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崩れていくプライド


 ティフルは目の前にいるルハラを見て心の中でこう思っていた。なんて間抜け面なエルフだ。こんな奴を倒すのに本気を出す必要はないなと。


「君みたいな少女を相手するのに本気は出さない。こう見えて私はレディに優しいので」


「その優しさが命取りになるよー。それに、」


「手加減するって言っているのだ。嬉しく思わないかね」


 ルハラの返事を聞いたティフルは少々苛立ち始めた。ルハラはため息を吐いた後、ティフルの質問に答えた。


「別にー。嬉しく思わないね。手加減しなくても、あんたなんて楽に倒せるし」


「そうか……なら! あの世で私を怒らせたことを後悔するがいい!」


 叫び声と共にティフルはルハラに向かって走り出した。だが、この時でもティフルは少し余裕を持っていた。あまり熱くなると自分をコントロールできないと彼は知っているからだ。ルハラに接近したティフルは、素早く何度もレイピアで攻撃を仕掛けた。だが、攻撃は当たらなかった。


「それで手を抜いてるのー? 本気出しなよ」


 と、ルハラは涼しい顔をしながらティフルの攻撃をかわし、余裕のある言葉を放った。ティフルは一旦レイピアを引き、ルハラに向かってこう言った。


「ならお望み通り、少し本気で戦ってやる!」


 ティフルは魔力を開放し、再びルハラに攻撃を仕掛けた。だがこの攻撃もルハラは全てかわしてしまった。


「これで本気? まだまだ私は余裕だよ」


「グッ……ふざけるなよ、小娘が!」


 さらに魔力を開放し、風と雷を纏ったレイピアを構え、ティフルは三度ルハラに攻撃を仕掛けた。


「今度の攻撃は避けられるかな? 避けたとしても、風と雷がお前を襲うぞ!」


「だから何?」


 ルハラは攻撃をかわしたと同時に、魔力を使って襲ってくる風と雷をかき消した。その光景を見たティフルは攻撃の手を止め、ルハラから距離を取った。


「おやおや? 最初の余裕はどこに行ったのですかー?」


 ルハラは人を小バカにしたような顔でこう言った。だが、ティフルはその挑発を聞き流していた。あの攻撃でティフルは察したのだ。ルハラの実力が自分より上である可能性を。


「これならどうだ!」


 ティフルはそう叫ぶと、レイピアを地面に突き刺した。そして、魔力を開放してレイピアに触れた。


「足場を壊せば戦いにくいだろう!」


 その後、地面に突き刺さったレイピアから風と雷が発生し、周囲の地面を破壊し始めた。


「ほー。風と雷でこれだけの威力かー」


 ルハラは攻撃を避けながら感心していた。その際、ティフルはルハラの隙を見て目の前に移動していた。


「隙ありだな」


「そう?」


 攻撃を避けるのに夢中になるだろうと読んだティフルはルハラに接近したのだが、ルハラはすでに反撃の構えをとっていた。ルハラの拳がティフルの腹に命中し、そのまま後ろの木に向かって吹き飛んだ。


「ガハァッ!」


「枝に突き刺さらないように場所は選んだよ。さっさと負けを認めなよ。雑魚との相手は加減をしないといけないから面倒なんだよねー」


 ルハラは地面に落下したティフルに近付きながらこう言った。ダメージを負っているが、ティフルには意識があった。しかし、彼に戦う気力は一切なかった。


「クソ……私より強い奴がいるとは……勝てるわけがない!」


 残った魔力を振り絞るように使い、ティフルはその場から飛んで立ち去った。


「あ! 逃げるな、こら待て!」


 後ろからルハラの声が聞こえたが、ティフルは声を無視して逃げるのに徹した。


 しばらく逃げた結果、ルハラから離れた場所にティフルは到着した。


「ハァ……ここなら……ハァ……大丈夫だろう」


 魔力が切れたせいで、空腹になった腹を抑えながらティフルは周囲を見回した。少し落ち着いた後、ティフルは自分のすべきことを考え始めた。優先して行いたいのは仲間との遭遇。食料もあるだろうし、仮にルハラが襲ってきても一対多数の状況なら勝てる見込みがあるかもしれないと考えているのだ。


「誰かいないかな」


 呟きながら、ティフルは魔力の探知を始めた。仲間がいればいいがと期待していたが、突如誰かが後ろからティフルの背中を触った。


「誰だ?」


「私だよ」


 声を聞き、ティフルは絶望した。後ろにいたのはルハラだったのだ。


「何で……魔力を探知していたのに、感じなかったぞ」


「魔力を消して移動していたからね」


「く……クッソォォォォォ!」


 ティフルは体内にある全魔力を使い、体を強化しようとした。しかし、ルハラが左手でティフルに触り、魔力を込めた。その瞬間、ティフルは体が弱くなっていく感じを察した。


「な……何で……」


「マギーアドレイン。ごめんねー、最後の魔力を貰っちゃって」


 ルハラはそう言いながら、魔力を開放して右手で攻撃の構えを作っていた。この構えを見てティフルはアッパーで攻撃すると察した。


「そんな……この私が……」


「殺しはしないから安心してね!」


 その後、強烈なルハラのアッパーがティフルを上空に吹き飛ばした。




ヴァリエーレ:森から離れた丘


 何かが森から飛び出たようだ。誰かが敵を吹き飛ばしたのだろう。にしても、森から離れた丘の所に敵が集まっているなんて知らなかった。魔力を感じてここにきたら、多数の敵と遭遇した。敵はすぐに襲い掛かってきたが、大した敵ではなかった。簡単に返り討ちをすることができた。


 しかし、これで私は安心していない。ここに向かって魔力が近付いてくる。ケンジでもナルセでも、皆の魔力ではない。これは敵の魔力だ。敵が私の動きを察してこちらに向かっているだろう。やるしかないようだ。


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