海のモンスターたち
剣地たちと戦いを繰り広げたデストロイサーカスの連中は、剣地たちが立ち寄った別の港町に身を寄せていた。
「いてぇよぉ……」
「こんなことになるなんて……」
「溺れる……体が沈む……ギャァァァァァァァァァァ!」
剣地たちによって倒されて海に落ちた団員たちは、皆それぞれ傷を負ったり海がトラウマになったりしていた。そんな中、ティーアにやられて怪我をしたニートゥムは、包帯姿で窓を見ていた。
「機嫌が悪いようですね」
そう言いながら、見舞いにきた家光が笑顔でニートゥムに近付いた。
「まさか、また病院の汚いベッドの上で横になるとは思わなかったぜ」
「汚いとかそんなことを言ってはいけませんよ。裏ギルドのような連中を見てくれる病院があったことを喜ばないと」
「お前の言う通りだな。ベッドの上でちゃんとした治療を受けられることが贅沢だと思わないとな」
ニートゥムはため息を吐き、家光にこう聞いた。
「これからどうする? ここで時間を潰していたら、奴らが先に海の遺跡に行っちまうぞ」
「問題ありません。あなたたちの傷が治り次第遺跡へ向かいます」
この言葉を聞き、ニートゥムは驚いて飛び上がった。
「この傷だぜ、一日二日で治るわけがない。早く治る手段はあるか?」
「まぁ落ち着きなさい。この病院には魔力を使った手術などをしています。あなたの傷も、もうすぐ治りますよ」
家光の言葉を聞き、ニートゥムは腕を動かしてみた。先ほどまで腕を動かせば痛みが走ったが、今はそうでもなかった。
「そういえば……飛び上がった時も痛みがなかった」
「ね、大丈夫でしょう」
「俺は大丈夫だが、あいつらはどうする? 役に立たないぞ」
ニートゥムは海がトラウマになった団員を見て、家光に聞いた。悲鳴を上げる団員を見て、家光はため息を吐いて答えた。
「アセックさんに聞いてみましょう。話はそれからでしょう」
ヴィルソル:海の中
海の中のモンスターか。一度ケンジが戦ったのを見たが、いつものような武器を使うことはできない。ここはシーアーマーセカンドに搭載されている武器に頼るしかないの。
「博士、シーアーマーセカンドにはどんな武器があるか教えてくれ」
「左右の手の甲には伸びる刃。手の平には魔力を出して放出する兵器を取り付けた。どう使うかはお前さん次第じゃ」
博士の話を聞いた後、我は左右の手の親指部分にあるスイッチを押した。すると、鈍い金属音が聞こえた。
「おお。これはすごい」
手の甲を見ると、鋭そうな刃が出ていた。魔力を込めると、刃の周りが青く光出した。
「魔力を使えば攻撃力が増すことを伝えておけよ」
と、我はにやりと微笑みながら呟いた。ケンジたちも話を聞いていたのか、刃を出して戦闘準備をしていた。
「こっちはいつでも行けるぜ!」
ケンジはやる気満々だ。この武器を見てテンションが上がったのだろう。ルハラも変な動きをしているし、勇者も活きの良い声を上げている。どうやら二人もやる気のようだ。
「皆、気を付けて! 何かくるわよ!」
ヴァリエーレの声を聞いた後、少し離れた所から巨大な目が現れた。それを見たルハラが、大声を出して驚いた。
「何あれ? 魚なの? 一体何なの?」
「あれはビーグオクトパス。全長百メートルは越える超巨大タコじゃ。こんな所に生息していたとは……」
ビーグオクトパス。海の奥深くに存在するとは聞いていたが、海に潜ってまだ十メートル位。ここで遭遇するとは思ってもいなかった。
「気を付けろ、皆。こいつの触手には毒があるぞ」
「結構面倒な奴ね」
「タコ焼きにしても食べることはできないね。ささっと倒そう」
ナルセは魔力を開放し、手の平からかなり大きな魔力砲を発した。威力が高いせいか、撃った後、ナルセの体は少し後ろに吹き飛んだ。
「あぶねっ!」
ナルセの危機を察したケンジが、急いでナルセを受け止めた。
「ありがと」
「礼を言っている場合じゃないぞ……あの魔力をまともに受けてもあいつは倒れてないぞ」
ビーグオクトパスはケンジとナルセの方を睨み、無数の触手を伸ばし始めた。まずいと思った我、そしてヴァリエーレが接近し、ビーグオクトパスの触手を斬り刻んだ。
「グッ、数が多い!」
「適当に触手を斬ったら二人を救助するぞ。奴の触手はすぐに再生する。その前に助けないと!」
我が触手を斬り、ヴァリエーレが急いで二人を救出した。それを察した我は急いで戻り、ビーグオクトパスから距離を取った。
「とんでもないモンスターだねー」
「こういう奴もいるって話には聞いていたけど、実際に戦うとなると厄介ね」
ルハラと勇者は襲ってくるビーグオクトパスに対し、同時に魔力砲を放った。これでもビーグオクトパスはひるまなかった。
「こうなったら……」
我は手の平に魔力を込め、シーアーマーセカンドの手の平から魔力砲を放った。狙いはビーグオクトパスの体ではなく、巨大な目。目を潰してビーグオクトパスの視界を奪い、不利な立場にさせるのだ。しかし、ビーグオクトパスは巨大な触手で我が放った魔力砲を弾き飛ばした。
「あの触手、とんでもねー強さだな」
「傷を受けても、また再生する。かなり厄介じゃのう」
我がこう言った直後、また赤いランプが点滅した。
「もしかして、別のモンスターが近付いているのか?」
「その可能性が大ありじゃ……」
我は遠くにいる魚群の影を見てナルセに答えた。あれはただの魚群ではない。もしかしたら、サメに近いモンスターの群れかもしれない。
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