ジェロディアの目覚め
ニートゥムはティーアに目がけて何度も斬りかかっていた。しかし、その攻撃を全て予測していたティーアは難なく攻撃を防御し、反撃を行った。
「チィッ!」
ティーアが反撃で振るった剣の刃が、ニートゥムの体に傷を付けた。
「クソッたれが!」
怒りに任せてニートゥムは光を使い、ティーアに向けて攻撃を仕掛けた。しかし、ティーアが発した闇がニートゥムの光を飲み込んでしまった。
「何だと!」
「その程度の光じゃあ、私の闇を打ち払うことはできないよ。あんた、この実力で私を倒そうと思っているの?」
「俺を見下すな! ティーア!」
ティーアが見下したような発言をしたと思ったニートゥムは、怒りを爆発させるとともに魔力を解放した。解放したせいで周囲に強い風が発したが、それを見てもティーアは動じようとはしなかった。
「フッ、俺の魔力に驚いたか?」
「それなりにね。さて……シーアの海賊船の時は船を傷付けたくなかったから本気を出してなかったけど、今は違うから私も全力で戦える」
「はぁ?」
その時だった。ティーアの体から光と闇が混じったようなオーラが現れたのだ。それを見て、ニートゥムは反応的に後ろに下がってしまった。自身がこの行動をとったことを驚きながら、ティーアが強くなっていることをニートゥムは察し、武者震いを始めた。それと同時に、小さな声で笑い始めた。
「上等だ、ティーア! これだけ強いお前を殺したら、それだけ俺が強いってことだからなァァァァァ!」
「アホだねぇ、止めた方がいいよ。お前に私は倒せない」
「バカ言うんじゃねぇ! お前は俺が殺す」
ティーアの言葉を聞いて怒り出したニートゥムは、ジェロディアを持ってティーアに襲い掛かろうとした。その直後だった。
お前では奴を倒せん。俺に体をよこせ。あの小娘をぶっ殺してやろう。
突如、ニートゥムの脳内に声が響いたのだ。ジェロディアを見ると、剣の柄辺りに埋め込まれている黒紫の宝石が怪しく輝いていた。
「黙れ、ジェロディア。ティーアは俺が殺す!」
ニートゥムはジェロディアに向かってこう叫んだ直後、突如左手で頭を抱えながら悲鳴を上げた。今がチャンスと思い、ティーアは接近して攻撃を仕掛けた。だが、ニートゥムはジェロディアを逆手に持ち、ティーアの攻撃を防御していた。
「そんな!」
「こんなのが通用すると思ったのか? 小娘」
ニートゥムはこう言った後、ジェロディアを振り回してティーアをぶっ飛ばした。飛ばされたティーアは空中で態勢を整え、うまく地面に着地した。
「この魔力……あんた、ニートゥムじゃないね」
「ご名答。今の俺はジェロディアだ。さーて、殺し合いを始めようとするか!」
返事をしながら、ニートゥムの体を乗っ取ったジェロディアは不気味な笑みでティーアに近付いた。
ティーア:海の遺跡
確か前にもニートゥムはジェロディアに体を乗っ取られたことがある。この状態のニートゥムはかなり魔力が上がる。そして、剣の腕もニートゥムより上だ。
「くたばりやがれ! 勇者!」
叫び声を上げながら、ジェロディアは剣の連撃を始めた。一見ぶっきらぼうに剣を振るっているだけに見えるが、どの攻撃も正確に相手の体を狙っている。そして、次の攻撃のために姿勢のことも考えている。かなり高度な技だ。ニートゥムが使えない技を、ジェロディアは使えるのか。
「おらよ!」
とどめの一撃のつもりなのか、ジェロディアは剣を大きく振り上げて衝撃波を発生させた。私は闇を発して衝撃波を分散させたが、分散して小さくなった衝撃波が私に向かって飛んできた。
「なっ!」
「かかったな、バカが! 俺の衝撃波は細かくなっても、しつこく追いかけてくるぜ!」
しくじった! まさか衝撃波が残るなんて思ってもいなかった! クッ、小さくなったせいで防御をしても間に合わない。完全に消そうとしても、また分散するだけだ。ここは衝撃波を消すよりも防御して耐えよう。
「フッ、バリアを張ったか。耐えられるかな?」
ジェロディアはバリアを張った私を見てにやりと笑った。光と闇を混ぜたバリアなら、こんな衝撃波を耐え抜くぐらい楽勝だと思っていた。バリアは衝撃波を通さなかった。しかし、いくらバリアにぶつかっても衝撃波は消えなかった。
「しつこい衝撃波だな。まるで生きているみたい」
「そうだ。衝撃波は俺の一部。俺を倒さない限り地の果てまでお前を追い詰めるぜ!」
いいことを聞いた。ジェロディアは今、俺を倒さない限りと言った。今の状況の中、一発でジェロディアを倒すことは不可能だと思うが、大きなダメージを与えれば衝撃波は消える可能性がある。これに賭けよう。
私はバリアを解除し、ジェロディアに向かって走って行った。
「自棄になったか? バカが」
「ヒントをくれたあんたの方がバカだよ」
「何だと?」
どうやら、ジェロディアは自分が今なんて言ったか分からないようだ。しばらくして、ジェロディアは自分のミスに気が付いた。
「しまった……だが、俺に一撃を与えるのは不可能だ! 残念だったなぁ!」
「やってみないと分からないよ!」
叫び声と共に、私は光を発した。これは攻撃ではない、まぶしい光を放ってジェロディアの隙を作る光だ。
「チッ! ふざけたことを!」
ジェロディアは防御の姿勢を取り、隙を作らないようにした。だが、私は一瞬だけジェロディアが目を閉じるのを見逃さなかった。その隙に私はジェロディアの背後に回り、剣の刃の光と闇を込めて斬りかかった。
「何だと! 俺の背後に!」
ジェロディアが背後にいる私に気が付いて振り向いたが、もう遅い。私はもう剣を振り下ろしていた。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




