくれ……」
下で剣地の声が聞こえる。しかし、暗くて回りが見えない。剣地がとこにいるかもわからない。
「暗いわね……明かり付けないと」
私は火の魔力で明かりをつけ、辺りを調べた。ウゲッ! なんか気持ち悪い場所だ! しかも、何かうねうね動いている。
「ねぇ成瀬……いい加減どいてくれない?」
と、下から剣地の声が聞こえた。お尻の方を見ると、剣地が私の下敷きになっていた。
「あー、ごめん。痛かった?」
「やっと離れてくれたか……重かったぞ。お前、太った?」
こう言った剣地に対し、私は強烈なかかと落としを決めた。かかと落としを受けた剣地は頭を抑えながら、私に向かってこう言った。
「お前が上から落ちてきたくせに、かかと落としはねーだろ……イテテ。あー、頭にこぶが……」
「うるさい。最近気にしていることをさらっと言わないで。デリカシー持ちなさいよバカ」
剣地にこう言った後、今の状況を軽く伝えた。剣地もこの状況を飲み込めたようで、頭を抱えながら呟いた。
「この状況からして、俺たちボーンアレクスの腹の中にいるみたいだなー」
「ええ。テレビで臓器の中とか見たことあるけど、あの中そっくりね」
「だな。テレビの時は簡易的なCGだったけど、リアルで見ると気持ち悪い。おえ……臭くて鼻がどうにかなりそうだ」
剣地は壁を触ってこう言った。その時、手に着いた液体を見て気持ち悪そうな声を出した。
「うげぇー、ベトベトするー」
「触らなければいいのに。それよりも、ここからどうやって出るか考えないと」
今、大切なのはどうやって脱出するかだ。皆私たちが食べられて困惑しているだろう。早くこんな気持ち悪い所から脱出して安心させないと。そう思っていると、突如地面が揺れた。
「きゃァァァァァァァァァァ!」
「うわっ! 何だ、急に! 地震か? いや、腹の中だから地震はあり得ないか」
突如中で風のような物が発生した。しばらくして風は止んだが、また風が発生した。
「何だ……うォォォォォォォォォォ!」
「本当に何なのよもう! いやァァァァァァァァァァ!」
私たちは荒れ狂う風に自由を奪われ、辺りを飛び回っていた。しばらくして魔力を開放して何とか態勢を整えたけれど、それでもきつい。
「グッ……何とかしねーと大変なことになる……早くここから出ないと」
「どこか出入口があるかもしれないわ」
そう言って私は上を見上げた。すると、黒い穴を見つけた。そこが出入口なのだろう。分からないけれど、とにかく移動しないと!
「剣地、捕まって!」
「頼むぜ、成瀬!」
「任せなさい!」
私は剣地の手を取って、黒い穴に向かって飛びあがった。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




