勇者の猛攻撃
ティーア:無人島の森
私が戦っているガンナーの男、名前はシベと言った。強がっているようにみえるが、実力的には強くはない。銃の腕もケンジやヴァリエーレに劣っている。はっきり言って、手を抜いてもこいつには勝てる。
「はぁ……はぁ……余裕のつもりか小娘!」
どうやらシベはリロードを終わらしたようだ。そんでもって、すぐに銃を構えて私に向けて発砲した。行動パターンは大体把握している。だけど、私の攻撃でぶっ飛ばされた際、近くの木にぶつかりながら落下したせいでかなりダメージを受けたようだ。体が震えている。
飛んでくる銃弾は私に当たりもせずかすりもせず、そのまま通り抜けて行った。それもそのはず、私は一歩も動かないでも銃弾には当たらないと判断したのだ。その判断が的中し、私に命中せずにそのまま飛んで行った。
「な……何故だ……」
「あのさー、銃を使うならちゃんと狙えば?」
「黙れ!」
私の言葉を聞き、シベは続けて銃を撃ち始めた。だけど、弾丸は私に当たらぬままどこかへ飛んで行った。
「そんな……バカな……」
二度目の攻撃でも私に攻撃が命中しないことを理解したシベは、ショックを受けたような顔をしていた。そして、奴の顔面は青く染まった。銃以外の攻撃手段がないのだろう。他の武器も鍛えていれば、こんなことにはならないのに。
「くっ、こんな奴に使いたくないが、ここで倒れるわけにはいかない!」
「奥の手があればさっさと使えばよかったのに」
「黙れ! このスキルで貴様を殺してやる! イリュージョンネット!」
シベの叫び声と同時に、奴の全身から蜘蛛の糸のような物が発射された。イリュージョンネットは魔力を使い、糸状にして操るトリガースキルだ。魔力をコントロールすれば糸の硬さを自由に変更することができる。触った程度で糸が切れたり、逆に鋼鉄を斬れるくらいの硬さにできたり。いろいろと用途があるスキルだ。
「死ね!」
シベの放った糸が私に向かって飛んできた。私は魔道武器を持って糸を振り払おうとしたが、かなり柔らかいせいか武器を振っただけで糸がちぎれてしまった。固い糸で防御と攻撃をするのだったら分かるけど、柔らかい糸なんて使ってどうするつもりだ?
「もしかして魔力切れ?」
「そんなわけあるか。それは貴様を倒すための策だ!」
何のことだ? そう思った直後、突如糸が勢いを付けて伸び始めたのだ。その際、魔道武器から何かが突き刺さる音が響いた。
そうか分かった。シベは遠距離で糸を操り、絡まって魔道武器や私の体にへばりついた糸を使って攻撃するつもりだ。運よくあの攻撃で私の魔道武器は壊れなかった。にしても、シベの攻撃はかなり厄介だ。糸に触れただけで奴の攻撃の餌食となってしまう。
「ハッハッハ! さぁさぁ、逃げられるものなら逃げてみろ!」
シベは私の目の前に無数の糸を発してきた。避けられるスペースがないほどの網状の糸が私に迫ってきた。
「しょうがないな」
私は闇の魔力を発し、シベの糸の一部を破壊して避けられるスペースを作った。そしてそのスペースを使ってシベの攻撃をかわし、走り出した。
「運よくかわしただけだ! 次の攻撃でお前を倒してやる!」
と言って、シベは再び網状の糸を発してきた。さっきの攻撃と比べ、今回の糸はぴんと張っている。固い糸で作られているな。それを私に向けて、そのまま切り裂くつもりだ。
「魔力でも壊れない頑丈な糸だぞ! 闇の魔力でも何でもこの糸には敵わないさ!」
「本当にそう思うの?」
私はシベに向かってこう言った。奴は自信たっぷりにこう言っているが、対処法はある。確かに魔力に対しての防御力と共に物理に対しての防御力もある。しかし、シベの攻撃には限界がある。魔力が関係していると思うけど、空を飛ぶようにジャンプすれば奴の攻撃はかわせるのだ。
「せやっ!」
私は高く飛び上がり、シベの攻撃をかわした。ちょっと魔力を込めてジャンプしたつもりだけど、かなり高く飛び上がった。
「な……何てジャンプ力だ……」
シベは私のジャンプを見て驚いている。さて、この隙にシベを倒そう!
私は魔道武器を構え、シベに向かって落下した。私のジャンプ力を見たシベはまだ驚きで固まっている。隙だらけなのに。
「ん? うわっ! しまった!」
私が接近するというところでシベは我に戻った。もう遅いのに!
「はァァァァァァァァァァ!」
落下の際、私は勢いよく魔道武器を振り下ろした。
「ギャァァァァァァァァァァ!」
強烈な一撃を受けたシベは甲高い声で悲鳴を上げた後、後ろに倒れた。ふぅ。戦いには勝った。聖域で修行をしたおかげか、かなり強くなったようだ。やはり手を抜いた状態でも勝てたよ。
「さて、皆はどうかな?」
私はシベを縛り上げた後、皆の様子を探るために魔力の探知を始めた。
ヴィルソル:無人島の森
小さな魔力が消えた。でかい魔力が残っているから、ケンジたちの誰かが敵と遭遇して倒したのだろう。
「強くなさそうな相手じゃのう……」
我はあくびをしながらこう呟いた。その時、上から木の葉が落ちてきた。それと同時に、木が折れる音が聞こえた。
「不意打ちのつもりか」
どうやら我のことを察した奴がいるらしい。さて、どんな奴か楽しみじゃのう。修行の成果を発揮できる相手だと嬉しいのじゃが。
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