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命がけの迷路


ルハラ:海の遺跡


 はぁ、この遺跡はとんでもないよ。入口の仕掛けも、魔力が発生するように仕掛けてあって、そのせいで遺跡全体に魔力が発生したのだろう。あの鎧も遺跡全体に発生した魔力が動かしたもの。もしかしたら、同じようなことが何度も起こる。だけど、あの仕掛けを発動させないと私たちはこの中に入れなかった。遺跡を作った人が、こうなるように考えて作ったのだろう。ほんと、大した頭脳の持ち主だよ。


「また部屋だ」


 うんざりしたような感じのケンジの声が聞こえた。またあの鎧とまた戦うなんてことはしたくない。正直言って、あれは時間の無駄だ。体力も使うし。


「行くしかないわね。道中分かれ道も何もなかったし」


「だな」


 私たちは目の前の部屋に入った。入った途端に鉄格子が上から降ってくることはなかったが、目の前の壁を見て私たちは同時に驚いた声を上げた。


「何じゃこりゃ? この部屋、鏡まみれだ!」


「天井も壁も鏡でできているよ。変な部屋」


「ほんと、何の部屋なのかしら?」


 ナルセが鏡に手を触れたが、特に何も仕掛けとか発動する動きはない。試しに私やケンジが鏡を蹴ったりしたが、特に反応はなかった。


「もしかして、この一枚がドッペルミラーとかじゃないだろうな」


 恐る恐るケンジがこう言った。確かに罠の一部でドッペルミラーがあるってことがありそうだ。確かあれは古代に作られた道具。遥か昔に古代人が作った物騒な鏡だ。あれが混じっていたら……うわー、考えるのは止めよう。あの時はドッペルナルセと戦う前に修行して強くなることができたけど、今はそんなことはできない。今の状態でそんなことになったら、確実に大変なことになる。今の成瀬に勝つ自信がない。たとえ、三人がかりでも。


「変なこと言わないでよ、剣地。そう言われたらどれもこれもドッペルミラーだと思うじゃない。あーもう、あの時のことを思い出す」


「もうナルセのドッペルとは戦いたくない。あの時は本当にきつかったからねー」


「確かに。俺ももう偽物とはいえ、成瀬とは戦いたくない。とりあえず、壊しながら進むか?」


 物騒なことを言ったケンジだが、やり方は荒々しいけど、こんなことをしないと先へは進めない。仕方ないね、こりゃ。


「成瀬、魔力で鏡を壊せるか?」


「もちろん。鏡の破片が飛んでくるかもしれないから、二人とも下がって」


 ナルセは魔力を開放しながら私たちにこう言った。危険を察した私とケンジはナルセの後ろに下がり、鏡に攻撃するのを待った。


「このまままとめて一気にぶち壊す!」


 物騒な言葉と共に、ナルセは風の刃を放った。しかし、鏡はナルセが放った風の刃を吸収し、光を発した。


「な……何だ! 急に光出した!」


 ケンジが驚いた直後、鏡に吸収された風の刃が強烈な勢いと共に私たちに向かって飛んできた。


「グアッ!」


「キャアッ!」


「オワァオ!」


 予想にしないことが発生したため、私たちが身構えることなく飛んできた攻撃を喰らってしまった。


「いつつ……こんなことってありかよ?」


「魔力を吸収する鏡なんてあるとは思わなかった」


「こんなのずるくない?」


 跳ね返された風によってできた傷を治した後、ケンジが銃を持って弾丸をリロードした。


「魔力が駄目なら、こいつでどうだ?」


 そう言って銃を撃ったが、弾丸は鏡に弾かれ、地面にめり込んでしまった。


「銃でもダメか……」


「面倒な鏡ね。侵入者防止で作ったって思うけどこれは……ん?」


 その時、ナルセが何かを見つけたようだ。すぐに立ち上がって歩き出し、一枚の鏡を調べた。


「ここだけ反射の位置がおかしいわね」


「あれ? これって、通路になっているぞ!」


 ケンジの言うとおり、そこには先につながる通路があった。それを見て、ナルセが呟いた。


「ここって、鏡の迷路かしら?」


「かもね。かなり厄介な迷路だよ。一生迷いそう……」


 次の困難は鏡の迷路か。こりゃーかなりきついぞ。下手したら、一生この部屋から抜け出せないかも。




ヴィルソル:海の遺跡


 ガイコツの鍵を奪い、我らは先へ進んだ。だが、歩いている途中で分かれ道が現れた。


「分かれ道か」


「ここで別れて行動するのはまずいよ。どっちかにしないと」


「どうしましょう……」


 悩んでいると、我は後ろから魔力を感じた。周囲を見渡し、ここら一帯に仕掛けも何もないことを把握した。二人の様子を見たが、どうやら二人も魔力を感じたようだ。


「デストロイサーカスの連中が追い付いてきたね」


「海の底まで追いかけてくるとは、奴らも執念深いのう」


「感心している場合じゃないわ。早く先に進まないと」


「だな」


 ヴァリエーレの言うとおりだ。今の状況、我らが一歩リードしている状況だ。このまま先へ進んで、一足先に海の書を手にする。悩んでいる暇はない。


「こっちに行こう!」


 と、勇者が左の道を見ながら叫んだ。


「こうなったらティーアの運に賭けるしかないわね」


「そうするしかないの。この道があっていればよいのじゃが……」


「私の勘を信じて」


 勇者は自信がありそうにこう言っているが、少し不安になってきた。しばらく先へ進むと、先の通路の上に妙な穴が開いていた。


「何だ、この穴は?」


「気にしていたらデストロイサーカスに追いつかれるよ」


 そう言いながら勇者は先に行こうとしたのだが、突如何かが天井から降ってきた。


「危ないティーア!」


 ヴァリエーレの叫び声を聞き、勇者は少し後ろに下がった。あの穴から落ちてきたのは、とんでもなく大きなギロチンの刃だったからだ。


「す……少しでも先に行っていたら……」


 勇者はびっくりして腰を抜かしているが、最初の刃が落ちてきた後から、先の穴から次々とギロチンの刃が落ちてきている。どれも不規則に落ちてきているため、不用意に突っ込んだら体が裂かれてしまう。


「仕方ない、別の道を行こう」


 我はため息を吐き、こう言った。


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