クァレバへの急襲
レッジはモニターを見ながら大きなあくびをしていた。その様子を後ろで見ていた団員が、彼にこう言った。
「あんたでもあくびをすれば間抜けな顔をするんですね」
「誉め言葉として受け取ろう。どんな表情であくびをするかは人の勝手だろ。それより見てみろ」
と、レッジは後ろにいた団員にモニターを見せた。
「何ですか、これ?」
「いざという時にピレプに城周辺を見渡せるような道具を渡した」
「何でそんなことを?」
「万が一のためだ。城に忍び込んだエバーソンとイッシュが捕まって、俺たちのアジトをばらし、それを聞いた兵士がこっちにくる可能性がある」
この言葉を聞いた団員は、腹を抱えて笑い始めた。
「そんなぁ、レッジさんは考えすぎですよ。あの二人がやられるわけがないっすよ」
「姫が狙われているのは城内の連中に伝わっている。もし、凄腕のギルドの戦士がきたらどうする?」
「殺す」
「簡単に行けばの話だ」
レッジはモニターを操作し、ある場面を団員に見せた。その映像には、剣地とルハラ、ヴィルソルが映っている。
「数時間前の映像だ。城から兵士じゃない奴が三人出てきている」
「どれどれ……何か弱そうっすね。だけどこいつら、何者でしょうね?」
「だから不安なのだ。もし、エバーソンとイッシュがこいつらにやられたとすると」
「考えすぎ、考えすぎですよ! もし何かあったら皆であいつらをぶっ殺しますよ!」
「威勢がいいな」
レッジはそう言うと、電話を見た。
「そろそろ奴から連絡がくる。お前は席を外してくれ」
「わっかりましたー」
団員はそう言うと、部屋から出て行った。
剣地:平原
バイクを走らせれば、クァレバのアジトまでは一日で着くだろう。だけどその前に、近くの町かどこかで休まないと、戦いの時に調子が出なくなる。
「そろそろ暗くなってきたねー」
俺の背後にいるルハラがこう言った。
「ああ。どこか泊れるとこがないかなー」
「野宿道具はあるー?」
「簡易的なのがインフィニティポーチにしまってある」
「最悪野宿するしかないね」
「我もそう思う」
空を飛んでいるヴィルソルが、近付いてこう言った。
「この辺り、町どころか村もないぞ」
「荒れているからね」
「もう少し走って、何もなければそこで野宿しよう」
「ああ、そうだな」
その後、俺たちはもう少し先へ進んだ。すると、うっすらと明かりが見えた。俺はバイクを止め、望遠鏡で様子を見た。
「よっしゃ! 宿だ! 宿があったぞ!」
「ふぃ~、よかったね~」
「それはそうと……金はあるのか?」
「大丈夫。インフィニティポーチに十万ほどある」
「おお~、リッチだね~」
「依頼や要らない素材を売りまくったらこんなに溜まった。ここだけの話、貯金額も相当だ」
「おお、後で何かおごってもらお」
「お前に話すんじゃなかった」
俺たちは宿へ行き、一晩そこで過ごすことになった。まぁ寝袋で寝るよりも、ベッドの上で寝た方がいいしな。その後、俺たちは店員に案内され、泊まる部屋に着いた。
「結構狭いな……ベッドも一つ」
「しょうがないよ。安い所だもん」
「だが、ケンジと一緒のベッドに寝られる。それだけで我は満足だ」
ヴィルソルがにやけた顔をしながらこう言った。
翌朝、俺は横で寝ているルハラとヴィルソルに声をかけた。
「ルハラ、ヴィルソル、起きろよ」
俺は上に乗っかって寝ているルハラとヴィルソルを起こし、服に着替えろと伝えた。その後、俺たちは食事を食べにキッチンへ向かった。
食事の中、俺たちはクァレバについて情報を集めていた。あいつらのアジトはここから近くの山の奥深くにあり、そっちに向かうには険しい山道を歩かなければならない。しかも道中には凶暴なモンスターが生息しており、そちらへ行くのは難しそうだ。
「そんな場所にあるのか。だが問題ない」
「モンスターなんて軽く蹴散らしてやんよー」
と、ヴィルソルとルハラはこう言った。頼もしいな、ほんと。
俺は宿代を払い、再びクァレバのアジトへ向かった。
「ここが奴らのいる山か……」
俺の目の前には大きな山がある。シムケン山よりも大きく、とても険しそうな道だ。
「魔力を感じる。奥の方からだ」
「奴らだねー」
言われた通り、クァレバの連中はこの山の奥にいる。さーて。さっさと片付けてきますか!
