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扉を開くには


ルハラ:海の遺跡入り口前


 やーっと海の遺跡を見つけることができた。それはいいけど、扉が分厚くて動かすにも一苦労だ。こういうのって、何か仕掛けらしきものがあるかもしれない。そう思いつつ、私は皆と一緒に遺跡の周囲を調べた。


「何もねーなー」


 ケンジがライトを照らしながらこう言った。ゲームでよくある展開だけど、扉が閉まったままのダンジョンの入口を開けるには、何かしら仕掛けを解かなければならない。ただ、プレイヤーにもわかりやすいように何かしらヒントがある。それがあればいいんだけど。


「ん? ケンジ、ちょっと上の方にライトを照らして」


「ああ。何かあったのか」


 ケンジはティーアに言われたように、建物の上の方にライトを照らした。天井付近には、何かで引っ掛けたような跡が残っていた。


「硬い魚がここにぶつかったのかな?」


「爪のような物で引っ掛けた後だよ。多分、入口を開ける鍵はこの上だ」


 そう言って、ティーアは屋根の方に向かって移動を始めた。気になった私はその後ろをついていき、屋根を調べ始めた。


「ビンゴ。見てよ、ルハラ」


「おお。これはすごい」


 ティーアの勘は命中した。屋根にはハンドルのような物が置いてあった。もしかしたら、これが扉を開く仕掛けだろう。


「これを回せば入口が開くかな?」


「やってみないと分からないよ。とにかくやってみよう」


 会話後、私とティーアは力を合わせてハンドルを回そうとした。たが、長い間海の中に沈んでいたせいか、ハンドルはとんでもなく錆びていて動かなかった。


「うげぇ、この錆びようは酷いね」


「これじゃあ動かないよ」


「助けにきたわ」


 ここでナルセがやってきた。ナルセの魔力で何かをすれば、きっと動くはず。どんな錆びたハンドルでもナルセの魔力が相手なら弱いものだ。


「魔力を腕に込めて筋力上げて……これで無理にでも回せば……」


 力を込めてナルセはハンドルを回そうとしているのだが、なかなかハンドルは回らなかった。まさか、魔力を使ったナルセでも無理だなんて思わなかった。


「何なのよこのハンドル、全然動かないじゃない」


「逆に回せば開くかも……なんてね」


 私はこう言いながらハンドルを左に回した。すると、ハンドルは凄い勢いで回り始めた。


「えぇ……うそーん」


「心理を使ったトリックみたいだね」


 ティーアは驚きながらこう言った。だが、もっと驚くことが起きていた。突如私たちの足元に魔法陣のようなものが現れた。魔法陣からは、感じたことのない強い魔力を感じた。


「な……何だ、何だ! 変な紋章が現れた!」


「急にバリアが発生したぞ!」


 ケンジとヴィルソルの慌てる声が聞こえた。その時、ヴァリエーレさんが私たちの所に駆け付けた。


「この魔法陣がバリアを張ったのね。でもこの魔法陣って……」


「昔の人が使っていた魔力か不思議な力かもね。今はもう使われて使える人はいないけど、昔は魔法陣を使って魔力を使っていた人がいたかもしれないね」


 ティーアは青く光る魔法陣を見ながらこう言った。


 その後、一度私たちは入口の前に戻った。海の遺跡全体にバリアが張られ、周囲の水が押されて行った。バリアのおかげで、空気ができたのだ。私たちは入り口前に移動した後、シーアーマーセカンドを外し、ケンジのインフィニティポーチへ入れていた。その前にケンジが博士とシーアに連絡を始めていた。


「さて、バリアのおかげで楽にはなったが……」


「入口が開いてないね」


 そう。ヴィルソルとティーアの言うとおり、遺跡の入口は開かなかった。他に何かすべきことがあるのかなと思いつつ、私は入口の門をたたいた。


「お邪魔します。開けてください。中に入れてください」


「ルハラ、そんな簡単に開いたらこれまでの苦労が……」


 ヴァリエーレが私に近付こうとした瞬間、突如扉は大きな音を鳴らしながら、左右に動き出した。私たちはぽかんとしたまま互いの顔を見合わせた。


「開いちゃったね」


「あ……ああ……でも、これで中に入れる。行こうぜ」


 それから気を取り直し、私たちは遺跡の中へ入って行った。




 海の上では、シーアたちが剣地たちの連絡を受けるため、待機していた。


「さて、ここからはケンジたちの無事を願うしかないぞ」


 アラマー博士はそう言うと、近くの椅子に座ってリラックスを始めた。そんな中、シーアは望遠鏡を見ながら周囲を見渡していた。その様子を見てアラマー博士はこう聞いた。


「何をしとるのじゃ?」


「忘れたのか? デストロイサーカスの連中がくるかもしれないだろ。奴らがきたら、いざって時に動けないと」


「その辺は大丈夫じゃ。さっき、わしが全自動武装付き監視小型ドローンを十機ほどこの周囲にばら撒いた。何かあればわしが持っている受信ランプが点滅する」


「いつの間にそんなものを使ったんだ?」


「ついさっきじゃよ。それに、ドローンって言っても、見た目は鳥じゃ。これなら奴らもドローンだと分からないじゃろう! アッハッハ!」


 シーアはアラマー博士を見てこう思った。剣地たちの知り合いにこんなすごい人がいたとは思わなかったと。


 その一方、デストロイサーカスの連中は立ち寄った港町にいた。その港には、かなり巨大な潜水艦のような物が置いてあった。


「見てくれ。こいつがデストロイサーカスの特性潜水艦だ。百人は中に入れるし、どんな水圧にでも耐えられる強度もある」


「これはすごいですね。武器もちゃんとついてある」


 家光は褒めるような感じでこう言った後、アセックは笑い始めた。


「こいつがあれば、海の書だろうが何だろうが取りに行けるぜ!」


「変なモンスターに襲われなければいいが……」


 能天気なアセックの笑い声を聞き、呆れたニートゥムはため息と共に小さく呟いた。


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