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ペルの目的


ヴィルソル:イベント会場裏


 ガルートスとの戦いが終わったが、まだ黒幕の可能性があるペルさんを問い詰めていない。先に行ったケンジたちは大丈夫なのだろうか?


「ん。剣地の魔力?」


 どうやらナルセがケンジの魔力を感じたようだ。我らはすぐにその部屋へ近づき、ジョンが扉を蹴って開けた。その中には、立っているケンジ、ヴァリエーレ、勇者がいた。その後ろに、ペルさんがにやりと笑って我らを見ていた。


「あの連中を倒したようだね。予想以上に早かったじゃないか。おかげで、半分しか操り人形を手に入れられなかったよ」


「操り人形? あんた、剣地たちに何をしたの?」


 ナルセもケンジたちの様子がおかしいことを察したようだ。我が部屋に入ってすぐに魔力を開放したからかも。それよりも、ペルさん……あの野郎がケンジたちに何かをしたのは間違いない。


「何をしたかって? 簡単さ、俺の下僕になっただけさ」


「この野郎!」


 ペルの言葉を聞いた我らはブチ切れ、魔力を開放してペルに向けて魔力を解き放とうとした。しかし、ジョンが前に出て我らを止めた。


「止まれ、あいつみたいなひねくれた野郎が次にすることは分かる。あいつらを盾にするつもりだ」


 ジョンの言う通りじゃ。ペルの前にケンジたちが移動していた。グッ……あのクソ野郎!我はペルの方を睨んでいると、ジョンはペルの方を睨みつつ、口を開いた。


「戦う前に一つ聞いていいか? 何でこんな騒動を起こした?」


「おいおい、裏の武器屋が人様の事情に首を突っ込むのか?」


「ずっと気になっていた。それなりに名声のある奴が、どうしてこんなバカげたことをやるんだろうなってな」


「気になるのか……なら教えてやるよ、俺の目的を。特別だからな」


 ペルはそう言って立ち上がり、座っていた椅子を蹴り倒して語り始めた。


「俺の目的はただ一つ。世界征服だ。何もかもが俺の思い通りになればいい。そうなれば、世界は一つになる。バカな政治家が無数いるより、利口な奴が一人いれば平和も手に入るんだからな」


 世界征服? 昔のマンガの敵キャラみたいなことを言う男だ。我がそんなことを思う中、ペルは語り続けた。




 ペルは才能も実力もない男であった。ピアノやギター、ドラムなどの楽器を使うのが好きで、その手の分野のプロを目指していた。だが、努力をしても、その分野の天才には敵わないことを何度も味わった。いくら時間を使っても、いくら勉強をしても、いくら特訓をしても、真の天才には敵わなかった。何度も挫折を味わう中、ネット上にある動画サイトで音楽を作ることにした。自分で詩を作り、自分で曲を作って投稿していくうちに、それなりにファンが増えた。しかし、その動画サイトにもペル以上の才能を持つ人物が現れ、ペル以上に支持を受けた。そして、その人物たちは曲を出して大ヒット、テレビやライブに出演、そして個人で大きなライブをやるなどして知名度も人気も上がった。そのせいで、ペルとの差が大きく広がった。後からきて人気者になる天才たちを見ていたペルの中に、次第に劣等感が生まれて行った。


 そんな中、ペルは図書館でバイトをしていると、呪文という昔の魔力の技についての本を見つけた。そこには古代人が使っていたという呪文について詳しく書かれていた。ペルはその本をこっそり持ち出し、試しに使ってみた。


この本に書かれていることが本当だったらいいんだけどな。


 そう思いつつ、ペルは当時働いていた図書館の役に立たない同僚を呪文で操った。すると、その呪文は成功し、ペルの意のままに操ることができたのだ。


 それから、ペルはその呪文を使っていろんな悪さをしてきた。銀行員を操って大金を得たり、大富豪を操って家を乗っ取ったり、会社を乗っ取っていろんなものを奪ったり、ありとあらゆることをしてきた。その結果、彼は権力を手にし、地位も知名度もあっという間に向上した。


 呪文という大きな武器を手にしたペルは、次第に大きなことをやろうと考えていた。それは世界征服。呪文で全人類を操り、自分が一番偉い人物であると思わせようと思ったのだ。全人類を操れば自分が作った曲が世界で一番いい曲だと思われるし、自分が世界で一番優秀で偉大な作詞家、あるいは作曲家だと思われる。その目的を果たすため、ペルは世界で一番売れている歌手であるリリオの新曲の作詞家として新曲作りのメンバーに加わろうと考え、権力や金などを利用してメンバーに入ることができた。人気者であるリリオの曲は、誰でも聞くし、テレビやラジオ、インターネットでも流れる。それらを通じて呪文を流そうと考えたのだ。その考えを実行するため、どさくさに紛れて曲の一部分に聞いた人を操る呪文を入れたのである。


 一通り話を聞いた成瀬は、魔力を開放してこう言った。


「一つ聞かせて。ガルートスを使ってリリオさんを襲わせたのはなぜ? リリオさんがいなければ、あなたは目的を達成できないはずよ」


「呪文の試しだよ。わざと裏ギルドを操って、ちゃんと呪文が使えるかどうかを試しただけだ。怪我をしても、歌を歌うことができれば問題はないなって思ったからな。勘違いするなよ、殺すために狙ったわけじゃないさ。軽く怪我をさせればマスコミの連中が騒ぐだろ? そうすれば、新曲の方に注目が集まってたくさん売れて、たくさん俺の呪文が効くってわけ」


「あんたのしょうもない目的のためなら、リリオさんが怪我をしてもよかったってわけなの?」


「その通り。アイドルなんて所詮は俺の目的を果たすための道具の一つさ。ま、もし死んじまっても、別の道具を見つければいいだけの話だ」


「このクズ野郎が!」


 ペルの話を聞き、ブチ切れた成瀬が強大な魔力を開放した。そのせいで、イベント会場全体が揺れ始めた。ジョンやルハラが魔力を抑えろと言ったが、ヴィルソルは二人を止めた。


「何で俺たちを止める? このままじゃ会場がぶっ潰れるぜ!」


「この状態のナルセを止められると思うな! お前がケンジの次にナルセの恐ろしさを知っとるじゃろうが!」


「私はセクハラすれば止められるかなって思ったけど」


「それだけは止めとけ! それ以上怒らせたらここ一帯が木端微塵になって荒れ地になるわ!」


「だけど……おわァァァァァァァァァァ!」


 ジョンは落ちてきた天井を避け始めた。ヴィルソルやルハラはバリアを張って身を守っている。ペルはティーアを操ってバリアを解放させた。


「お前だけは! 絶対に! ぶっ倒す!」


 成瀬は叫び声を発しながら、ペルに向かって歩き出した。


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