鬼ごっこを終わらせるために
成瀬:聖域の休憩場
私たちはこの日の修行を終え、休憩場へ来ていた。今、私たちはここで寝泊まりしているのだ。
「あー、あの中で自由に動けるってずるいよな~」
剣地は横になり、声を上げた。確かにそうだ、私たちはまだあの重力になれてない分、白い馬を捕まえるのは至難の業だ。ゼロマジックがあればなんとか掴まれられるかもしれないけど、今はゼロマジックを取り上げられている状態。
「魔力を鍛えなければ、あいつを捕まえるのは難しい」
ヴィルソルはこう言いながら、軽く魔力を解放した。その時、ヴィルソルの右手に巨大な闇の塊が発生した。
「ちょっと魔王! いきなりそんな魔力を出さないでよ! 驚いたじゃない!」
「違う! 軽く魔力を出したつもりが、こんなに大きな塊ができてしまったんじゃ!」
「もしかしてさー。あの重力部屋にいたせいで、魔力加減が難しくなったとか?」
ルハラの言葉を聞き、ヴィルソルはそうかと呟きながら、闇の塊を消した。
「ちょっと待て。それ」
その後、ヴィルソルは別の闇の塊を発した。今度は小さい。
「ふむ。あの部屋で修行したせいか、基礎体力が上昇したようじゃ」
「魔力をたくさん使ったから、その分鍛えられたのね」
ヴァリエーレさんが指先から電撃を発した。手芸用の糸みたいな大きさだったが、それでも威力が強いことを気配で察した。
「もしかして、これが狙いだったのかな?」
「かもね。基礎体力を上げると同時に、魔力の別の使い方を散策する……これがこの修行の正体かも」
ティーアの言うとおりだ。きつい重力で動くおかげで、体がかなり鍛えられ、繊細な魔力の調整を長時間行ったから魔力のかなり細かい操作も可能になった。そう思った直後、あることを私は思いついた。
「ねぇ、白い馬を捕まえるいい方法が浮かんだわ」
「マジでか」
この話に興味があるのか、剣地とルハラが一斉に近付いた。それから、ゆっくりとヴァリエーレさんたちも寄ってきた。皆集まったことだし、話をしよう。
「魔力を上手に使えば、白い馬を捕まえることができるわ。剣地とヴァリエーレさんは電撃、ルハラは風、ティーアは光、ヴィルソルは闇」
「それぞれうまく使えば、捕まえられるな」
ヴィルソルは私に近付き、私の話を聞き始めた。それから、私たちは時間をかけて作戦を練り、どうやって白い馬を捕まえられるか話し合った。
ヴァリエーレ:聖域の訓練場
「では始めましょうか」
白い馬が訓練場にいる。昨日の鬼ごっこの再開だ。白い馬は辺りを動き回りながら、私たちの動きを見ていた。
「皆、作戦通りにね」
ナルセの言葉の後、私たちは散開して白い馬を取り囲んだ。
「ほう、昨日と同じ作戦ですか」
向こうはそう思っている。だが、今度は違う。
「よっと!」
ケンジは電撃の罠を白い馬の足元に展開した。それに合わせ、私も電撃を発した。少量の魔力だが、二重になれば威力は普通の電撃の罠より倍のはずだ。
「ほう、これまでの修行の成果が出ているようですね」
白い馬は確かに罠にかかっている。だが、発する言葉には余裕がありそうだ。感電しているため毛が逆立っているが、ダメージを受けているような感じはない。
「うォォォォォォォォォォ!」
罠にかかっている白い馬に対し、ルハラが飛びかかった。だが、白い馬は高く飛び上がった。
「私はこんな罠で痺れませんよ」
「あっそー」
ルハラは足元に風を発し、白い馬の後を追うように飛び上がった。
「風を発して方向を変えましたか」
この行動を見て白い馬は驚いたが、すぐに冷静になったようだ。だけど、次の行動でびっくりするはずだ。
「む? この力は……」
そう、高く飛び上がる行動は読んでいた。ルハラが飛びかかった隙にティーアは光、ヴィルソルは闇を発していたのだ。
「避けられる?」
ティーアの光が白い馬に向かって放たれた。避けようとしているが、闇の重力のせいでうまく動けないようだ。
「グッ……」
やっと苦戦する声が聞けた。もしかしたら、このまま勝つかもね。
「ここまでやるとは思ってもいませんでした。少し、力を出しましょう」
白い馬は魔力を拡散させ、ティーアの光とヴィルソルの闇を打ち消した。しかし、次の手があることを知らないだろう。
「なっ! 足が!」
ナルセの動きを知らなかったようだ。大地を操る魔力を使い、小さなツタを発生させていたのだ。それが白い馬の脚に絡まり、身動きを封じた。
「今回は俺たちの勝ちだな」
ケンジはそう言って、白い馬の体に触れた。
「そうですね。皆様、本当に強くなりましたよ」
観念したのか、白い馬はこう言った。この言葉を聞いて、私たちは勝利を喜んでいた。だが、白い馬の話は終わっていなかった。
「今までは手を抜いていましたが、今度はもっと早くやりますので覚悟してください」
嘘でしょ、これまでの動きは手加減していたの? この言葉を聞いたケンジが、白い馬に近付いて叫んだ。
「オイオイオイオイ! 負けて悔しくても、そんなこと言うんじゃねーよ!」
「いえ、徐々に皆様のレベルアップの助けをするためです。上を目指さないと、邪神は倒せませんよ」
「グッ……」
確かにその通りだ。もっと上を目指さなければ邪神は倒せない。その為には、もっと強くならなければならない。覚悟を決めたのか、ケンジは白い馬から離れてこう言った。
「じゃ、続きやろうぜ」
「ええ。分かりました」
その後、今までより早くなった白い馬との鬼ごっこが再開した。早くなった後、私たちは白い馬を捕まえることはできなかった。
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