レッジは手にしている資料を見て、今後について考えごとをしていた。その時、後ろから女性の団員が近付いてきた。
「レッジさん、何ですかそれ?」
「バルサか。ほれ、見てみろ」
レッジはバルサに手にしていた資料を渡した。
「リーナ姫の行動表」
「今から一週間後、姫はプラチナタワーへ向かい、そこで開催されるイベントにゲストとして参加する」
「何のイベントですか?」
「プラチナタワー建設五十年」
「そうですか。レッジさん、このイベントを狙って姫を殺すつもりですか?」
バルサはこう聞くと、レッジはああと短い返事をして、続けてこう言った。
「丁度いいタイミングだ。遠く離れた所から姫を射殺。暗殺とは違う方向になるが、どちらにしろ、姫を始末することができる」
「ではライフルの準備をしてきます」
「お前は理解が早くて助かる。ついでにクァレバの中でも腕利きのスナイパーを十人ほど用意してくれ」
「分かりました」
返事をし、バルサは去って行った。その時、室内にサイレンが鳴り響いた。
「どうした?」
レッジはマイクを手にし、下にいる団員に声をかけた。
「謎のバイクと飛翔する褐色少女が山に入りました! こちらに向かって移動しています!」
「D地点まで泳がせろ。そこで変な動きをした場合、射殺しろ」
「了解!」
会話を終え、レッジはソファに座り込んだ。机にある煙草ケースから煙草を一本取り、火を付けた。
剣地:アジト近く
そろそろ奴らのアジトに近付いてきただろう。察知した魔力も、段々と近くなってきた。
「ヴィルソル、アジトっぽい物は見えたかー?」
「まだ見えぬ。じゃが、先ほど感じた魔力が段々と近くなってきているから、そろそろ見えるはずだ!」
ヴィルソルがこう返事をすると、左手の方に砦らしきものが見えた。
「待て。何か建物が見える」
「うん。そこから魔力を感じるよねー」
ルハラがこう言った。確かにそうだ。あそこから魔力を感じる。
「どうやらあそこがあいつらのアジトのようじゃのう……」
「さーてと、どうしますー?」
ルハラが俺にこう聞いてきた。俺は少し考えた後、皆にこう言った。
「ドカンと一発やろうぜ」
そう言った後、俺はバズーカ砲を取り出した。ルハラとヴィルソルは俺を見てにやりと笑い、返事をした。
「さんせーい!」
「我の闇の力、思い知らせてやるわ!」
ヴィルソルは闇の力を発動し、砦を見つめた。ルハラも魔力を開放し、砦を見つめている。
「じゃあ行くぜ!」
「おう!」
「一発かましたれ!」
ヴィルソルとルハラの声の直後、俺たちは一斉にアジトに向かって攻撃した。ヴィルソルの闇がアジトを包み、ルハラの風がアジトに向かって飛ばされた。俺は何度もバズーカをぶっ放し、奴らのアジトに攻撃した。
クァレバのアジト内では、サイレンが鳴り響いていた。
「攻撃されているぞー!」
「一体誰がこんなことを?」
「助けてー!」
攻撃を受けたせいで、砦中が揺れ、火事が発生している。外は闇の魔力のせいで見えなくなっている。混乱する団員の声を聞きながら、レッジは悔しそうな表情をしていた。
「クソッたれが……」
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