ヴィルソルの焦り
ヴィルソル:イベント会場
ヴァリエーレの方とルハラの方の戦いが終わった。残るのは我とルハラのみ。ジョンの方も大分雑魚の方を倒したようだ。じゃが、まだ敵はいる。予想以上に数が多いからか、ジョンは苦しそうな表情になっていた。
「クッ、まだ雑魚がいるのかよ! 早く奴を止めないととんでもないことになるのに!」
ジョンは武器を上手く使えるスキル、ウエポンマスターと言うスキルを持っているようじゃが、それでも戦うことには不慣れのようじゃ。ナルセの方はまぁ、大丈夫じゃろう。苦戦している風には見えぬ。
しかし、我の相手はただの槍使いとはいえ、腕のいい戦士だ。すぐに倒したい気持ちが先行して先に手を出してしまい、その行動を簡単に見切られ反撃される。
「ぐひっ、ぐひひひひひ!」
うっげぇ。気持ち悪い笑い声じゃのう。我を苛立たせるために笑っておるのか? チッ、こっちはかなり焦っているというのにバカにしおって!
「そらァァァァァ!」
我は槍を振り上げ、攻撃を仕掛けたが、簡単に見切られてしまった。どうすれば手っ取り早く倒せるのだ?
そう思った直後、我は敵から魔力を感じた。どうやら敵は雷の魔力を使うようだ。しかし、ケンジの方が威力は上。強くはないな。どうやら、魔力に関するスキルを持っていないようじゃ。
「アーギャッギャー!」
叫び声と共に、波のような動きの雷が我を襲ってきた。雷の波はかなり大きく、飛んで回避することは不可能だった。仕方ないと思いつつ、我はバリアを張って雷の波を防御した。
「ギャッギャッギャー!」
我が防御することを読んでいたのか、敵は続けて攻撃を放った。この攻撃は蛇のように動く雷。動きが不規則だから避けることは不可能に近い!
「こんな奴に力を使いたくないが、仕方ない!」
我は闇を発し、敵が放った雷をかき消した。敵は我の様子を見て、大きな高笑いをしていた。
さっさと倒したいが、奴の攻撃は予想ができず、どう動くか考えがまとまらない。せめて、一瞬でも隙があればいいのじゃが。そう思った時、突如扉が開き、ルハラとさっきルハラと戦っていた女が姿を現した。
「魔王の少女! メトーメの槍の動きはすごいけど、その時は足元に隙ができるわ!」
「ヴィルソル! この人、もう正常に戻ったからー! 本当のことを言っているよ! だから、足元を狙って!」
なんと。ルハラと戦った女は正気に戻ったのか。現れた時は強い酒を飲んだ酔っ払いのように喋ることができなかったのだが、最初の時よりも口が動いているし、目もはっきりしている。ここは言われた通り、攻撃した時に足元へ反撃を仕掛けよう。
「アーギャギャギャギャ!」
メトーメと言われた奴は、槍を振り回しながら我に接近してきた。素早い槍の動きは触れたとたんに肌に傷ができそうだ。しかも素早く動くため、一撃じゃすまなそう。しかし、ルハラと戦った女のアドバイス通り、足元にかなり隙ができている。これなら反撃が入る!
「考えてみれば簡単なことだったの。槍の動きに驚いて、足元を見てなかったとはな!」
我は小さな闇を発し、メトーメの足元に向けて放った。すると、闇はあっさりメトーメの足元に命中し、ダメージを与えた。
「ギャァァァァァァァァァァ!」
放った闇が足のすねに命中したため、かなり痛いのだろう。メトーメは槍を投げ捨ててすねを抑えながら転げまわった。
「ヴィルソル。簡単な攻撃で正気に戻るから、全力でやらないでねー」
「ああ分かった」
ルハラの言葉を聞いた後、我は野球ボールと同じ大きさの闇を発し、メトーメに向けてぶっ飛ばした。ぶっ飛んだ後、メトーメはしばらく倒れていたが、頭を抑えながら起き上がった。
「あ……あれ? 何だ、ここは? 俺たち、一体どうしたんだ?」
「どうやら、元に戻ったようじゃのう」
元に戻ったメトーメに近付くと、我の顔を見て驚いたメトーメは後ろに下がった。
「は……ハーレムパーティーのヴィルソル! あのパーティーが何でここに? 勝てるわけがないのに、俺は戦っていたわけか?」
「まぁまぁ、おちついて話を聞け。お主らは操られていたのじゃ」
「そ……そうなのか。それよりも、他の連中は? 無事かどうか教えてくれ」
「一部は無事に戻ったわよ。その他はまだ操られている」
と、ルハラと戦った女がメトーメに近付いた。
「ミネさん」
「オンスルも元に戻ったみたいだけど、ちょっと気絶しているみたい」
「すまんの、ヴァリエーレがちょっとやりすぎたみたいじゃ」
どうやら、ガルートスの連中は裏ギルドなのだが、穏やかな連中のようじゃ。あまり
大きな悪行を働いていないのじゃろう。あとはナルセだけか。相手に傷を付けずに元に戻す……うーん、ナルセはたまに加減しないから大丈夫じゃろうか?
成瀬:イベント会場
他の皆は戦いが終わったみたい。ジョンの方もそろそろ終わりそうだ。この戦いでくたばってしまえと思っていたが、何を考えているか分からないけどジョンも何らかの考えでペルさんを追っている。一応利害は一致しているし、やましいことを考えるのは止めよう。考えるのは、目の前の敵をどうやって倒すかだ。
「ぐォォォォォォォォォォ!」
私が戦っている男は風が纏った剣を振り上げ、私に向かって降り下ろした。簡単な攻撃だったから簡単にかわせるが、この一撃は地面をえぐり取るほどの威力。命中すればこの私でも大きな傷になる。
ジョンから見せてもらったメモによると、こいつがガルートスのボスのドスト。武器は剣で、風の魔力を使う。とまぁそんな風に書いてあったが、どうやらあの剣は他の剣とは違ってかなり重いようだ。さて、どうやって攻略しようかな?
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